アニメを見てブラック・ブレットにはまってしまった者です。
千寿夏世ちゃんの死がどうしても受け入れられずこんな二次小説を書いてしまいました。
「誰だこれ?」と思うかもしれませんが、主人公はいちおう伊熊将監です。
それではどうぞ。
―――西暦2021年。
人類は突如世界中に出現した寄生生物『ガストレア』との戦いに敗北。
人々はガストレアを退ける金属『バラニウム』で作られた巨大な壁『モノリス』を建築し、モノリスで囲われた『エリア』の中でガストレアから身を守りながらの生活を余儀無くされた。
しかしそれも完璧なものではなく、希に外からガストレアが侵入することもしばしばあった。
そこで、そんなガストレアを排除するために軍事力を民営化した組織である『民間警備会社』――通称『民警』――が「ガストレア」に対するスペシャリストとして活躍する事となる。
―――そして10年後の現在。
今宵もまた、人々の偽りの平和を守るために暗躍する一組の民警の姿があった。
『―――
無線越しに聞こえる少女の声。
歳は十歳前後だろうか。
「………」
無線の相手であろう男は無言を通す。
少女はそれが続きを促しているのだとわかっており、特に気にした様子もなく報告を続ける。
『見た目の特徴からモデル・スネークのガストレアと識別。おそらくステージⅠだと思われます』
ガストレアとは即ち、『ガストレアウイルス』に感染し、遺伝子を書き換えられた生物のことをいう。
再生力が異常に強い、赤い目と醜く巨大な体を持つなどの共通点はあるものの、通常は元の種から来るモデル名で呼ばれる。
今回は『モデル・スネーク』つまり蛇のガストレアである。
『―――報告は以上です。なにか質問等はありますか?』
「……ウゼェ」
そこで、男はようやく少女には言葉を返す。
顔をあげた男の人相は、一言で言い表すなら『不良』だろう。
猛禽類のように鋭い目、染めた金髪。
そして体は大きくはないものの、黒のロングコートの上からでもわかる鍛え抜かれた筋肉。
しかし、男が背負っている身の丈ほどもあるバラニウム製の
―――そう、彼こそがこの物語の主人公。
大手民間警備会社『三ヶ島ロイヤルガーター』所属、IP序列1584位のプロモーター。
「要は………ぶった斬りゃあ良いわけだ。そうだろ
『………その通りです将監さん』
将監は
「さぉ、祭りの始まりだ"化け物共"」
今宵も、黒の大剣が輝くのだった。
★★
「………将監くん」
「………はい」
伊熊将監は今、絶対的な窮地に陥っていた。
そう、今彼が前にしているのは警備会社『三ヶ島ロイヤルガーター』の三ヶ島社長。
つまり、彼の雇い主である。
問題は、なぜ三ヶ島社長が将監の前にたたずんでいるのか――実際は社長室の自分の机に座っているのだが――である。
「そろそろ、説明してくれないかね?」
そういって三ヶ島社長が取り出した一枚の紙には、赤字でこう書かれていた。
《廃ビル倒壊による被害総額
―――推定1,000,000円》
そう、それは昨日の業務での出来事だった。
「ビルに逃げ込んだガストレアが思ったよりしつこくてイラッときたからぶった斬った。気がついたらビルも斬れてた。以上」
「何を説明しきった顔してるんだお前は!周りに人がいなかったから良いものの、もしも人身被害が出ていたらどうするつもりだったんだ!?百万円じゃ済まされなかったぞ!!」
「まぁまぁ、過ぎちまったことはしょうがないじゃねぇか。過去ばっか振り返ってるから老けるんだぜ三ヶ島さん」
「余計なお世話だよ!?そもそも原因はお前だからな!!」
机をバンバンと叩きながら心中をぶちまける三ヶ島社長。
しかも、今年に入って三回目の被害届である。
そのいずれもが推定百万円前後の物で、正直『三ヶ島ロイヤルガーター』は多大な借金を抱えていたりする。
「はぁ、もういい。とりあえず全額自己負担だから」
「ちょッ、三ヶ島さん!?」
「当たり前だろ。今年に入ってもう三回目、会社としてもこれ以上借金を抱えるわけにはいかないんだよ」
「なん……だと?」
将監は悶絶する。
なにせ、百万円というのは将監の一ヶ月分の給料とほぼ釣り合うのだ。
つまり………
「今月分の給料……ゼロ?」
将監は目頭がじんわりと熱くなるのを感じた。
決して泣いているわけではないと自分に言い聞かせながらも、残酷すぎる現実を前に膝を屈しそうになる。
しかし、彼は知った。
三ヶ島という男は、決して血も涙もない悪魔ではないということを。
「……まぁ、君が稼ぎ頭だというのもまた事実だ。仕方ないから半分は社で負担しよう」
「三ヶ島さん……あんたって人はッ!!」
「ただし、もう無駄な器物破損はしないこと。いいね?」
「お、おう。善処する」
三ヶ島はどうせ無理だろうけど、とため息混じりに愚痴を吐く。
当の将監も無理だろうと自覚しているため、特に反論はしなかった。
「まぁいい。それより、明日『防衛省』に行くことになったから、お前も着いてきてくれ」
「ボウエイショウ?ってあの、日本の国防を担う?」
「そう、その防衛省だよ。一応いっておくが理由はわからないぞ。ただ来いとしか聞かされていないからな」
「なるほど、それで護衛モドキってことか」
「そういうことだ。では頼んだぞ」
「あいよ」
★★
将監が会社の駐輪スペースに行くと、すでに先客が彼の愛車に跨がっていた。
「……遅いです将監さん」
「うっせぇぞ夏世。文句は三ヶ島さんに言え」
―――
将監の『イニシエーター』だ。
そもそも民警というのは、ガストレアウイルスをその身に宿して産まれた『呪われた子供たち』ことイニシエーターと、ペアの司令塔および幼い少女であるイニシエーターの精神的支柱となる人間の『プロモーター』の二人一組のことをいう。
この場合はプロモーターが将監、イニシエーターが夏世ということになる。
「今日はもう帰るぞ」
「それは………クビですか?」
「チゲーよ!明日まで仕事がないだけだ!!」
何言い出すんだこのガキは、と一人愚痴りながら将監はバイクのエンジンをかける。
ちなみに将監の愛車は『ワルキューレルーン』というガストレア戦争より以前に作られた古株をカスタムしたものである。
具体的には排気音を極限まで押さえたり出力を大幅にあげたりと対ガストレア戦でも活躍できる優れものだ。
「将監さん」
「あ?」
「晩御飯は何が良いですか?」
「……肉」
これより始まるのは、一人の男の物語。
本来の物語では己の存在理由さえ解らず、ただ戦争に憑かれた男が、とある出会いをきっかけに変わったらというIFのお話し。
伊熊将監という男は、いったいこの世界で何を成すのだろうか?
《原作の伊熊将監との改変点》
・金髪に猛禽類のように鋭い目
・ゴリマッチョではなく細マッチョ
・黒のロングコート着用で口元は隠していない
・武器は大剣と諸々
・バイクに乗る。愛車はワルキューレルーンのカスタム
・イニシエーターを道具と思っていない様子
・実力は気がついたらビルをぶった斬っていたくらい
・三ヶ島ロイヤルガーターの悩みの種
他に質問や意見等がございましたら気軽にどうぞ。
ただし「別に伊熊将監じゃなくてもよくね?」的な意見は却下です。
作者が一番痛感してますので。
また次回も見てくれたら嬉しいです。