桜才学園での生活   作:猫林13世

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暑中見舞いではありません


夏のお見舞い

 夏も終わりに近づいてきたが、生徒会作業があるために登校している。

 

「どうして学校は休みなのに問題が出てくるんだろうな」

 

「どうしてでしょうね」

 

 

 タカトシと愚痴りながら見回りを再開する。部活とかで学校に来ている生徒は少なくないが、ここまで問題がある学校は多くないだろう。

 

「コトミが洗濯物を飛ばしてそれを追いかける時にパンチラを狙った畑さんを追いかける五十嵐さん」

 

「もう何が目的か分からない隊列だったわよ……」

 

 

 結局タカトシが洗濯物を捕まえ、コトミに注意してから畑さんにお説教、五十嵐先輩もそこに加わり畑さんは必死に頭を下げていた。

 

「とりあえず今日はもう帰ってゆっくりしたい」

 

「あんたがそこまで言うってことは、結構限界なのね」

 

 

 タカトシがゆっくりしたいなんてあまり聞いたことがない。普段心の中で言っているのかもしれないけど、こうして言葉にするのはめったにない。

 

「戻りました」

 

「ちょうどよかった。これから一度家に帰って古谷先輩のところに行くぞ」

 

「古谷さんの?」

 

 

 何故私たちも行かなければいけないのかと思ったが、会長の中で私たちも一緒に行くことは決定しているらしい。

 

「古谷先輩、足を骨折したらしくてな。家事の手伝いをしに行くんだ」

 

「なぜ私たちも?」

 

「古谷先輩たっての望みだ。本当はアリアも連れて行きたかったんだが、家の事情ですでに帰宅してるからな」

 

「そうだったんですね」

 

 

 タカトシの顔色を確認したが、特に変化は見られない。怒ってはいないようだが、また面倒なことにならなければいいがとは思っているのかもしれない。

 

「それじゃあ一時間後に駅に集合だ」

 

 

 一度帰宅しなければいけないので、会長はそう号令をかけて解散を宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古谷先輩を見舞う為に先輩のマンションへ向かう。制服姿は見慣れているので今更だが、私服姿のタカトシは相変わらずカッコいいな……

 

「何か?」

 

「周りからの視線に牽制してるんだ」

 

「はぁ?」

 

 

 すれ違う女性がタカトシの姿に見惚れているので、私と萩村で視線で牽制しているのだが、タカトシ本人は見られ慣れているのか特に気にしていない。

 

「(なぁ萩村)」

 

「(なんですか?)」

 

「(タカトシやアリアレベルになると、他人の視線を気にしてたら外出できないのかもな)」

 

「(ですね。タカトシもですけど、七条先輩も気にしてる様子はなかったですし)」

 

 

 今日はアリアがいない分男性の視線がないが、生徒会で出かけるとかなりの視線を向けられるのだ。

 

「到着だ」

 

 

 部屋番号を入力し古谷先輩にオートロックを解除してもらった。

 

「古谷先輩、お見舞いに――」

 

「いらっしゃい。今身体を拭いてるところだから」

 

「――タカトシ、見るな!」

 

 

 私が慌てて止めようとしたが、タカトシは既に視線を逸らしていた。

 

「わざわざお見舞いに来てくれてありがとうな。天草だけじゃなく津田君や萩村も」

 

「それで、わざわざ生徒会メンバーを呼んだ理由は?」

 

「家事の手伝いをしてもらいたくてな。天草だけでも十分なんだが、一人に押し付けるのもアレだろ? だから生徒会の後輩に頼もうと思って」

 

「そうだったんですね。それじゃあタカトシは昼食の用意を頼む。私は洗濯物を取り込むから、萩村は掃除を頼む」

 

「分かりました」

 

 

 私がタカトシの料理を食べたかったわけではないが、このメンバーだったらこの割り振りになるのは必然だろう。萩村では洗濯物に届かないかもしれないし。

 

「なんだか失礼な視線を向けられた気がするんですが?」

 

「気の所為だろ」

 

 

 萩村から鋭い視線を向けられたが、私は心の裡を知られないように必死にごまかす。

 

「というか、女子が料理じゃないんだな」

 

「先輩だってタカトシの家事力は知ってるでしょう? アレに敵うと言えるほど、私も萩村も料理上手ではありませんので」

 

 

 最低限のものは作れる。だがタカトシと勝負するなんて無謀なことはしない。

 

「食材はあるものを使っていいんですね?」

 

「あぁ、頼む」

 

「何かリクエストは?」

 

「そうだな……夏だし辛い物を」

 

「分かりました」

 

 

 古谷先輩に希望を聞いてからタカトシはキッチンへ消えていく。その間に私は洗濯物を取り込み、萩村は部屋の掃除を済ませる。

 

「七条は来られなかったんだな」

 

「家の事情とのことです」

 

「なら仕方ないか。あいつが来るといろいろと面白いから来てほしかったんだが」

 

「私たちが揃うと昔の癖が出て、タカトシの機嫌が悪くなるんですよね」

 

 

 自重しようとは思うのだが、どうしても古谷先輩がいると昔の癖が出てきてしまう。まぁ今日は北山先輩や南野先輩がいない分大人しくはできただろうけども。

 

「ところで、そろそろ天草も生徒会引退だろ? 引継ぎとかはちゃんとしてあるのか?」

 

「普段からタカトシが回してたくらいですから、引き継ぎもスムーズに済むと思いますよ」

 

「それなら安心だな。後は受験生としてしっかりと勉強するくらいか」

 

「ですね」

 

 

 普段から予習復習はしてあるので、そこまで必死に受験勉強する未来は見えない。だが油断はしないようにしなければな。

 

「お待たせしました。山葵漬けがあったので山葵チャーハンにしました」

 

「美味そうだ」

 

 

 タカトシが作ってくれた料理に三人で舌鼓を打ちながら、やはりタカトシの家事力は高いなと心の中で肩を落とすのだった。




タカトシに勝てる家事能力を持ってるのは出島さんくらいか?

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