桜才学園での生活   作:猫林13世

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果たして攻撃なのだろうか


下からの攻撃

 昨日はタカ君の家に泊まったので、朝は自宅ほどのんびりしている時間がない。それでも遅刻するようなことはなく、学校の最寄り駅でサクラっちと合流するくらいの余裕がある。

 

「会長、おはようございます」

 

「おはよう、サクラっち。サクラっちもこの電車だったんだね」

 

「でも会長がこの時間の電車って珍しくないですか?」

 

「今日はタカ君の家からの通学だから」

 

 

 ここだけ切り取って聞けば、私がタカ君と同棲しているように聞こえるが、サクラっちはそんな勘違いをしない。させようとしてもしてくれない。

 

「昨日はタカトシ君がシフトに入っていましたしね」

 

「コトちゃんを家に一人にすると大変なことになりかねないからね」

 

 

 いい加減信頼してあげてもいい気もしなくはないけど、タカ君からしたらコトちゃんのことは信用できないのだろう。

 

「それにしても、今日は凄い雨だね」

 

「今日体育があるクラスは全部体育館でしょうね」

 

「サクラっちは?」

 

「私はありません」

 

 

 この間シノっちがプールの授業があって、家から水着を着てきたら替えのパンツを忘れたという事件があったらしい。まぁ、今日はプールがあったとしても中止だろうから、替えのパンツなんて必要ないだろうけども。

 

「サクラっちはレインコートで完全防備だね」

 

「これのお陰でスカートも濡れませんから」

 

 

 傘だけでは防ぎきれないくらい量の雨なので、レインコートは確かにありかもしれない。だが傘だけでも十分濡れずに済むともとれる量なので、私はレインコートを着てこなかった。

 

「(あっ、マンホール)」

 

 

 以前シノっちがマンホールを男の穴だと思ったらしいとアリアっちから聞いてことがあるのを思い出して、私は思わずにやけてしまう。

 

「どうしたんで――」

 

 

 サクラっちがマンホールの上に足を下したタイミングで――

 

『ビュー』

 

「ひゃぁ!?」

 

「下からの攻撃には弱かったみたいだね」

 

 

――マンホールの隙間から水が溢れだし、サクラっちのパンツに直撃したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 びしょびしょになってしまって気持ちが悪かったので、私は学校に到着してすぐにパンツを脱いだ。

 

「うぅ……ノーパンって落ち着かない」

 

「事情を知らない人がそこだけ聞いたら、私がサクラっちに命令して一日ノーパンで過ごさせてるって勘違いされそう」

 

「そんな想像力豊かな人はいないと思いますけど」

 

 

 会長と似た思考の持ち主なんて、天草さんと七条さんとコトミさんと畑さんと横島先生と出島さんくらい――

 

「結構いますね」

 

「何が?」

 

 

 すぐに思いつくだけでもこれだけいるのだから、もしかしたらもっといるのかもしれない。

 

「私予備のパンツ持ってるよ」

 

「ほんとですか?」

 

 

 何故パンツを持ち歩いているのかと、普段の私なら問い詰めただろう。だが今はそんなことよりもこの気持ち悪さから解放されたい気持ちの方が強かったのだ。

 

「勝負パンツでTバックだけど」

 

「えぇ……」

 

 

 何故そんなものを持ち歩いているんだろうか……だが、贅沢を言ってる場合ではない。

 

「ん~~~穿き辛い」

 

 

 いくらこの落ち着かなさから解放されたいからと言って、人のパンツ――それ以前にTバックを穿くのに抵抗が出てくる。

 

「サクラっち」

 

「すみません、贅沢を言ってる場合じゃないんですけど――」

 

「大丈夫、未使用品だよ」

 

「それ以外にも悩みが」

 

 

 そもそもなぜ未使用品を持っているのだろうか、この人は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青葉さんと二人で喋りながら生徒会室へ向かう。

 

「それじゃあ青葉さんも津田先輩に勉強を?」

 

「私は広瀬さんやコトミさんほど厳しく教えられてないけどね」

 

「やっぱ頭の出来が違うんすかね」

 

「私だって平均点くらいだよ」

 

 

 自力でそれだけ採れるのなら、津田先輩に教えてもらえば成績上位者も目指せるということなのだろう。やっぱり私やコトミとは頭の出来が違うんだな。

 

「遅れまし――」

 

「大丈夫だから嗅いでみて」

 

 

 生徒会室の扉を開けると、魚見会長が森副会長の鼻にパンツを押し付けていた。

 

「勘違いしないで。サクラっちに私のパンツの匂いを嗅いでもらってるの」

 

「そこを勘違いされてるんですよ!!」

 

 

 こんな状況でも森先輩は正確にツッコミを入れている。津田先輩には劣るが、この人も立派なツッコミ役なのだろうな。

 

「――というわけなの」

 

「そうだったんすね。私、予備のパンツ持ってるっすよ?」

 

「ほんとっ!?」

 

 

 森先輩の目が輝きだした。よっぽど会長のパンツに抵抗があるんだろうな。

 

「はい。ただ間違えて兄貴のブリーフ持ってきてたんですけどね」

 

「………」

 

 

 私が取り出したパンツを見て、森先輩が固まる。森先輩は今、Tバックかブリーフかの二択を突き付けられているのだ。

 

「サクラっち、どうする?」

 

「………会長のパンツで」

 

 

 さすがに兄貴のパンツを穿くのは無理だと判断したらしく、会長のパンツを選んだ森先輩。まぁ、誰かに見せるわけじゃないんだし、あの形でも問題ないか。

 朝にそんなことを考えていたのなんてすっかり忘れて放課後。生徒会室には顧問の音羽先生がやってきた。

 

「この部屋蒸しますね。少し換気しましょうか」

 

 

 そういって窓を開けると――

 

『ふわり』

 

 

――タイミングよく吹いた風が、森先輩のスカートを捲った。

 

「………」

 

「穿いてないように見えますけど、ちゃんと穿いてます! 証拠見せますから!」

 

「穿かせた私が言うのもアレだけど、落ち着いて」

 

 

 ノーパン疑惑を持たれ慌てた森先輩がスカートを脱ごうとしているのを、会長が必死に止めている。うーん、やっぱり森先輩じゃ津田先輩のような絶対的な安心感はないっすね。




広瀬に言われちゃおしまいなきが……

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