桜才学園での生活   作:猫林13世

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しっかりと対策しましょう


暑さ対策

 ここ最近暑い日が続いている。だがエアコンに頼るのは環境問題的にもよろしくないので、何か他の方法があればいいのだが……

 

「こういう時はIQ180の萩村の出番だな」

 

「スズちゃん、何かいい方法ないかな?」

 

 

 ちなみに、なぜタカトシを頼らなかったのかというと、あいつは今クラスメイトたちを集めて補習回避のための特別授業中なのだ。

 

「少しでも涼しい風を起こすために、打ち水などをすると体感的に涼しくなります」

 

「打ち水か」

 

「楽しそうだね~。早速出島さんに水鉄砲を持ってきてもらおう」

 

「その『撃つ』じゃないですからね」

 

「だがそっちも楽しそうだな。夏休みにプールかどこかでやってみるか」

 

「水に濡れる水着で緊張感も上がるようにしようか」

 

 

 普通の人が言えば冗談で済むだろうが、アリアが言うと冗談に聞こえないな……何せ七条グループの技術力を使えばそれくらい簡単に用意できるだろうから。

 

「それじゃあ早速打ち水を行おう」

 

 

 アリアと萩村を引き連れ、私は生徒会室から外へ向かう。

 

「結構地味だな」

 

「まぁ、派手さはないですよね」

 

 

 ただ柄杓で水を撒くだけなので、絵面的に非常に地味。それなのに腕に蓄積するダメージはそれなりという、結構な重労働だ。

 

「あれ? 会長たちは何をしてるんですか?」

 

「コトミか。何をしているように見える?」

 

「そうですね……」

 

 

 コトミの思考の中に打ち水という概念があるのかどうか微妙だが、これくらい見ればわかるだろう。そう思っていたのだが――

 

「水たまりを作って、スカートの中を覗こうとしている?」

 

 

――斜め上な回答が飛び出した。

 

「そんなことしなくても、私たちは同性だ。覗こうと思えばいくらでも覗けるだろ」

 

「そうでしたね」

 

「その答えもどうかと思いますけど」

 

 

 萩村から冷たい視線を向けられ、私は慌てて話題を変えようと思考を巡らせる。

 

「打ち水の効果で涼しくなるのは分かったが、この広い学園内すべてに水を撒くのはかなり大変だな」

 

「確かにそれはありますね」

 

「シノちゃ~ん! これを使えばいいんじゃない?」

 

 

 そう言ってアリアが持ってきたのはホース。確かにこれなら一気に水を撒くことができるな。

 

「それじゃあ早速」

 

 

 ホースを使って水を撒くと、これほど楽な作業だったのかと思い知らされる。重いバケツを持つ必要もないし、柄杓を振る必要もない。ただ身体を少し動かせば撒く位置も変えられるとは。

 

「そうだ! ちょっと会長――」

 

「ふむふむ」

 

 

 コトミから提案されたことをさっそく実行する。

 

「これはかなり気持ちいいな」

 

「身体に巻き付けたホースから伝わる水の温度が気持ちいいんですよね?」

 

「あ、当たり前だ!」

 

 

 決してホースから伝わる適度な締め付けが気持ちいわけではない。そもそも私はMではないので、締め付けられて快感を覚えるわけではないからな。

 

「ですが、この写真を見た人はどう思うでしょうね」

 

「畑……どこから現れたんだ、お前」

 

 

 畑が撮った写真を見ると、私がホースに縛られて恍惚の笑みを浮かべているようにしか見えない。こいつ、絶妙なアングルで撮ったな。

 

「はい、削除」

 

「せっかく次の記事は『会長、セルフSMプレイで絶頂!?』にしようと思ったのに~」

 

「この間の停学で懲りてなかったのか、お前は……」

 

「あっ、シノちゃんの水撒きのお陰で虹ができたよ~」

 

 

 畑を注意している横で、アリアが無邪気にはしゃいでいる。同い年だが、こういうところは子供っぽくて微笑ましく感じるな。

 

「こんな綺麗な虹見るの、おしっこ飛ばした時以来だな~」

 

「微笑ましいな~」

 

「微笑ましいかっ!?」

 

 

 私たちがほのぼのしている横で萩村がツッコミを入れる。どうやら私たちの感性と萩村の感性は違うようだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特別授業を終えて生徒会室へ向かおうとしたが、何故かメンバーの気配は外にある。

 

「何してるんだ?」

 

 

 今日のスケジュールの中に、外でやらなければいけない作業はなかったはず。俺は首をかしげなら昇降口へ向かい、外にいるメンバーと合流する。

 

「お疲れ様です。何をしてるんですか?」

 

「タカトシか。暑かったから打ち水をしていたんだ」

 

「打ち水のお陰でちょっと涼しくなったでしょ~?」

 

「ですが、この後雨の予報なんですが」

 

 

 俺の言葉が引き金になったのかは分からないが、ちょうどそのタイミングで雨が降り出した。

 

「そういえば今朝、タカ兄に傘を持ってけって言われてたっけ」

 

「コトミ! そういうことは早く言いなさいよね!」

 

「すっかり忘れてたんですよ~。でも、先輩たちなら天気予報を見てきててもおかしくないと思うんですけど」

 

 

 コトミの反論に、三人は言葉を失っているようだ。どうやら誰一人として天気予報を確認していなかったのか。

 

「まぁ、水を撒くことは良いことだと思いますし、部屋に篭って書類仕事ばかりだと鈍ってしまいますからね。丁度いい運動だったと思いましょう」

 

「それは良いんだが……私、傘持ってきてないんだが」

 

「私も」

 

「私もです」

 

「私は持ってますよ。つまり、先輩たちより私の方が用意がいいということに――」

 

「お前はタカトシに言われたから持ってきただけだろうがー!」

 

 

 これだけ騒いでいたらせっかく涼しくなったのに意味がないと思うんだがな……まぁ、それを言う必要はないが。

 

「とりあえず生徒会室に戻りましょう」

 

「そうだな……」

 

 

 がっくりと肩を落とすシノ会長。今回は無駄になったが、打ち水自体は効果あるからな。次の機会につなげてほしい。




ほんと、タカトシが会長みたいになってるな……

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