今日はトッキーと二人でお出かけ。タカ兄のお陰で小テストで良い点数が採れたので、今日の勉強時間は夜だけで勘弁してくれることになった。もちろん、今後この点数を続けて採れるのなら、ゲーム時間も増やしてくれるらしい。
「トッキーに勝てないのが悔しい」
「私だって頑張ってるんだから当然だろ」
「私だって頑張ってるんだけどなー」
元々の点数がトッキーの方が高かったから、成長率としては私の方が上なのかもしれないけど、その点数分私が上乗せできていないから勝てないのだろう。
「これだけ頑張ってもマキに勝てないのはなんでなんだろう」
「そりゃマキも頑張ってるからだろ。地頭があってそこに努力が上乗せされてるんだ。兄貴に散々尻叩かれて漸く勉強してる私たちじゃ勝てるわけないだろ」
「タカ兄に尻を叩かれるって、なんだか興奮してくるね」
「そんなこと言ってると兄貴に報告するぞ」
「それだけは勘弁して!」
タカ兄がいないから言える冗談だったのに、まさかタカ兄に報告されるなんてことになったら――
「なんだか寒気が……」
――タカ兄に知られたらと思ったら急に寒気が襲ってきた。
「お前、どんだけ兄貴が怖いんだよ……そこまで怖い人じゃないだろ」
「そりゃトッキーは怒られることがないからそうかもしれないけど、私やお義姉ちゃんのように怒られることに事欠かない人からしたら――」
「怒られるようなことしてるお前らが悪いんだろ」
「御尤も……」
トッキーに完膚なきまでに論破されてしまい、私はがっくりと肩を落とす。
「てか、とっとと行こうぜ」
「そうだね」
トッキーが先を歩き始めたので、私もその後に続こうとして――
「あれ?」
――トッキーの服に値札が付いていることに気づいた。
「(これってもしかして、トッキーはおニューの服を着ているって気づいてほしいってこと? でも性格上自分から言えないからこうやってアピールしているってこと?)」
トッキーならそんなアピールできないだろうから、私はそう考えを巡らせた。
「トッキー、その新しい服、似合ってるね」
トッキーの遠回しの催促を汲み取り、私はおニューの服を褒める。
「えっ? これ着るの三回目だけど」
「え……」
どうやらいつものドジっ子だったようで、私はトッキーの告白を聞いて開いた口が塞がらない。
「てか、どうして新しい服だって思ったんだ?」
「だって値札が」
「値札?」
私が指摘すると、トッキーは慌てて値札を確認するために動く。
「うわ、マジだ……てか、気づいてたなら教えろよ」
「今さっき気づいたんだよ……てかトッキー。三回も着てたなら自分で気づいてよ」
「御尤も……」
今度は私が完膚なきまでに論破すると、トッキーが肩を落とした。
「とりあえず何か切るもの持ってないか?」
「OK私の手刀で――」
「結果が見えてるからそれはいい。というか、本当に何かない?」
「そんなこと言っても、タカ兄のようにソーイングセットを持ち歩いてないし」
「えっ、兄貴ってそんなものまで持ってるの?」
「前主将の胴着が解れた時、自分のソーイングセットで直してたし」
糸は私が持ってたけど、針はなかった。その時タカ兄がどこからか取り出した針を使って繕ってくれたのだ。本当に、我が兄ながら女子力が高いことで……
「まぁいいや。家の鍵でタグを切るか」
「それが一番だね。私が切ってあげるよ」
トッキーから鍵を受け取り、私はタグを切る。ゴミはトッキーがポケットにしまったので問題ない。
「これでゆっくり遊べるね」
「てか、時間大丈夫なのか?」
「えっ……」
トッキーに指摘され私は時計を見る。今のやり取りで結構な時間を使ってたようで、遊ぶ時間はそれほどなかった。
生徒会室で萩村が頬を摘まんでいる。なんでそんなことをしていたのか分からなかったので本人に聞いたら――
「リンパマッサージです。身体を摘まむだけでダイエット効果があるようですよ」
――とのこと。
「そうだったんだー。そういえば私も最近痩せたんだけど、摘まんでた結果なのかな~」
「その摘まむは違うんじゃないですかね……」
萩村の話を聞いてアリアが自分の乳首を摘まんで痩せたことをアピール。私も毎日――ではないが弄っているのだが痩せないんだが……
「てか、スズちゃんは痩せる必要ないんじゃない?」
「そうでしょうか? 最近美味しいものが多すぎていっぱい食べてる気がするので」
「だが必要成長分までダイエットで消費してしまったら背が伸びないのでは?」
「………はっ!?」
自分の背が伸びない原因がそこにあったのかと気づいたようで、萩村は慌ててリンパマッサージを止める。私同様自分の身体が成長しないのを気にしてるようだな。
「というか、アリアはまた痩せたのか……」
「七条先輩はいろいろな活動してますからね」
「シノちゃんもスズちゃんも十分痩せてると思うんだけどな~」
「嫌味か! 嫌味なんだな!!」
確かに私や萩村もスレンダーな体型をしているが、アリアのようなスタイル抜群ではない。そこを羨むのは当然だろう。
「あの、生徒会室で何の話をしてるんですか?」
「た、タカトシ!? な、何でもないからな」
生徒会室に入ってきたタカトシに冷めた目で見られて慌てて否定する。別に疚しいことを話してたわけではないのだが、そうしておかないと駄目な気がしたのだ。
痩せすぎは心配になりますし