桜才学園での生活   作:猫林13世

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今年から五月かららしいですけどね……まぁ一ヶ月は自由なんでしょうけども


衣替え

 中間試験も終わり、夏も近づいてきた。

 

「今日から六月だな」

 

「そうですね」

 

 

 服装検査をする為に朝早くから集合した生徒会の面々。まだ登校してくる生徒も殆どいないので雑談をする事にした。

 

「六月といえば衣替えだな」

 

「そうですねー」

 

 

 ダレているのか、津田の返事が若干間延びしている。普段真面目なだけに目立つな……

 

「衣替えといえば露出が増えるなー」

 

 

 津田の真似をして間延びさせてみたが、津田がものすごい顔で私を睨んできた。これは止めた方が良かった。

 

「別に露出って訳じゃ無いでしょ……」

 

「そうだよ~」

 

 

 津田の意見にアリアが同意した。これは珍しい事もあるものだな。

 

「この程度で露出なんて……本場の人に失礼だよ」

 

「そのツッコミは違うだろ」

 

 

 アリアが私に対してツッコみ、そのツッコんだアリアに津田がツッコんだ……なに言ってるのか段々分からなくなってきたな……

 

「薄着になったし、牛乳飲む量増やすか」

 

「シノちゃん気にしすぎだよ~」

 

 

 話題が不利と察知したのか、津田は早々に萩村の方に逃げ出した。

 

「だがアリア、見られるんだぞ? 少しくらい努力したいじゃないか」

 

「でもシノちゃん。例えばシノちゃんの好きな人が巨乳好きの場合努力する余地があるけど、でも私が好きな人が貧乳好きだった場合はもう如何にもならないんだよ? だからシノちゃんはそのままで良いんだよ!」

 

「……知った事か」

 

 

 褒められたようで器用にけなしてきたアリアに、私は冷たい視線を送った。

 

「あっ、なんだかクセになりそうだよ~」

 

「そろそろ生徒たち来るので、少し真面目に出来ませんか?」

 

 

 津田にツッコまれて、私とアリアは時計に目をやる。確かにそろそろ生徒たちが登校してくる時間だな。さすが副会長、しっかりしてるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で作業していたら会長が暑そうにして、額の汗を拭っていた。

 

「ふぅ、少し動いただけで汗を掻くな」

 

「もう少しで夏ですもんね。それに梅雨時ですので湿度も関係するんでしょうね」

 

 

 実際に生徒会室はジメジメとしているし、やはり湿度も関係してるのだと思う。

 

「脱水症状にならないように注意を呼びかけよう」

 

 

 何かを思い立ったのだろう。会長がおもむろにペンと紙を取り出し――俺に手渡してきた。書記は七条先輩なんですが……まぁいないし仕方ないか。

 

「如何書きます?」

 

 

 注意書きくらいなら俺でも問題無いだろうしな。

 

「淫乱な人間ほどきちんと水分取るように」

 

「それは書きたくないです」

 

 

 もう少しまともな表現は出来ないんだろうか、この人は……結局注意書きについては俺が考えて、普通に注意を促す内容にした。だってあんな事書いても水分補給しようなんて思う人間は居ないだろ?

 放課後教室に残ってる轟さんを発見、萩村も一緒のようだった。

 

「何してるの?」

 

「今度の発明品の設計図を書いてるんだー」

 

「へー、どんなの?」

 

 

 萩村が興味深そうに轟さんに質問している。ロボ研も真面目に活動してるなら予算を与えるのに抵抗が無いんだけど……実績がアレなわけだし、七条先輩だけがロボ研を強く支持してるので一応の予算は下りたんだよな……

 

「全自動皮むき機だよ」

 

「へー興味深いね」

 

 

 もしそれが実現出来るのなら、皮むきの手間が省けて少しは楽が出来るかもしれない。

 

「あっ……津田君被ってるんだ」

 

「ん?」

 

 

 なんだか話題が変わったような気が……

 

「一応聞くけど、野菜とかの皮だよね?」

 

「ううん、男性器の皮だよ!」

 

「……萩村、今すぐロボ研を活動禁止にしたいんだけど」

 

「そうね。もう少しまともなものを作るのなら兎も角、あんなのじゃね……」

 

 

 廊下に向かいながら、俺は萩村と真面目にロボ研を潰す算段を立てるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で作業していたらいきなり会長が立ち上がった。

 

「どうかしましたか?」

 

「津田さんにお礼を言うのを忘れてました」

 

「あっ、そういえば……」

 

 

 試験対策で津田さんには散々お世話になったのですが、その後まだ津田さんと会う機会が無かったのでお礼を言えずじまいになっているんですよね……

 

「なかなかシフトも合いませんしね」

 

「まぁメールでも良いんですが、ここはやはり正面からお礼を言いたいですよね」

 

「ですが会長、会長はそれほど津田さんにお世話になったって感じは無いのでは?」

 

 

 元々優秀であり、学年も上の魚見会長は、それほど津田さんに教わったという事は無いはずなのですが……

 

「いえいえ、主に夜お世話になってましたし」

 

「夜? 電話でもしてたんですか?」

 

「いえ、勉強で溜まったストレスを津田さんで発散していただけです」

 

「はぁ……?」

 

 

 イマイチ理解出来ない会長の言葉に、私は首を傾げた。津田さんでストレス発散って如何言う事なのでしょうか? 

 

「妄想の中ですが、津田さんは私を厳しく調教してくれましたし」

 

「ろくな事じゃねぇな!?」

 

 

 まさかの発言に口調が崩れてしまった。しかしそれくらい衝撃を受けた発言だったのです。

 

「あの目、あの口調、そして何よりあの見た目! 何もかもが理想の調教相手ですよ!」

 

「ここに居ない津田さんに謝れ!」

 

 

 居れば本人が拳骨なり何なりで反省させる事は可能でしょうが、生憎この場に津田さんは居ません。なので私は魚見会長に津田さんに対する謝罪を要求しました。

 

「ですが、私だけではなくシノッチや七条さんも同じような妄想でストレス発散をしてたようですし……」

 

「ホントなんで貴女たちが学年トップなんでしょうか……」

 

 

 頭を抱えながら考えましたが、普通にしてれば優秀だからという結論に至りました。なんだか不公平な気がするのは、おそらく気のせいでは無いんでしょうね……




アリアの発想は無い……

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