桜才学園での生活   作:猫林13世

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前半はオリジナル


小指の意味

 以前英稜の生徒会顧問として挨拶に来ていた音羽先生と教師の交流会と評して食事をすることになった。

 

「英稜の生徒会顧問の音羽です」

 

「桜才の生徒会顧問の横島です」

 

「桜才学園教師、小山です」

 

 

 何故小山先生まで参加しているのかというと、私と音羽先生だけでは色々と不安だからと、天草たちに言われたから。なんでも、私が桜才の品位を落としかねないとかなんとか……

 

「――って、なんで津田までいるんだ?」

 

「小山先生に誘われました」

 

「小山先生、まさか……」

 

 

 まさか小山先生まで津田狙いなのか!?

 

「『私一人じゃ横島先生の暴走を止められる気がしない』と言われまして」

 

「だって、ただでさえ横島先生の相手は大変なのに、桜才の品位が関わってるなんて言われたら不安になりますよ」

 

「そ、そこまで酷くないだろ!?」

 

 

 ちなみに、津田の妹の相手は英稜の生徒会長がしてくれているようだ。

 

「津田君でしたね。今日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、教師の交流会に生徒の自分が参加してしまい申し訳ございません。どうか自分のことは気にせず大人たちで楽しんでください」

 

「それじゃあ早速、飲むか!」

 

 

 一応アルコールメニューもある店なので、私はそこから飲み物をチョイスする。小山先生も音羽先生も今日は電車なので、私に付き合ってくれるようだ。

 

「以前桜才学園を訪れた際にも気になりましたが、桜才学園では校内恋愛禁止なんですよね」

 

「裏で付き合ってるのはいるみたいですけど、基本的にはそうですね」

 

「英稜ではプラトニックならOKなんですよね」

 

「魚見さんたちがその辺りの校則を変更しましてね。私も行きすぎなければ注意するつもりはありません」

 

「だったらウチのあのカップルは注意対象になってただろうな」

 

「ですね」

 

 

 校内恋愛禁止だと言っているにも関わらず、堂々といちゃいちゃしているカップルがいる。五十嵐が口を酸っぱくして注意しているのに、一向に改善されないカップルだ。

 

「横島先生や小山先生は注意なされないのですか?」

 

「しても聞かないからな。それに、年寄りの僻みって思われそうで……」

 

「私も横島先生も、そういう相手がいませんから……」

 

「な、なんだかすみませんでした」

 

 

 こういう時津田がなんとかしてくれるんだが、今日の津田はあくまでも私の監視。行きすぎない限り口を挿むつもりはないらしい。

 

「津田君は、恋愛についてどう思いますか?」

 

「英稜の校則のように、行きすぎない限りは自由にしていいのではないかとは思います。だからと言って、大っぴらに付き合いたいとも思いませんが」

 

「なるほど」

 

 

 この中で一番年下なのに、一番しっかりした考えを持っている津田……

 

「(なぁ小山先生)」

 

「(なんですか?)」

 

「(津田は生徒のはずだよな?)」

 

「(普段教えてる津田君と同一人物なら、間違いなく生徒なはずです)」

 

 

 音羽先生と教育論を語り始めた津田を見て、私と小山先生は二人で寂しくアルコールを呷るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教師として交流会を開いたはずだったのに、気づいたら津田君と語っていた自分を思い返し、私は生徒会室で頭を抱えていた。

 

「音羽先生、どうかしたんですか?」

 

「いえ……昨日少し……」

 

 

 森さんに心配されてしまいましたが、生徒に相談することでもないのでテキトーに濁しておく。

 

「トオりん、あれできてる?」

 

「あっ……すみません、忘れてました」

 

「それじゃあ明日までね。約束」

 

 

 魚見さんが小指を出し、青葉さんも小指を出して絡める。こういった風景は見ていて気持ちがいいものです。

 

「そういえば音羽先生」

 

「はい、何でしょう?」

 

「昨日桜才の先生たちと交流会を開いたそうですね。どうでした?」

 

「とても勉強になりましたね。他校の話を聞けるというのは、やっぱり考えを凝り固めないために必要だと再認識しました」

 

「そうなんですねー。横島先生も小山先生も、いい先生だって聞いてますから」

 

 

 人を疑っていない青葉さんと、その隣で同意している広瀬さんに対して、私は罪悪感を抱く。だって私がそう思えたのは、その二人と話したからではなく津田君と話したからであって……

 

「そういえばタカ君も参加してたんですよね。どうでした?」

 

「ど、どうもこうも、津田君はあくまでも横島先生の監視として参加していただけですから」

 

「タカ君に聞いても教えてくれなかったから、音羽先生に聞こうって思ってたのに……残念」

 

 

 津田君は人との会話を他人に話すような人ではないので、私が津田君相手に教育論を語っていたことを魚見さんに話してはいないようだ。

 

「ところで会長」

 

「なんでしょう?」

 

「例の書類、もう完成してますか?」

 

「……あっ!」

 

「今日までに仕上げるって言ってたじゃないですか」

 

「昨日コトちゃんの相手が入ったから、つい……明日までには必ず」

 

「じゃあ、これですね」

 

 

 森さんが小指を突き出すと、何故か魚見さんが照れ始める。

 

「私の女になれってこと?」

 

「約束ですよ!? ふざけるなら、今日中に完成させてもらいますからね」

 

「じょ、冗談だから! ちゃんと明日までに完成させておくから」

 

「お願いしますね」

 

「(前も思ったけど、副会長の方がしっかりしてるのよね……)」

 

 

 津田君もだけど、森さんもなかなか苦労が絶えないんでしょうね……今度二人を労ってあげた方がいいのか横島先生と相談してみましょう。




やっぱりタカトシが一番しっかりしている

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