桜才学園での生活   作:猫林13世

838 / 871
はしゃぎすぎはダメですよ


コスプレパーティー

 轟さんに誘われてコスプレパーティーを開催することになったのだが、場所はなぜか七条家……こういうのって普通、何処かの貸衣装屋さんか何かで開催するんじゃないのかしら……

 

「衣装提供が七条家なんだと思いますよ」

 

「そうなんだ……私、何も言ってないよね?」

 

「今の五十嵐さんなら、タカトシじゃなくても何を考えているのか分かりますから」

 

 

 隣にいる萩村さんに考えを当てられて驚いていたが、どうやら考えが顔に出ていたらしい。

 

「ところで、そのタカトシ君は?」

 

「橋高さんに連れられて、七条家の掃除を手伝っているようです」

 

「なんでタカトシ君が?」

 

「出島さんがこっちに付きっ切りになるみたいなので、人手が足りなくなるかもしれないということでして、それだったらってタカトシが率先してそっちに逃げました」

 

「逃げた?」

 

 

 萩村さんの言葉に引っかかりを覚えてが、参加メンバーを見まわして納得した。天草さんに七条さん、轟さんにコトミさん、そして出島さんという、ツッコミが大変そうなメンバーが揃っている……

 

「えっと……ツッコミは私と萩村さんが担当するってことなの?」

 

「私は知りません」

 

「えぇ……」

 

 

 てっきり萩村さんも手伝ってくれるのかと思ったが、どうやら彼女は相手にしないことにしているようだ。

 

「出島さん、今日は衣装を提供してくださり、ありがとうございます」

 

「気にしないでください」

 

「出島さんもコスプレが趣味なんですか?」

 

 

 コトミさんの質問は、私も思っていたことだ。これだけの衣装を個人で所有しているのは、結構なものだと思ったから。

 

「いえ、昔の撮影衣装です」

 

「撮影?」

 

「女優(意味深)時代に使っていたものです」

 

「えっ……」

 

 

 出島さんの前職はなんとなく聞いたことがあるけど、もしかしてその時に使っていたものなんじゃ……

 

「ところでアリア先輩、いつもより胸が慎ましやかになっていませんか?」

 

「この衣装のキャラは貧乳キャラだからさらしを巻いてるんだよ~」

 

「本格的ですね~」

 

「なんだこの敗北感……」

 

 

 七条さんとコトミさんの隣で天草さんががっくりと肩を落としている。

 

「そういえば、今日の主催者であるネネの姿が見えないんだけど」

 

「言われてみればそうですね」

 

 

 さっき参加者を考えた時、いるものだと思っていたから気にしなかったけど、そう言われてみれば轟さんの姿が見えない。

 

「ここにいます」

 

「っ!? び、ビックリした……」

 

 

 背後からいきなり声をかけられ思わず飛び退いてしまった。萩村さんもビックリしたような顔をしているので、どうやら私が大げさって訳ではなさそう。

 

「そ、それでどうして着ぐるみなんて?」

 

「ネネが一番楽しみにしてたじゃない」

 

「実は……昨日体重計に乗ったら増えてて……」

 

「それでサウナスーツかい……」

 

 

 この場には女性しかいないので轟さんも素直に説明してくれたんだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄がいないから酷い感じになるのかなーって思っていたけど、思いのほか皆さん大人しくて驚いている。

 

「それにしても、出島さんが出演した作品ってどれだけあるんですか?」

 

「興味ありますか?」

 

「知り合いが出演してる作品って、観てみたいじゃないですか」

 

「それじゃあ鑑賞会でもしますか? 以前お嬢様も興味があるとおっしゃってくれていましたし」

 

「そういえばそうだったね~」

 

「反対っ! 絶対にダメです!」

 

 

 カエデ先輩が真っ先に反対を表明し、スズ先輩もそれに続く。だが私とアリア先輩、シノ会長とネネ先輩の四人は興味津々。

 

「賛成多数により、これより出島さんの出演作の鑑賞会を開催――」

 

「遊んでるなら自分の仕事をしてもらってもいいですかね?」

 

「あっ……」

 

 

 ノリノリで鑑賞会を始めようとしていたところにタカ兄の登場。仕事中にもかかわらず遊び始めてしまった出島さんは、連行されていくかの如く部屋からいなくなってしまい、部屋には青筋を立てているタカ兄が残った。

 

「た、タカ兄……あの……」

 

「出島さんの過去に興味を抱く暇があるなら、ここで勉強会でも開いてやろうか? 幸いにして轟さん以外は成績上位者だ。分からない問題が出てきたらすぐ解説してもらえるぞ」

 

「そ、それだけは……」

 

「会長や七条先輩も、仮にも受験生なのですから、人の過去を気にしてる暇があるなら一問でも多く過去問を解いてみたら如何でしょうか?」

 

「う、うむ……」

 

「そ、そうだね……」

 

 

 あっという間に鑑賞会という流れはなくなり、むしろコスプレパーティーって雰囲気でもなくなってしまった。

 

「さ、さすがタカトシ君……」

 

「私たちでは止められなかった流れを、あっという間に変えちゃいましたからね」

 

 

 反対派だったカエデ先輩とスズ先輩は、タカ兄の登場で自分たちに都合のいい流れになりホッとしている様子。

 

「ところでタカ兄、勉強会って本気じゃないよね?」

 

「さっき出島さんから伊達メガネを渡された時は使うつもりはなかったが、厳しい教師のコスプレでもしてやろうか?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

 ただでさえ厳しいのに、伊達メガネなんてかけられたら妄想が加速――じゃなかった。より厳しさが増しそうな気がする……

 

「あと轟さんも。体重が増えたなら無精しないで運動するか食事制限した方が痩せるよ」

 

「ご指摘ありがとうございます……でも、根性なしの私じゃ続けられないから」

 

「自覚してるなら、もう少し頑張った方がいいかもね」

 

 

 結局タカ兄登場の所為で、コスプレパーティーはお開きに……この人がいると一気に流れが変わるから恐ろしいんだよね……




タカトシのはコスプレなのだろうか

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。