機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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今回は非常に短いです。


決断 前編

《隊長!『RX-0』2機収容完了しましたァ!》

「うむ、B,C班!艦の中に何かあったか!?」

 

2機のユニコーン(タイプ)が評価試験を行った宙域。そこには茶色いノーマルスーツを着た集団がいた。その者たちの名前は『ECOAS(エコーズ)』。参謀本部直属の特殊工作部隊である。任される任務は後ろめたいものが多く、同じ連邦軍内部でも嫌悪感を持たれている。

 

《こちらB班。現在ハンガーにいますが生き残った乗組員の言った『MSN―001』が確認できず。さらにベースジャバーが1機消えています》

《C班、食堂やロッカー室にて荒らされた形跡あり。目標が持ち去った可能性アリ》

「B班はC班に合流、そのまま探索せよ」

『了解』

「目標はMSとSFSを奪って逃走、近くにあるのは『インダストリアル7』か……」

 

自動化が進みブリッジ要員が少ない艦橋で隊長である男は独りごちる。それが聞こえたのか、前の操舵席からが返事が来る。

 

「でもそれでも結構ギリギリ…常識的に考えると無理の班中ですよ?どこのだれかと合流しているんじゃあないですかねぇ」

「この短時間で?目標の友好関係をみてもそんなことは無理だな。それに、近くで救難信号は確認されていない。どこかでデブリの仲間入りの線もなくはないが戦歴を見るとそんな単純なミスも低い

。だとすれば燃料が足りなくてどこかをさまよっているのが一番可能性が高いか」

「隊長、ルナツーからレーザー通信が来ています」

「…つなげろ」

 

ピヨォン、と音が鳴りモニターにその男―――――マイケル大佐の顔が映される。

 

《中佐、作戦の状況はどうかな?》

「『RX-0』2機とも回収し、現在はパイロットの捜索を行っています」

《パイロット……まさか1人も見つかっていないのか!?》

「『バンシィ』はコックピット付近がちぎれていたそうなのでそこから漂流した可能性があるのですが、『フェネクス』はほぼ無傷、乗艦とともに配備された『デルタガンダム』が消えていたそうです」

《そうか……。宇宙の藻屑になっていればいいがカイトのことだ。悪運が強いから生きている可能性がある。見つけ次第処分しろ》

「了解しました。通信終わり」

 

やっかいな任務についてしまった。それがこの男の感想であった。最初はMSとそのパイロットを回収するだけの楽な任務と思っていたが、現場に到着し、部下の報告を聞くだけでその思いは薄れていった。回収したMSの色、武装どこをとっても『普通』じゃないからだ。

だからと言って諦めるわけにはいかない。その男には長年その道を歩んだ誇りと自信があるからだ。そして男は決断を下した。

 

「ジョージ、ルナツーに1週間以内にこの宙域およびその周辺宙域を通過したヤツらの聞き込みをさせろ。それともしゲリラに渡ったらアレだ。ジェガンの補給の要請も忘れるな」

「了解!……隊長、どちらに」

「ひと段落着いたんだ。トイレぐらい行かせろ」

 

 

 

 

 

 

数時間後 エンドラⅡ MSデッキ

 

「じゃあザミュ、お休み」

「おう、当直お疲れさん。しっかり休んでろ」

 

テルスがドライセンから降り、自室に戻る。それを見送ってザミュは隣のドライセンに乗り込んだ。当直といっても、MSであたりの哨戒に出るか、搭乗して待機するだけだ。しかし今は、先の戦闘でドライセンの脚部の装甲が斬られ、その箇所を交換しているのだ。

 

「おーいたいた。ジェトロ、俺のドライセンはどんな感じだ?」

「ザミュ…。斬られたのは装甲だけだからね。一応中の確認もするけど早めに終わるよ。それで?君はそんなことを聞きに来たわけではないだろ?『彼』のことかい?」

 

伊達に長年つるんでいたわけではなく、ジェトロにはザミュの聞きたいことがわかっていた。

 

「ああ。それでどう思う?本当にあいつだと思うか?」

「僕は君ほど一緒だったわけじゃないからね。そーゆーのは君の方がわかるんじゃないの」

「そうなんだがな……。俺的にはアレは『カイト』本人だと思ってる」

「……取り調べでも『カイト』って名乗ってなかった?」

「そうじゃない。俺がお前に聞いていることから察しろ。『機付長』じゃなくって『技術者』として聞いているんだ」

 

そう、ジェトロは機付長になる前は強化人間関連の技術者だったのだ。実はテルスも強化人間でジェトロが担当したのだが、自我が安定しなかったために別パイロットの人格を植え付けられている。(余談だが、元々畑違いのためにまともにメンテができるのがテルスのときに使用したドライセンのみで、そのためにカイトからもほとんど話しかけられなかった)

 

「わかっているよ。『強化』されたんじゃないかってことでしょ?」

「そうだ。で?」

「僕から言えるのは『可能性はある』だよ」

「ハァ?」

「まだ尋問は終わってないし、医務室を使わせてもらえるかわからない。それに、『酸素欠乏症』等の病気の可能性もある。もしかしたら他人の空似かも。だから『可能性はある』としか僕は言えないよ」

「そうかい。任務が終わったら大尉命令で使わせるよう言ってみるさ。あ」

「なに?」

「あの金ぴかから戦闘データを吸い出しといてくれ。機動が一致するかもしれない」

「それはスポッターに言って」

「……あいよ」

 

 

 

 

同時刻 エンドラⅡ 独房

 

いま私は自分の記憶を疑っている。なぜならというほどでもないが、この艦の空気に身に覚えがあるのだ。無論、私の『記憶』にはジオンの艦に乗ったことはないし、体験した場所もない。

それに加えて艦の構造がわかるのだ。この独房から食堂まで行ける自信がある。設計図はもちろん鹵獲したなどの情報は知らない。そんな中で思い当たる節は『強化』された事一つのみ。以前の自分はどんな奴だったのか知りたい。そのためにはオーガスタ研究所に行かなくてはならない。

 

「ま、今はそれどころじゃないだけどな」

 

独房は旧世紀のように鉄格子がはめ込まれているわけではなく外側から鍵がかかる個室のようなものだ。今の格好は整備兵の作業着でサングラスを掛けている。腰のホルスターには拳銃の代わりにお守りがある。どうあがいても抜け出すことは不可能だろう。外部からの救援を待つか、外に出してもらえるのを待つかの二択だ。

 

「次の尋問で最後って言ってるしそれを信じるしかねぇな」

 

尋問についてはある程度こたえているが、比較評価試験についてはぐらかしている。さすがにその情報を言ってしまったらバランスが崩れてしまうからな。たぶん回収艇が来ているはずだが。

 

「さて、休めるときに休む。そんなわけでもうひと眠り行きますか」

 

私の感覚では捕虜の飯の時間も次の尋問もまだまだ先だからな。

 

 

 

 

数時間後 某宙域 ECOASside

 

エコーズの母艦『サラブレッド』は補給と『RX-0』の引き渡しを行っていた。補給内容はジェガン6機。なぜなら、2時間ほど前に彼らはとある証言を入手したからだ。それはある商船が、ジオンの艦が金色の何かと戦っているのを見たとのことだった。

 

「隊長、先ほどの件に関しての報告です!現在その艦艇の目撃証言から想定航行ルートを割り出しましたァ!」

「よくやった!補給と引き渡しが済み次第出発、その艦を襲撃する!」

「了解!」

 

 

 

つづく




エコーズのテンションが高い……。でもそんな部隊が一つぐらいあってもいいよね!

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