桜才学園での生活   作:猫林13世

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スズEND

 先輩たちが引退し、生徒会メンバーは一気に様変わり――することもなく、会長にタカトシ、私がそのまま会計になり、副会長に八月一日さんを迎え三人体制で運営していくことになった。

 

「来年、優秀な子がいたらスカウトしましょうか」

 

「そういえばスズは入学前から生徒会として活動していたんだっけ?」

 

「入試トップだったから、入学式の打ち合わせとかで顔を出していたのを知られていたのよ」

 

 

 その時に天草先輩に声をかけられ生徒会に入った。まさかその後すぐにタカトシもスカウトされ一緒に活動するとは思っていなかったけど。

 

「ところで、新副会長はどこに行ったのかしら?」

 

「新聞部にインタビューされてるよ。畑さんじゃないから、ちゃんとアポを取って場所も生徒会室じゃなくて食堂で」

 

「そうだったのね」

 

 

 あの人も引退したので、新聞部もだいぶ大人しくなるだろうとタカトシは言っている。それでもエッセイを書いてほしいという依頼が来るのは、新聞部の中にもタカトシのファンが大勢いるからだろう。

 

「会長になったとはいえ、やることはあんまり変わらないからな」

 

「殆どタカトシが回してたからね」

 

 

 天草先輩や七条先輩も優秀ではあったが、何処かふざける傾向があった。だがタカトシがいたことで生徒会業務に支障をきたすことなく運営できていたのだ。

 

「来年はいよいよ私たちも受験生ね」

 

「まだ先輩たちの受験も終わってないのに、気が早いな」

 

「そうかしら? でもせっかくなら一緒の大学に通いたいじゃない」

 

 

 先輩たちが引退し、タカトシが生徒会長に就任したタイミングで私は告白した。断られると思っていたが、タカトシも私のことを想ってくれていたようで、OKの返事を貰え付き合っているのだ。

 

「スズは留学に行くとか言ってなかったっけ?」

 

「留学も興味あるけど、今は彼氏とのキャンパスライフの方が興味あるわ」

 

「スズがそういうことを言い出すとは思わなかったな」

 

「せっかく彼氏ができたんだから、少しくらい浮かれたっていいじゃないの」

 

 

 私の容姿はこんなだから、彼氏なんて難しいと思っていた。よしんばできたとしても変態チックな男だろうと思っていただけに、これほど容姿の整った彼氏ができたことに浮かれているのだろう。

 

「(いや、容姿云々じゃなくて、タカトシと付き合えたことに浮かれているのか)」

 

 

 天草先輩や七条先輩、その他にもタカトシを狙っていた女子は大勢いる――いや、今も狙っているのかもしれない。それでもタカトシは私を選んでくれたのだ。浮かれるなという方が無理だろう。

 

「それにしても、天草先輩が運営していた時は結構大変だと思っていたんだけど、それほど大変じゃないよな。俺が入らなくても三人で運営できてたんじゃない?」

 

「絶対無理! あの二人相手に私一人じゃ過労死するって」

 

「そうかもね」

 

 

 タカトシにしては珍しく冗談を言ってきたが、私からしてみたらその冗談は笑えない。あの二人に加えて畑さんもいただろうし、横島先生までおまけとしてついてくるのだ。一ヶ月持たずに生徒会を辞めていただろう。

 

「そういえば横島先生は?」

 

「あの人が来るわけないだろ」

 

「それもそうね」

 

 

 タカトシが会長となり、生徒会顧問変更も視野に入れていたのだが、横島先生が懇願して今年度の変更は無くなった。その代わり、あまりにも酷かったら来年度は容赦なく変更すると言っているので、今は真面目に仕事をしているのだろう。

 

「こうやって学園内の問題を解決しておけば、俺たちが引退したとき八月一日さんが楽をできるだろうしな」

 

「もう後輩のことを考えてるの? まだ会長に就任したばっかりなのに」

 

「こういう問題は早く解決しておくに限るだろ。来年からは両親も落ち着くようだし、コトミの方も俺が付きっ切りで面倒を見る必要もなくなる」

 

「それじゃあゆっくり図書館で勉強デートができるわね」

 

「色気も全くないデートだがな」

 

「良いじゃないの。受験生なんだから」

 

 

 本音を言えばもうちょっと高校生らしいデートもしてみたいのだが、それは難しいだろう。私たちの成績ならなんて油断はせず、しっかりと勉強しようと二人で決めたのだから。

 

「それにしても、インタビュー長いわね」

 

「それだけ期待されてるんだろうさ。八月一日さんは優秀だし、すでに次期生徒会長とか言われてるくらいだから」

 

「随分と気が早いわよね」

 

 

 生徒会室には私とタカトシだけ。普段なら我慢できるのだが、急にそういった欲求が私の中に湧き出てくる。

 

「ねぇタカトシ」

 

「学校ではしないってスズが言い出したんだろ?」

 

「そうなんだけどさ……さっき高校生らしいとか思ったらね」

 

「校内恋愛は解禁したが、あくまでも行きすぎない限りという制限を設けた側がそれを破るのか?」

 

「誰も見てないし……ダメ?」

 

 

 私の体格ではどうしてもタカトシを見上げる形になる。それが懇願しているイメージを助長しているのだろう。タカトシは少し困ったように頭を搔いてから、軽く唇を重ねてくれた。

 

「相変わらず、スズのおねだりは強烈だな」

 

「私としては、もっと大人っぽく誘ってみたいんだけどね」

 

「無理する必要はないだろ。俺たちは俺たちらしく、身の丈に合った付き合い方をしていけばいいんだから」

 

「ほんと真面目よね……どうして他の男子たちにそういう考え方ができないのかしら」

 

 

 この間もタカトシがクラスメイト達の持ち込んだ雑誌を見て落胆したのだが、この場合タカトシが正しいのか、それとも他の男子たちが正しいのかという問題が残ってしまうのだ。

 

「普通はあっちなんだろうがな」

 

「でも、私はタカトシがいいの」

 

「ありがとう」

 

 

 出会った時はこんなことになるなんて思わなかったけど、これからもタカトシと過ごしていこう。


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