桜才学園での生活   作:猫林13世

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最後は盛大に


シノEND

 私が大学生になって二年目、昨日まで一人暮らしをしていたのだが、今日からは彼氏と同棲という夢見ていたことが現実になる。

 生徒会を引退し、受験生として必死に勉強して今の大学に入学。そして告白してOKを貰って舞い上がっていたのが懐かしく思えるが、あっという間に一年過ぎていたのか。

 

「しかし、お前が実家を出れるとは思ってなかったぞ」

 

「両親の仕事も一段落しましたので、コトミの世話は両親が引き受けてくれることになったので。そのおかげで俺も受験に専念できました」

 

「お前の成績ならそれほど必死に勉強をしなくても大丈夫だったんじゃないか?」

 

 

 成績トップで論文なども問題なくこなせるだろうから、この大学に入るのなんて難しくなかったと思うのだが。

 

「入学早々ミスキャンパスに選ばれた人の彼氏なんですから、それなりの成績じゃ恥ずかしいじゃないですか」

 

「そうか……私の彼氏だから頑張ってくれたのか」

 

 

 高校時代、こんなことを言われるとは思っていなかったが、付き合ってみるとタカトシは意外と人のことを褒めてくれることが多い。そりゃ、以前の私は褒める前に呆れられたり怒られたりすることの方が多かったが、それでもここまで褒めてくれるとは思っていなかった。

 

「だがタカトシだって入学早々大人気じゃないか」

 

「先輩の中にエッセイの読者がいたらしく、そこから文学サークルに誘われてるだけですよ」

 

「大学ではサークル活動はするのか?」

 

 

 高校時代はコトミの世話とかその他諸々で部活の時間が取れないということで無所属だったタカトシだが、どの部活に入っても即戦力だっただろう。そして今、コトミの世話という最大の枷が無くなったのだから、サークルも入り放題だろう。

 

「サークル活動もいいですけど、シノさんとの時間を大事にしたいので今のところは考えていません」

 

「そ、そうか……なんだか恥ずかしいな」

 

 

 私が卒業するタイミングで付き合いだしたのだが、私は大学生でタカトシは高校生。時間を合わせるのが難しくそれほどデートもできなかったからだろう。私はいまだにこういうことを言われると照れてしまう。

 

「とりあえず受験勉強もしなくてよくなりましたし、俺も大学生になったので時間的余裕が増えましたので、何処かデートにでも行きましょうか」

 

「そうだな」

 

 

 意気揚々とデートに出かけるのだが、それほど経験値がない私たちが行くところなんてたかが知れている。私たちは近所の公園に出かけ、満開の桜を眺めている。

 

「ここで良かったんですか?」

 

「あぁ。桜を見ると高校時代を思い出すな」

 

「そういえば、初めて会ったのも桜の木の下でしたね」

 

「覚えてたか」

 

「それくらいは覚えてますよ」

 

 

 あの時は生徒会のメンバーが足りずに困っていた。そこにタカトシが通りかかってスカウトしたのが私たちの始まり。ロマンティックの欠片もない始まり方だが、それでもこうやって恋人関係まで発展できた。

 

「なぁ」

 

「なんでしょうか?」

 

「前から聞きたかったんだが」

 

 

 これは以前から私の心の中にあった疑問。聞こうと思えばいつでも聞けたが、それでも聞けなかった疑問だ。

 

「本当に私で良かったのか? タカトシなら他の女子もいただろう」

 

 

 実際私が告白したから諦めた人を知っている。今でも交流はあるが、以前ほど気楽に付き合えてはいないが。

 

「シノさんがどう思っているのかは分かりませんが、俺はシノさんが好きで、シノさんと付き合いたいと思ったから告白を受け入れたんです。もしその気持ちが迷惑だというのでしたら、俺は今すぐにでも貴女の目の前から去りますが」

 

「そんな風に思っているわけないだろ! 私はお前のことが好きで、ずっと恋人関係になりたいと思っていたのだから!」

 

 

 その想いが強すぎて、妄想などしていた時もあったな……

 

「でもそうか……タカトシはちゃんと私のことを想ってくれていたのだな」

 

「あまりそういうことを言うタイプではないので不安にさせてしまいましたね。ゴメンなさい」

 

「いや、私の方こそ馬鹿なことを聞いて悪かったな。だがどうしても不安だったんだ」

 

 

 今でもタカトシは人気が高い。いや、私服になったからか以前よりも女性に声を掛けられる確率が上がっている気がする。それでもタカトシは私の隣にいてくれると言ってくれた。これで私の中にあった不安は解消されたのだ。

 

「それにしても、こうしていると出会った時を思い出してなんだか気恥ずかしいな」

 

「たまにはいいんじゃないですか? こういう時間も」

 

 

 年下だが、私よりも達観した考え方をするタカトシだ。こういう時間の良さも理解できるのだろう。

 

「しかし、大学生でここにいるのは私たちだけみたいだな」

 

「まぁ、普通の大学生が何処に出かけるのかは分かりませんが、俺たちは俺たちで良いんじゃないでしょうか? 変に肩肘張って疲れてては、せっかくのデートが台無しですから」

 

「そうだな。私たちは私たちらしく、身の丈に合ったデートを重ねていこう」

 

 

 高校時代はみんなで出かけていたから色々な場所に行けたが、いざ二人きりとなると恥ずかしい。だがいずれはもっとたくさんの場所へ出かけ、その先も視野に入れたいと思っている。

 

「タカトシ」

 

「はい、何でしょうかシノさん」

 

「これからも末永くよろしくな」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

 お互いに気持ちを確かめ合い、周りに注意してから口づけをする。私たちの出会いも、決意を確認しあったのも桜の下。これから大事な決断はこの場所になりそうな予感がしている。


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