桜才学園での生活   作:猫林13世

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珍しく桜才学園生徒会メンバーは出ません……津田以外


英稜生徒会の二人と

 生徒会の備品の買出しをしていたら津田さんとバッタリ会い、そのまま津田さんが備品を運ぶのを手伝ってくれる事になりました。まぁ会長が半ば強引と言える感じで頼んだのですが、津田さんは嫌がる素振りもなく手伝ってくれます。本当にいい人ですね。

 

「そうでした! 津田さん、この前はありがとうございました」

 

「この前? 勉強会の事ですか? でも魚見さんは会長やコトミたちと遊んでたような……それに俺は魚見さんには何もして無いんですが?」

 

「いえ、夜にお世話になってました」

 

「は?」

 

 

 何を言ってるんだ、と言いたげな顔で津田さんが会長を見詰めています。その気持ちは私も分かりますが、そんなに見詰めてると会長が更に暴走を……

 

「あぁ! その目、もっと私を見て!」

 

「何言ってるんですか、この人は?」

 

「アハハ……まぁ放っておいてください。その内現実に復帰しますから」

 

「はぁ……」

 

 

 呆れてるのを隠そうともしない津田さんの表情を見て、私は何となく居心地の悪さを覚えました。別に私が何をしたというわけでも無いんですが……

 

「さて。それではこの荷物を英稜高校まで運びましょう」

 

「復帰早い!?」

 

「驚くことですか? うちの会長たちもこんなものですよ?」

 

「そうですけど……もしかしたら最短記録かもしれません、これは……」

 

 

 私がツッコミを入れてトリップする時は、もう少し長い気がするんですが……これが津田さんの力なのでしょうか?

 

「では行きましょう。運が良けれ津田さんのファンに会えるかもしれませんよ?」

 

「別に会わなくていいです」

 

 

 そっけない態度の津田さんですが、実際に英稜にも津田さんのファン……もとい、エッセイのファンが大勢居るのです。桜才新聞を大量購入してそれを生徒会が転売する事で英稜高校の生徒も津田さんのエッセイを読む事が可能になってるのですが……転売って良いんでしょうかね……まぁみんな納得して買ってますし、料金をぼったくってる訳でも無いですし……

 

「森さん? 何か考え事ですか?」

 

「い、いえ! 何でもありません」

 

「「?」」

 

 

 魚見会長と津田さんに不審に思われたっぽいですが、私は特に言い訳をするでもなく二人の前を歩きました。今の表情を見られるのは拙いですからね……特に会長に見られたらからかわれるのが決まってますし……

 

「そういえば津田さんも随分と高得点をたたき出したとシノッチから聞きました」

 

「まぁそれなりに……魚見さんと森さんは学年トップだったとか」

 

「これも津田さんのおかげです。ありがとうございました」

 

「いえいえ、森さんの実力でしょ」

 

 

 照れも収まってきたので、私も二人の会話に加わりました。実際津田さんのおかげだと思ってるので、津田さんの言葉に素直に頷く事は出来ません。私の実力では精々五位くらいでしょうし……

 

「勉強もさることながら、あのエッセイは如何やれば書けるんですかね?」

 

「如何と言われましても……それに関しては特に何かをしている訳ではないので……」

 

「では津田さんの本来の実力のみであれを? 尚更凄いですね」

 

 

 胸を打つ話が多く、一部ファンの間では人泣かせの津田と言われるほどの号泣をする人が居るとか……実際に泣きもしますが、そこまで言わせるほど泣かせてるのでしょうか?

 

「到着です。それじゃあ生徒会室まで行きましょうか」

 

「一応確認ですが、本当に他校の、しかも私服の俺が中に入っても良いんですか?」

 

「大丈夫です。津田さんは我々生徒会メンバーと知り合いですし、我が校の女子の大半のオカズですし!」

 

「……後半いらないのでは」

 

 

 私のツッコミは当然の如く黙殺され、魚見会長はズンズンと先を進んでいきます。

 

「本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「私と一緒に行動してれば大丈夫だと思いますし、会長では無いですけど、津田さんは我が校でも有名ですから」

 

「まぁ森さんが言うなら大丈夫なんでしょうけど……」

 

 

 イマイチ納得してない感じの津田さんでしたが、ここまで来て帰るのもと思ったのかそのまま備品を生徒会室まで運んでくれる事になりました。

 

「そういえば英稜を訪れるのは初めてですね」

 

「そういわれれば……私と会長は体育祭や文化祭に呼ばれて訪れた事がありますけど」

 

 

 この間もテスト勉強で桜才学園の図書室を訪れましたし……意外と私たちは桜才を訪れてるんですね。

 

「森っち、津田さん、遅いですよ」

 

「森っち?」

 

「何ですか、その呼び方……」

 

「今思いつきました。如何でしょうか?」

 

「いや、なしでしょ……」

 

 

 思いつきでいきなり呼び名を変えられたらビックリしますよ。そうじゃなくてもそんな呼ばれ方された事無いんですから。

 

「備品は何処に置けば?」

 

「こちらに置いてください」

 

「……魚見さんの背中ですよ、そこ?」

 

「ですからどうぞ。思う存分私をいたぶって……すみません、冗談です」

 

 

 津田さんの途轍もなく冷たい視線に参ったのか、魚見会長のボケは途中で遮られました。

 

「津田さんが運んでくれた備品は、そちらに置いてください。森さんのはこちらです」

 

 

 呼び名も戻り、ふざけられる空気ではないと悟った会長は、真面目に指示を出してくれました。

 

「では、俺はこれで」

 

「私たちもこれで業務は終わりですし、帰り道も一緒に行きましょう。津田さんは私たちと居ないと不審者扱いになってしまいますし」

 

「そうですね……駅までご一緒しましょうか」

 

「そういえば……津田さんの買い物は良かったのですか?」

 

「ん? 別に何かが欲しくて居たわけでは無いので。本当に暇つぶし程度だったので気にしないでください」

 

 

 その後、駅まで津田さんと会長と三人で歩き、他愛ない話をしていました。まぁ会長がボケて私と津田さんが同時にツッコムという構図は相変わらずだったのですがね……




後日彼の姿を見たと興奮する女子生徒が数人現れたとか……

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