桜才学園での生活   作:猫林13世

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義姉妹の会話が酷い


豆知識

 今日はお義姉ちゃんが家事をしてくれる日なので、私は少し気が緩んでいる。だってお義姉ちゃんが家事をするということは、タカ兄がバイトで家にいないということだから。

 

「でもさすがに、ゲームし放題というわけではないからな……」

 

 

 帰ってきたら宿題をちゃんとやっているかチェックされるわけだから、私はとりあえず宿題を片付けるために机に向かっている。

 

「ていっても、自力で片付けられたら苦労しないんだよね……」

 

 

 分からない箇所は飛ばしていいと言われているが、そんなこと言ったら殆ど空欄で提出することになってしまう。私はとりあえず最後まで問題に目を通し、分かりそうな箇所だけを自力で解くことに。

 

「コトちゃん、進捗はどう?」

 

「お義姉ちゃん、まぁ……ぼちぼちってところですね」

 

 

 様子を見に来たお義姉ちゃんに、私は力なく手を振って見せる。今のところ、空欄は五割以上残っているので、胸を張って大丈夫と言えるレベルではないので。

 

「ところで」

 

「はい?」

 

 

 急に真面目なトーンになったお義姉ちゃんにつられるように、私は居住まいを正してお義姉ちゃんに視線を向ける。

 

「生ごみを捨てる時、いらないチラシとかに包むと臭いを抑えられるんだよ」

 

「なるほど。でも、なんで今そんな話を?」

 

「コトちゃんの部屋、メス臭いからせめてティッシュを包んでおけば抑えられるかなって」

 

「あっ……ちょっと今発散したばかりでして……」

 

 

 換気扇を回すのを忘れていたのと、ちょっと派手にイってしまったのでその臭いだろう。

 

「とりあえずタカ君が帰ってくるまでに臭いをどうにかしておかないとね」

 

「換気扇を回して、部屋にファ〇リーズ撒いておきます」

 

「宿題もちゃんとやっておくんだよ」

 

「分かってます」

 

 

 お義姉ちゃんに注意され、私は部屋の換気をしながら宿題を片付ける。何個かは分からなかったが、一応終わらせることができたのでリビングに降りていくと、お義姉ちゃんがキッチンの掃除をしている。

 

「何してるの?」

 

「シンクの蛇口って雑菌がわきやすいんだよ。洗い物の時にはねてついた泡が原因でね」

 

「だから掃除が必要なのかー。おしっこの後の便座の裏と同じだね」

 

「そ」

 

 

 タカ兄がいたら怒られそうな会話だが、とりあえずお義姉ちゃんは怒ることなく同意してくれた。

 

「ところで、ここに来たってことは宿題は終わったの?」

 

「何個かわからないので、お義姉ちゃんに聞こうと思って」

 

「自力で解こうとしてるだけ進歩だね」

 

「散々タカ兄とお義姉ちゃんに尻を叩かれてますから」

 

 

 リアルに叩かれたら絶頂しちゃうかもしれないけど、さすがにそんなことはされていない。私はタカ兄が帰ってくるまでお義姉ちゃんに分からなかった個所を聞きまくってなんとか片付けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リビングでボアと遊んでいると、背後から母の鈍い声が聞こえてきた。

 

「どうしたの?」

 

「昔のスカートが穿けなくなってショック……」

 

「それ何時の?」

 

「五年位前かな」

 

 

 つまり、五年で太ってしまったというわけか……他人事のように言っているけど、私も気を抜いたらそういうことになってしまうのかと、戒めのように母を眺めておこう。

 

「仕方ない……お風呂入ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 スカートのことは諦めたようで、母はお風呂へ向かう。

 

「そういえばシノ会長もこの間体型を気にしていたような」

 

 

 そのうちまた何か企画するのかと考えていたら、今度は脱衣所から鈍い声が聞こえてきた。

 

「どうしたの?」

 

『ブラのホックに手が届かない。身体が硬くなった』

 

「(老化現象……)」

 

 

 さすがに声に出すことはしなかったが、私は母の衰えを目の当たりにした気分だった。

 

「――ていう感じだったんですよ」

 

「ウチの母も似たようなことを言ってたな」

 

 

 後日会長にその話をすると、やはり会長のお母さんも似たようなことを言っていたようだ。

 

「あっ、ちょっと横島先生に用事があるので、職員室に行ってきます」

 

「あぁ、行ってらっしゃい」

 

 

 生徒会室に来てくれれば一番いいのだが、あの人は基本的にこの部屋に近寄らない。というか、来るとタカトシの機嫌が悪くなるので来ないでほしい。

 

「横島先生」

 

「んあ? 萩村か。ちょっと待ってくれ」

 

 

 私が声をかけると、横島先生はちょうど爪のお手入れの真っ最中だったようで、少し待つことに。

 

「爪のお手入れに余念がありませんね」

 

「女子のたしなみだからね」

 

 

 私も一応しているが、ここまで念入りにしたことはないかもしれない。というか、横島先生もこういうことはしっかりとしているんだな。

 

「鼻フックの際、相手の鼻をケガさせないようにネっ」

 

「女子要素が見当たらない」

 

 

 行動自体は女子っぽいのに、その後のセリフですべて台無しになっている……この辺りがこの先生が尊敬されない理由なんだろうな。

 

「それで、萩村は何の用だ?」

 

「先日頼まれていた資料が完成しましたので持ってきました」

 

「サンキュー」

 

 

 USBを横島先生に渡し、職員室を辞そうとしたら――

 

「コトミ?」

 

 

 職員室の奥からコトミがトボトボと出てきたのが目に入った。

 

「あぁ。津田妹、せっかくやってきた宿題を持ってくるの忘れたらしい。それで本当にやってきたのかチェックされてたところだ」

 

「それで精魂疲れ果てた感じなんですね」

 

「まぁ、普通に答えられていたから、宿題はやったんだろうな」

 

「タカトシが見張ってるでしょうからね」

 

 

 サボろうものならタカトシから大目玉を喰らうことになるだろうし、コトミが宿題を忘れるのはそれ自体をというより持ってくるのを忘れる可能性の方が高くなっているのだろう。




やっぱり抜けてるコトミ

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