えーと、みなさんこんにちは。そして初めまして。
馬鹿です。
冗談です。
生粋のリボクラです。マジです。
そして馬鹿です。うましかです。
ここ数年での悩みを聞いてもらってもいいですか。
え、ダメ?
わかりました強行します。悩み言います。
実はですね、僕の悩みというのは身近にリボクラがいないことなんです。
リボクラがいないんです。
その辺ほっつき歩いて某モンスターゲームのようにふらふらと求め歩けば1人や2人はいるかもしれないんですけどね、いかんせん生まれてこの方1度たりとも外に出たことがないんですよこれが。
ええ、生まれてこの方12年もの間、1度たりとも外に出たことがないんですよ。
母曰く、あまりにも体が弱すぎるので外で生活するのは不可能に近い、ということでして。
もちろんそれを実感したことがあるわけではないので実質的に軟禁されているようなものですね。
おかげで幼稚園はおろか学校というものにすら通ったことがないので友達なんて1人も居ないんです。
つまり、リボクラと出会えません。
まぁ軟禁とはいえども外との接触が絶たれている訳では無いので、欲しいと言ったものは漫画だろうとゲームだろうとDVDだろうとなんだって買ってもらえるし、最近じゃAmezonを覚えたので全く退屈はしません。
それに唯一の従姉妹だという子も時々家まで遊びに来てくれますし。
因みに漫画という漫画は殆どこの子から布教されました。
その過程でリボクラになってしまったわけだけども。
その他にも母にも従姉妹にも話したことのないAmezon様々な趣味をお持ちでいらっしゃるんですけども、まあそれは後ほど。
あ、そうそう。
学校にも行かないで義務教育はどうしたんだって思いますでしょう?
全くもって問題ないです。
近所の学校は事情を知っていて一応籍はあるらしいですし、家庭教師さんとちゃんと勉強していれば出席扱いにしてくれているそうです。
家庭教師って言ってもリボーンじゃないですよ?
至って普通のお姉さんです。
6年もお世話になっていたので本当のお姉ちゃんみたいな人です。
……だいぶ話が逸れましたね。
結論から言いますと、転機を待っているのです。
退屈はしなくとも飽きはやってくるのです。
いつか外の世界へ飛び出してこの家ではないどこかで、少々過激な世界だって構わないから遠く離れた場所で生きてみたいのです。
ずっと、ずっと遠くへ。
**********
「ま、無理だってことは充分承知してるんだけどね」
BLEACHのDVDを見ながらぼんやりと呟く。
なんとなく気になったんだけど、もしも人が死んだらその魂が行き着く先は一体どこなのだろうか。
BLEACHのように魂魄となり尸魂界に行くのか、それともリボーンのように六道輪廻のどこかに転生することになるのか、
個人的には“無”でなければなんだっていい。
もし魂魄になるのなら虚から死神から逃げ回りながら自らが虚になってできればメノスになってあわよくば破面にでもなってやりたい。
もし六道輪廻に転生するというのなら是非とも6つ全てを廻りあわよくばその過程で鬼灯さんとか白澤さんに会ってしまいたい。
という話を従姉妹にしてみたところ全力でドン引きされた上に思考が歪んでいると言われた。
あれはなかなか心に刺さったね。
「それ以前に死にたくないというのが本音なわけだけれども、それはそれ、これはこれ。さて、BLEACH5週目の巡回も終わったことだし次はハガレンの13週目にでも突入しようかな」
よっこらせ。
立ち上がった途端、酷い立ちくらみに襲われた。
一瞬で目の前が真っ暗になって右も左も上も下も分からなくなる。
今までにも何度か立ちくらみは経験したことあるけど、今回のはやばいと直感で思った。
「なにか、つかまるもの……」
**********
「ただいま」
夕方頃に帰宅すると家の電気はどこもついていなくて全体的に薄暗かった。
あの子がいるはずなのだけど、どうして点けていないんだろう?
「恭華、いるの? 寝てるの?」
リビングにはいない。
ご飯の時とお風呂の時以外は基本的に部屋にこもっているのが我が娘だ。
こうして家の電気がどこもついていないのはよくあることだった。
だけど、部屋の電気ですら消えていた。
なんだか嫌な予感がしながら恭華の部屋のドアをノックする。
返事はない。
「恭華? 入るわよ」
ドアを開ける。
やっぱり電気はついていなくて朝からつけっぱなしであっただろうテレビの画面だけがやけに明るい。
唯一の光源のまぶしさに目を細めながら部屋の電気をつけた。
そこには、倒れて動かない恭華の姿があった。
「恭華!? しっかりしなさい!」
慌てて駆け寄って抱き上げるも、その体は硬直していて、とても重くて、そしてとても冷たかった。
「嘘、よね? ね、恭華、起きなさい、一緒に晩ご飯作ろうって朝に約束したわよね……? 恭華、恭華……起きなさいよ恭華……恭華っ!!」
**********
なんだか不思議な気分だ。
女手一つで文句もないも言わないで一人娘を育ててきた超クールビューティだと思っていたお母さんが、こんなにも取り乱してこんなにも泣き叫んでいる。
こんなの、一生に一度見られるかどうかの超レア光景だ。
目の前に広がるのは、倒れている自分の体と抱きかかえて泣き続けているお母さんの姿。
客観的に自分の姿を見ているせいか、ここにいる自分が自分じゃないように感じる。
というか、これは一体何が起こってるの?
お母さんを慰めようと伸ばした手は何を触ることもなくすり抜けてしまう。
視線を落とせば、胸許につけられた千切られた鎖。
これは、死んだな。
「あっはは、なんてわかりやすいんだよこの姿。なぁんだ、死んだんだ」
そっか、なるほどね。
長年の疑問は結論から言って、BLEACHの世界が正しかったみたいだ。
つまりこの体は魂魄そのものってわけだ。
じゃあここにいる理由なんてもうどこにもない。
地縛霊になる気なんてさらさらないし、お母さんとのお別れはすごく寂しいけど、だからって死神や虚から逃げないわけには行かないんだ。
さようなら、お母さん。
最後の最後に、ちゃんと愛されてたんだってわかって嬉しかったよ。
ありがとうも大好きも言えなくてごめんね。
「で、あんたはこれからどうするの?」
「どうもこうも、逃げてやるって決めて……えっ?」
誰か今話しかけました?
というかどこから声が聞こえました?
キョロキョロ見渡してみてもそれらしき姿はどこにもない。
「どこを見てんのさ。上を見なさいよ」
「上? ……ええー」
「ええー、とか言わないの」
言われた通りに上を見たそこにいたのは、虚っぽい何か。
なんでそんな言い方なのかというと、虚のような仮面をつけてはいるんだけど、なんていうか妖精っぽい何かがある。
虚とティンクを足して2で割った?
いや違うな、虚と六花を足して2で割った?
うん、これだ。
「あなたは誰? 虚? 魂魄を食べに来たの?」
「違うわよBLEACHオタク。そんなことより、あんたって霞恭華で合ってる?」
「え、うん」
「オッケー、じゃあ私についてきて」
「いいところに連れてってくれるの? だが断る!」
「何その流れ!?」
「知らない人にはついて行かないって今どきの小学生でも知ってるよ」
「死人が言うな」
うーん、初めて外に出たのはいいけど早々に変な人とエンカウントするとは思わなかったよ。
お母さんによく、外には変な人がいっぱいいて危ないんだよ、とは言われてきたけど、正解だったよね。
「とにかく、来てもらわないと困るの。このままBLEACHみたいに死神が来るかもって誤解されるのもゴメンだし、それにあんたを指定の場所まで連れていかないと私が怒られるんだから」
「誤解? 胸の鎖はBLEACH関係ないの?」
「その鎖のせいで勘違いする死人多くてウザいけど、関係ない。死神は魂葬にこないし虚は喰いにこないしあんだが虚になる可能性もこれっぽっちもない。あるのは魂が腐って地縛霊か悪霊になる程度」
なーんだ、つまんないの。
「だけど、そしたらどこに行くの?」
「来ればわかる」
「え、あ、ちょ、首根っこは勘弁……!!」
そして訳も分からないままにその虚もどきに拉致されました。
Fin
「勝手に終わらせるなぁぁぁ!!」