青いスタークジェガンを鹵獲し、友軍によって救助された私は3日後、司令官であるマイケル大佐に呼び出された。最近何かをやらかした心当たりがなく、新型兵器についてもメールなどで伝えられるため不審に思った。
そして、指令室の前に立ち、深呼吸を行ってからノックする。
「こちら、カイト・マツムラ中尉であります。出頭命令に応じ、参りました」
《了解した。入り給え》
ボタンを押し、司令室の中に入る。中には大佐のほかに秘書がいる。調度品はあまりなく、植物が申し訳程度にあるだけだ。
「さて中尉、今回呼び出したのは君にある任務をしてほしいのだよ」
「ある任務…ですか……」
「そうだ。これを受け取り給え」
嫌な予感がする、そう思いつつ大佐殿が出したファイルを受け取る。たいした厚みもなく、機密的な何か、というわけでもなさそうだ。
「拝見しても?」
「構わん」
そういわれ、ファイルを開く。そこに書かれていたものは少し、いやかなり予想外なものであった。
「私が教官…ですか!?」
「そうだ。来年から君がテストした可変機、確か…『リゼル』だったか?あれが配備される。『アッシマー』や『ゼータプラス』などといったエースに向けたモノではなく適性のあった一般兵に配備される。ロンド・ベル優先だがね。ともかく、これからは量産型可変機が主力になる。それに備えて士官学校などで可変機に対する授業を始めようということになったのだ」
「質問よろしいでしょうか」
「構わんぞ」
「なぜ、私なのでしょうか?それにリゼルは宇宙用です。わざわざ地上で訓練する必要はない気がするのですが……」
ファイルを受け取った時からの疑問を投げかける。それに対しマイケル大佐は、ふっといい口を開いた。
「確かに中尉の疑問はもっともだ。ではまずは最初の質問から答えよう。なぜ中尉に白羽の矢が立ったというとだな、中尉は
ええ、思いましたよかなり。
「この基地にもいるにはいるのだが…絶対数が少なくてな。それでこれから当分新兵器の試験がない中尉になってもらうのだ。当然、試験の時は教官の任務ではなくそちらを優先してもらう。そして2つ目だが、開講できる場所がコロニーにあまりなくてだな……それに宇宙に対応した可変機がコロニーに回せるほどないからだ。それに対し、地球には先の大戦で大量生産された『アッシマー』や『ゼータプラス』が各地に配備できるほどあるからだ。さらに言うと、可変機に対する扱いを覚えてもらえばいいのだよ。覚えたなら宇宙での訓練で何とかなるからな。他に質問はないな?なかったら退室し、ファイルをよく見ておくんだ。明後日に士官学校に向かってもらうぞ」
「はっ、了解しました。……あ、1つよろしいでしょうか」
「いいが」
「では、あの『スタークジェガン』のパイロットはどうなったでしょうか?」
「今も拘置所にいるさ。さて、早く出発に向けて支度をしてきなさい」
「そういうことではなk「君は『1つ』と言った。私は答えたぞ?退室しなさい」……了解」
納得がいかないが、司令室から出、まっすぐに自室に戻る。これ以上言っても大佐殿は答えないだろうし、今は新しい職務を果たすことだ。そのためにはファイルを読むことだ。司令は明日私が非番であることを知っていたからこそ今日渡したのだろう。明日移動できるために。…厄介なことだ。
「えーと何々?『転属命令―――』ここは読んだ。次、『職務内容』…ここか」
読み進めていくうちに、私のやることが大体把握できた。私がするのはシミュレーター、実機を使った講義だった。実機と書かれていて使われるのは『ゼータプラス』なのだが、複座席のB型ではなく、94式コックピットに換装されているゼータプラスだった。おそらくは補助席に教官を乗せ普段は指示やアドバイスをし、いざとなったら訓練生と交代して操縦をするのだろう。
「明日移動か……。時間は遅めだが今のうちに私物をm{ジリリリ!}なんだ?」
動こうとした瞬間に通信機が鳴り一瞬動きが止まる。一呼吸し通信機のモニターを開く。すると、現れたのは食堂の料理長だった。
「え~と料理長、ご用件は……?」
《申し訳ありませんが中尉、今日は非番が多くて手が回らないのです!少し助けてくれませんか!?》
確かにここ半年ぐらいあそこの厨房には世話になった。いつ戻るかわからないから今のうちに恩返しするものいいだろう。
「わかった。今向かおう。{ピッ}まったく、私はシェフではないのだがな……」
私が勤務する士官学校は、以前ゲリラに襲撃された街に隣接する基地あった。(現在は復興作業が行われている。)
昨日は、その士官学校に到着しあいさつ回りをしていた。そして発覚したことだが、ここのシェフは塩味が効きすぎてる。そのため私はここのシェフを買って出てしまった。これではマーティン大尉と同じではないかと思ってしまったが、職員や候補生が健康的な食事が食べられるならいいと思い至って結着をつけた。
私が基本的に担当するのは、シミュレーターや実機での訓練だ。まずは実機よりも簡単なシミュレーターである程度の動かし方を覚えさせる。その後、テストでもして成績の良かった者から乗せると考えている。言うまでもないが、実機の場合は、他の教官と合同で行う。そして他の教官は、座学を担当する。TMSを使った戦術などを教えるのだろう。
「さて、もうそろそろ行かなければな」
気負いすぎなければ何とかなる。そう思いながらシミュレーターのある部屋へ向かうのであった。
つづく
主人公の人格が安定しすぎている気がする。強化人間のはずなのに……。