桜才学園での生活   作:猫林13世

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たこ焼きは好きです


タコパ

 パリィと二人で近所を歩いていると、何やらいい匂いが漂ってきた。

 

「いいニオイがする」

 

「たこ焼き屋だね」

 

「あれがタコヤキ……」

 

 

 興味津々にたこ焼き屋を見つめるパリィ。海外の人はタコが苦手な人もいるって聞くけど、どうやらパリィはタコに抵抗はないようだ。

 

「パリィは食べたことなかったっけ。買う?」

 

 

 たこ焼きくらいなら私のお小遣いでも十分買うことができる。だからそう提案したのだが――

 

「タコパしたーい!」

 

「作るところから!?」

 

 

――パリィの好奇心を甘く見ていた私は、思わず大声で聞き返してしまった。そのせいで周りからじろじろと見られてしまったが。

 

「と、とりあえずみんなに声をかけてみるわね」

 

 

 機材とか揃わなかったらさすがに諦めると思っていたのだが、会長の家にたこ焼きプレートが、そして七条家にタコがあるということで、明日津田家でたこ焼きパーティーが開催されることになった。

 

「毎回毎回、どうしてウチなんだ?」

 

 

 タコパ当日。タカトシが若干不満そうな顔をしながら私たちを出迎えてくれる。確かに何かあるときは大抵津田家を借りている気が……

 

「ここが一番落ち着いて調理とかできるからかな」

 

「ウチでやると出島さんが全部やっちゃう可能性があるからね~」

 

「ウチも、母が乱入してくる可能性が高いし」

 

 

 現在津田家は両親不在。普通に考えたら両親不在の男子の家なんて危険なのかもしれないが、タカトシだから安心して訪問できると私たちは思っている。

 

「まぁ、何でもいいですけど……くれぐれもふざけないようにしてくださいね」

 

「心得ているさ」

 

 

 どうやらタカトシはあまりタコパに興味がないようで、残っている家事を片付けるために部屋から出て行ってしまう。

 

「それにしても七条先輩、都合よくタコを持っているなんて、何かあったんですか?」

 

「吸盤プレイに使ったんだ~。気持ちよかったよ」

 

「あんた家では相変わらずだな!?」

 

 

 今気づいたけど、タカトシがこの場からいなくなってしまったら、ツッコミは私だけになってしまうじゃないか。そしてタカトシがいないから、この人たちの箍が外れてしまう可能性も……

 

「スズ、これどうやるの?」

 

「えっ? あぁそれはね――」

 

 

 すでにたこ焼きを作ることに意識を傾けすぎているパリィは、私たちのことなどお構いなしに生地を作り始めていた。

 

「早速焼いてみよう!」

 

「だが初心者でもうまく焼けるのか? 私は経験者だから大丈夫だとは思うが」

 

「シノちゃん、経験済みだったんだね」

 

「そういう意味じゃないからな!?」

 

 

 とりあえずパリィが挑戦したのだが、やはりうまく形を作ることができなかった。

 

「難しい……」

 

「まぁ、初めてならこんなものだろ」

 

「次はできるよ~」

 

 

 会長と七条先輩に慰められているパリィを横目に、私もたこ焼き作りに挑戦する。

 

「萩村のは綺麗に丸まっているな。経験者か?」

 

「あっ、はい」

 

 

 私も初心者なのだが、ここは空気を読んでおこう。タカトシがいたら嘘だってバレただろうけども、このメンツなら私が嘘を吐いているってバレることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 徐々にみんな上達したおかげで、そこまでひどい形のたこ焼きは食卓に並ぶことはなかった。

 

「いただきまーす!」

 

 

 タコパの提案者であるパリィが早速たこ焼きを頬張る。

 

「~~~」

 

「ふっ、美味しくて言葉も出ないか」

 

「熱いのでは?」

 

 

 萩村が冷静にツッコミを入れてきたが、とりあえずスルー。私たちもたこ焼きを食べることにしよう。

 

「シノちゃんが作ってくれたたこ焼きだけど、これなんだか触感が違う?」

 

「普通のたこ焼きじゃないですよね?」

 

「ヒントはこれだ!」

 

 

 私はたこ焼きを三つお皿にとり、串を刺して見せる。

 

「それってお尻に刺さってるもの? ア〇ルビーズ?」

 

「お餅だぞ!? モチモチだぞ!?」

 

「タカトシがいないから絶好調だなっ!?」

 

 

 とりあえず私が後ろを開発している疑惑は解消されたようだが、パリィが何か言いたそうな顔をしている。

 

「どうした?」

 

「タコパといえば、ロシアンルーレットだよね。チーズにチョコ、ウインナーにからし」

 

「やるつもりなのか? だがタカトシに知られたら怒られるぞ?」

 

 

 あいつは食材を無駄にしてしまう可能性がある食べ方を許さない。私が提案した闇鍋にだってあれだけ反感を抱くんだ。ロシアンルーレットたこ焼きなんて作ったと知られたら――

 

「なんだろう、急に寒気が……」

 

「シノちゃんも? 実は私も」

 

「ま、まぁ……美味しく食べられる範疇ならタカトシも許してくれるでしょうから、ハズレを作るときは食材を入れすぎないようにしましょう」

 

 

 どうやら萩村もロシアンルーレットたこ焼きを止めたいようだが、パリィの好奇心を止めるのも難しいと判断して、最低限のルールを設けることを提案。私たちもそれに同意してロシアンルーレットたこ焼きを作ることに。

 

「それじゃあ、いただきまーす!」

 

 

 出来上がったたこ焼きを一個づつお皿にとり、一斉に口に入れる。私が当たったのはチョコ入りたこ焼きだったようで、少し甘ったるい。

 

「………」

 

「パリィ?」

 

「口の中が辛い……」

 

「パリィはからし入りだったのか」

 

「無理せず吐き出せば?」

 

「スズちゃん、それはマニアックすぎるよ」

 

「純粋なる善意だよ!?」

 

 

 結局言い出しっぺが一番痛い目に遭ったようだ……だからロシアンルーレットたこ焼きはやりたくなかったんだよ……




悪戯はほどほどに

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