桜才学園での生活   作:猫林13世

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顔は似てるんですけどね……


似てない兄妹

 津田が英稜生徒会の手伝いをした時に、何人かの生徒にその姿を目撃され更に人気が高まっているとウオミーからメールが届いた。これは少し津田に反省させる必要があるな。

 

「津田、今度の集会のスピーチなんだが、君がやってくれないか?」

 

「俺がですか? 別にかまいませんが、何故会長ではなく俺が?」

 

「君は自覚してないのかもしれないが、次期生徒会長としてこういった経験を積む事は大事なんだぞ?」

 

 

 案の定自覚してなかったのか、「次期生徒会長」の単語に津田は反応した。

 

「それってやっぱり俺なんですか?」

 

「萩村がやる気が無い以上、君以外に出来る人間はいないだろ」

 

「自分はそういった器の持ち主じゃないんですけど……」

 

 

 そういえば中学時代も会長就任の打診を断ったらしいな。この前コトミから聞いた話にそんな事があったような記憶があるぞ。

 

「別に緊張する事は無い。普通に心に響くようなスピーチをしてくれればいいだけだ」

 

「心に響くって……簡単に言いますけど具体的には?」

 

「ふむ……この童貞めが!」

 

「心に響いたぁ……でもそれを全校生徒の前で言う訳無いですよね?」

 

「うむ! 半分以上は処女だからな!」

 

「そういう事言ってるんじゃねぇよ!」

 

 

 後日、津田のスピーチは全校生徒から高く評価される事になったのだった。さすがは私の跡を継ぐ男だな、うん。

 何時ものように腕を組んでそんな事を思っていると、津田がアリアに話しかけた。

 

「七条先輩の腕組みポーズってなんだか珍しいですね」

 

 

 言われてみれば確かに……普段アリアはお嬢様だけあってこのようなポーズをとる事は無いんだが、今日は如何したんだ?

 

「これは胸が重くて支えてるだけ」

 

「萩村! アリアがいじめた!!」

 

 

 思いを共有出来る萩村に泣きつく事で、私は負けた気分を誤魔化す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝の服装チェックでタカ兄が校門前に立っているのを、私はトッキーとマキと三人で見ていた。

 

「なぁコトミ」

 

「ん? 如何したの、トッキー」

 

「お前の兄貴って副会長なんだよな?」

 

「そうだけど?」

 

 

 この間紹介したし、勉強会の時もトッキーはタカ兄のお世話になっている。だから今更確認される事も無いだろうと思っていたので、私は不思議だなと思っていた。

 

「兄貴は真面目なのに妹はアホっぽいんだよな。兄妹なのに似てないな」

 

「トッキー!!」

 

 

 私はトッキーの発言に喰い付き大声を出した。

 

「それって実は血の繋がって無い兄妹って展開!?」

 

「……ホントダメだコイツは」

 

「諦めなよトッキー……コトミは昔からこんなだから」

 

「なんだよー! マキだってタカ兄と比べられる私の苦労は知ってるでしょー!」

 

 

 何せ中学入学時からの付き合いだ。中学時代に散々教師にタカ兄との出来の差を指摘されていたのを間近で見ていたマキは、その苦労を知ってくれてるはずだ。

 

「でも、先生たちも比べたがるのも無理は無かったと思うよ?」

 

「如何してさ?」

 

「だって津田先輩は学年トップの成績に加えて部活動でも抜群の結果を残してたんだよ? その妹があの成績じゃ愚痴の一つや二つ……ううん、十個や二十個は言いたくなるって」

 

「……教師も大変だったんだな」

 

 

 何やらトッキーが納得したように頷いてるけども、ここは先生たちじゃなく私が大変だったと言ってほしかったな。

 

「そこの三人! 早く教室に行かんか!!」

 

「ヤベッ、会長たちに怒られた」

 

 

 立ち話をしていたのを注意されて、私たちは教室に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室の掃除を終えて掃除用具を片づけていたら背後から萩村の大声が聞こえてきた。

 

「うわぁ!?」

 

「如何したの?」

 

「み、見るな!」

 

 

 振り向こうとしたけども、萩村の制止の声で思いとどまり動きを止めた。それだけで大体の状況は把握出来た。スカートを挟んだのか。

 

「……見た?」

 

「いや、見えなかったよ」

 

 

 ここは素直に答えるに限る。むろん振り返って無いんだから見えるわけも無いんだ。その事は萩村も分かってるだろう。

 

「小さすぎて視界にも入らなかったって事かー!!」

 

「落ち着きなさい」

 

 

 羞恥心が交ざっておかしな事を言い出した萩村を落ち着かせ、俺はゆっくりと振り返った。これでもし、まだ挟まったままだったら目も当てられない展開になっただろう。

 

「大体振り返って無いんだからさ。見えるわけ無いだろ?」

 

「それもそうね……ごめんなさい」

 

 

 萩村がションボリしてしまったのを見て、会長が余計な事を言う。

 

「なんだか怒られてションボリしてる子供みたいだな」

 

「子供って言うなー!!」

 

 

 萩村が暴走しかかったタイミングで、横島先生がやってきた。

 

「なぁ、私ってイマイチ生徒から信頼されてないような気がするんだが……」

 

「そんなの、自分の胸に手を当てて考えれば分かると思いますが」

 

 

 男子生徒を襲ってると噂されるくらいの私生活だ。そんな先生を信頼しようとする生徒がはたしているのだろうか? そんな事を考えながら横島先生に自分で考えろと促すと、先生は本当に自分の胸に手を当てた。別に本当に当てなくても……

 

「う~ん……はぁはぁ」

 

「ホントダメだこの人」

 

 

 当てていた手を動かして興奮し始めた横島先生を見て会長が嘆いた。てか萩村との一件は終わったんですか?

 

「ねぇみんな、私の官能小説知らない? カバー掛けてあるやつなんだけど」

 

「………」

 

「萩村?」

 

 

 七条先輩の探し物を聞いて、萩村が冷や汗を流した……ように見えた。何か知ってるんだろうか?

 

「もしかしてさっき萩村が速読したのって……」

 

「えぇ……内容が頭から離れてくれません」

 

 

 速読? さっき? 俺が横島先生の相手をしてる間にいったい何があったと言うんだ?

 

「スズちゃんも興味があったんだ~。言ってくれれば別のものも貸すよ~?」

 

「興味なんてありません!」

 

「話題を変えるために振った私が悪かった……」

 

 

 なるほど。萩村の得意分野に話題を変えて誤魔化そうとしたのはいいけど、その本が七条先輩の官能小説だったわけか……スペックが高いのも考えものだな。

 

「と、とりあえず今日はこれで解散だ! アリア、帰るぞ!」

 

「待ってよシノちゃん!」

 

 

 逃げ去るように生徒会室から出て行った会長……残されたのは羞恥で顔を真っ赤にしている萩村と、自分の胸を揉んで興奮している横島先生と素面の俺の三人……この状況を如何しろと言うんですか……




もう少し頑張れトッキー……タカトシの負担を軽くするんだ!

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