機動戦士ガンダムUC F   作:壊れゆく鉄球

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解放

翌日、ダカールを出発して5時間経ち、ようやくガルダが見えてきた。しかしこの距離からもかなりでかいことがわかる。武装も多く、輸送機ではなく空中要塞といっても差し支えない様相だ。

 

「こちらシャイアン基地所属のカイト中尉、着艦の許可願う」

 

《こちらガルダ、コード確認。許可します。ビーコンに従ってください》

 

「了解した」

 

ガルダからの通信が切れる。同時にガルダの後部ハッチが開いた。

 

ビーコンに従い着艦する。中にはシャトルがあり、シャトルの中央にあるコンテナにデルタガンダムが格納されている。スケジュールでは30分後で打ち上げることになっており、私は中のデルタガンダムに搭乗した状態でいることになっている。

 

「収容確認、これにて試験を終了する。終わり」

 

フライトレコーダーに音声が収録されていることを確認し、リフトに乗ってアンクシャから降りる。その足でシャトルに乗り、キャプテンに挨拶をしてからデルタガンダムに搭乗した。

 

 

 

 

 

《カウントダウン開始、各員はシートに座って待機》

 

《24…23…22――――――――》

 

30分後、シャトルはガルダのハイドハッチに吊り下げられ、カウントダウンが始まった。

 

「(ノーマルスーツとリニアシートの接続再確認、どこにも異常はない。大丈夫だ、問題ない)」

 

《5,4,3,2,1……》

 

《発進!》

 

キャプテンの掛け声とともに背部にGがかかる。MSに乗っている時よりマシとはいえ、覚悟も何にもないときにかかるのはあまり気分のいいものではない。

 

8分ぐらいたち、何事もなく周回軌道に上がる。体が地球での環境に慣れきっているせいか違和感を感じるが、『オアシス』にたどり着くまでに慣らすしかない。

 

ゴオオン

 

コンテナが持ち上がり、ハッチが開く。モニターには暗い宇宙が映し出されている。そのことでようやく帰ってきたことを実感する。

 

オートで武装を手に取りながらキャプテンに通信を開いた。

 

「キャプテン、輸送ありがとうございます。今後の航海の無事を祈っていますよ」

 

《そうか、中尉殿。ではこちらも貴官の無事を祈っとくとしよう》

 

キャプテンの嫌味を聞き、デルタガンダムが宇宙に飛び出す。すると、ものの数分で通信が切れてしまった。

 

「全く、いくら最短距離だからと言って、慣れない宇宙でデブリ群に突っ込まなくてはいけないのだろうが…ねっ」

 

宇宙にはいろんなデブリがある。岩やMS、コロニーの破片とかだ。だからだろうか、MSの残骸を敵と間違うのは。

 

最初に見たのはギラ・ドーガの頭部だった。

 

「敵!?こんな時にか!」

 

とっさにMS形態に変形し、距離をとってロングメガバスターを構える。そこでようやくデブリと認識したのであった。

 

「なんだ…デブリか……。疲れているのかな、私は……。……無理もないか。休みもなく宇宙に飛ばされたんだからな……」

 

ピピピピ!

 

感傷に浸っている時だった。センサーの鳴った方向に目を向けるとそこには大量のミサイルがデルタガンダムを狙っていた。今度のは幻覚ではない。

 

「チッ……!最近私はよく狙われるなぁ!」

 

デルタガンダムに装備されている火器と言う火器をミサイルの迎撃に使う。そのおかげで、デルタガンダムはダメージを負わずに済んだ。しかし、ミサイルの爆炎によって視界が遮られてしまった。

 

「何も見えない……。煙から出てあたりを見るしかないか」

 

そう呟いて煙幕の中から出た瞬間にビームがデルタガンダムを襲った。それをすぐさま避け、ビームの飛来した方向にビームを撃ち返す。

 

「当たらんか。いや、落ち着くんだ私。私だって強化されてニュータイプ能力とやらがあるはずなんだ。感覚を研ぎ澄ますんだ……」

 

キイイイン!

 

ビームを避けながら気を集中する。すると、遠くから敵の意志が見えた……気がした。

 

「この直感を信じろ!私!」

 

そう言ってビームを放つ。数秒後、遠くで爆発の光が見えた。

 

「やったか!?……いや、プレッシャーは消えていない」

 

それは直感だった。だが、それを証明するかのようにミサイルのシャワーがデルタガンダムを再び襲う。

 

「さっきで大体の位置を掴んだ。今度は外さん!」

 

変形し、ビームを撃ってミサイルを破壊しながら敵機に接近する。そうして弾幕を突っ切ると、敵機の姿が見えてきた……が。

 

「『リゼル』…だと!?」

 

そう、リゼルだ。カラーリングがあのギャプランと同じなのでパイロットがヤスハであろうことがわかるが、問題は武装だ。バックパックが私と試験した時と全く違う。ディスプレイには『ディフェンサーaユニット』と表示されている。

 

「なるほど……あれがアイツの言っていたオプションの1つと言うわけか……。だが!そのコンテナの大きさだともうミサイルは使い切っただろ!!」

 

MS形態に戻し、ビームサーベルを手に取る。するとリゼルは、手を腕にではなく背部にやった。そこから出てきたのはハイパービームサーベルだった。そのまま両機は接近し、つばぜり合いになった。

 

「なんと…!そんなモンも装備しているのかよ、ホントに量産機か疑っちゃうね」

 

不利なのはどう見ても私だ。そう判断した私はリゼルから距離をとり、ビームライフルを連射する。それをリゼルはミサイルコンテナをパージしつつデブリ帯に突っ込む。

 

コンテナをパージしたとはいえ、時限式で爆発するよう設定している可能性を考え、別ルートでデブリ帯に突入する。デブリ帯に入ったところで案の定ミサイルコンテナの爆発を観測した。

 

デブリでセンサーが役に立たなくても、感覚でヤスハがどこにいるかわかる。だがそれも、相手に言えることだった。

デブリに背をつけた瞬間、そのデブリが真っ二つに切断されたのだ。デブリの反対側にいることはわかっていたが、横から出てきたところにビームを浴びせようと考えていたためにデブリを切るという可能性を考えていなかった。一瞬早く気付いたために避けることができたが、もうデブリに隠れることをやめたほうがよさそうだ。

 

「全く…それはそんなことまでできるのかよ。量産機だからって正直なめてたかも……なっ!」

 

ミサイルコンテナをパージしたことはまだしも、カメラアイが血に染まったかのように紅いためにカタログスペックはあまり期待できない。

 

「ヤスハ…君はあともう少しで始まる評価試験まで待てないと言うのか?それとも、そこまでしてデルタガンダムと戦いたかったのか?」

 

《……………》

 

ヤスハがそういう性格ではないことを知ったために軍の回線で話しかけるが、返事はなかった。オープンチャンネルも同様だった。もしかしなくても『システム』とやらに乗っ取られているのだろう。アイツにはMSに乗っている時の記憶がほとんどなかったからな。

 

「やれやれ、だんまりか。まあいい。教官として、システムに乗っ取られるような軟な精神を鍛えてやろう……!」

 

ロングメガバスターとシールドを捨て、ビームサーベルを二刀構える。対するリゼルはハイパー・ビーム・サーベル1基を両手で構える。

独特の緊張が両者に漂う。その緊張を破り、最初に仕掛けたのはリゼルだった。

 

「相手が来ないなら自分から仕掛けてくるか」

 

サーベルを最大出力にして受け止める。そうまでしても出力の差は埋められないのか、徐々に食い込んでくる。

 

「だが所詮はシステム、攻めが甘いんだよ!」

 

ハイパー・ビーム・サーベルを受け止めたのとは別のビームサーベルで切りかかる。それをリゼルはバルカンで迎撃しようとする。それを感じ取った私はすぐさま手を引っ込め、さらにはリゼルから距離をとった。

 

「なぜだろうな…あんた(HADES)のしようとしていることが『わかる』」

 

その言葉通りに、リゼルがビームキャノンを撃っても、その弾道が『わかり』それを容易く避ける。

それにいらだったのか、リゼルが突っ込んでくる。

 

「ま、『わかる』からと言って攻略できるわけではないんだがな」

 

突っ込んできたリゼルを逆手に持ったビームサーベルで対応する。もう片方のビームサーベルで再度突こうとする。それをリゼルは右にそれることで避ける。ついでにビームキャノンをこちらに向けている。それを見て取った私は反射的に突き出した方のビームサーベルで切り裂いた。

 

「おお、危ない危ない」

 

リゼルは瞬時に離れ、WR形態に変形してデルタガンダムから離れようとする。

 

ヤツのバックパックはスラスターだらけ、おまけにシステムが発動している。おかげで逃げられたら追いつくのも一苦労だ。逃がすつもりはないが。

 

このデルタガンダムは軽いのだ。ビームサーベルだけを持った状態ならば、ヤツの動きを読めばすぐに追いつける。

 

「次は右か……」

 

デブリを踏み台にしつつリゼルを追いかける。その成果がすぐに表られた。ヤツの目の前に出ることに成功したのだ。

 

切りかかると、リゼルはすぐさま変形してハイパー・ビーム・サーベルを手に取る。

 

ギイイイイ!

 

高速で動いてそのスピードを殺さずに攻めてきたリゼル。リゼルの進行方向にやっと入りすぐに向きを変えたデルタガンダム。どちらが優勢かは誰にでもわかる。リゼルだ。そのままデルタガンダムは吹き飛ばされた。

だが、私は進路上に入った途端、スラスターを吹かすのをやめた。それは関節のためだ。関節が折れてしまってはビーム・サーベルを振るうことができない。そのためにあえて吹き飛ばされた。ディスプレイを見ると関節のダメージが蓄積されていることを確認する。

 

「(やはりヤスハから反応はない。そろそろ決着をつけないと『オアシス』にたどり着けなくなる。仕掛けるか……)」

 

そう考えていた時だった。聞こえたのだ。ヤスハの声が。

 

―――――誰か…止めて……。この子を……!

 

「ようやく目覚めたか。眠りすぎだ」

 

――――――この感覚……カイトさん……?お願い!この子は私の意志で動かせない。システムが発動している限り。

 

「本当に無理なのか?手段はあるが、できればそれをしたくないのでね」

 

システムが発動している限り……か。やっぱりあそこを壊す必要があるか。

 

リゼルがもう1本のハイパー・ビーム・サーベルを取り出して攻める。これに対して私は受け流しながらデブリの中を飛び回ることを選択した。関節が心配だが、それ以上に推進剤を消費したくない一心だった。

 

――――――私はこの子の人形…パーツでしかない。私にコントロールする術はない。じゃなかったら体のコントロールを奪われません。

 

「……しょうがない。あんまり期待すんなよ?考えていることは結構難しいんだからな」

 

――――――お願いします。少なくとも、この機体が破壊されればそれで良いから。

 

「怪我しないように気をつけろよ……!」

 

リゼルに接近してつばぜり合いになる。やっぱり出力に差がある。これぐらいしか方法はないだろう。それは―――――自爆である。

 

自爆と言ってもデルタガンダムがするわけではない。ビームサーベルをオーバーロードさせて爆発させるのだ。使えるかわからないが、臨時の閃光弾にもなる。その分戦闘力がなくなるから避けたいのだが。

 

リゼルのもう1本のハイパー・ビーム・サーベルで攻撃しないうちに離れる。もちろん1基のビームサーベルを置いてきた。その直後、爆破の光が現れる。すぐさま手の止まったリゼルに攻撃する。まずは武器の持った両手を切り裂く。次に、バルカンを撃ち続ける頭部だ。そこを突き刺し、胴体から引きちぎった。

すると、血のような色だった肩のセンサーが、C型を示す緑色に戻っていった。

 

「大丈夫か?できる限り丁寧にやったんだが」

 

《ゲホッ……ゲホッ……大丈夫ですよ。あなたが知っているとおり体は丈夫ですから》

 

「あんま無理はしないほうが……っておい!どこ行く気だ!?」

 

《機体が勝手に……!?私でも解除できない!?》

 

「オートか……。失敗しても成功しても組みこんでいたんだろうか」

 

《そんな悠長に分析してないで……!》

 

「こっちだって追いかけたいの山々なんだ」

 

しかし、追いかけることができない。遅くなったとはいえ、MSを追いかけるには推進剤を使わなければならない。今は『オアシス』と合流することが最優先。そのためには無駄な使用は避けなければならない。

 

「どうする?……やはり私は軍人だ。軍規を破ったりはできない。こう考えている間にもヤツは離れていく。あきらめるか……」

 

あのシステムから解放で来たんだ、それで十分じゃないか。それで無理やり納得させる。

 

その後、通ったルートをトレースして装備を回収し、2時間後に『オアシス』と合流した。

 

 

つづく




次で第二部終了です。

ここでアンケートを取ります。
最終回の次に、番外編をしようと思うのですが、アンクシャのプロトタイプの話と
ジェガンの他のオプションの話どちらがいいですか?
活動報告にコメントお願いします。
感想お待ちしています。

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