今日はネネと一緒に移動する機会が多そうな日だ。
「ムツミちゃんが津田君にくっついてるから、今日は私とスズちゃんの二人だね」
「テスト前はしょうがないわよね」
普段なら嫉妬するシチュエーションだけども、ムツミにそんな思惑はない。むしろ焦らないネネの方が問題だと思う。
「スズちゃん、ちょっと飲み物買いに行かない?」
「良いわよ」
まぁネネもなんだかんだ補習にはならない程度には点数を採ってるからいいのかもしれないけど、一年の時はもう少し点数採れてたと思うんだけどな……
「あっ……」
「大丈夫?」
ネネが落とした小銭を拾い渡す。決して私の方が地面に近いから拾ったのではなく、単純に私の方に転がってきたから拾ったのだ。
「ごめんね、ありがと」
「別にいいわよ、これくらい」
ネネと二人で飲み物を買い、飲み終えて移動する。この次は図書室で授業なので一旦教室に戻らなければ。
「必要な物持ってってから買いに行けば良かったね」
「まぁ、逆方向だから良いんじゃない?」
教室にはまだ数人残っていたのでそこまで慌てなくてもいい。私とネネは必要な物を持ち図書室へ向かう。
「それにしても、赤点必至の柳本君が寝てたけど大丈夫なのかな?」
「ダメなんでしょうけども、自分で変わろうとしなきゃ意味ないだろうから、放っておいていいんじゃない?」
散々タカトシに尻を叩かれても変わらないんだから、私が言っても意味はないだろう。だから私は柳本を起こすことなく図書室に向かう。
「必要な資料を探すのって大変だよね」
「ネネは図書委員でしょ? どの棚にどの本があるかわかるんじゃないの?」
「そんな完璧に覚えてないって」
そういいながらネネは本を抜き取りページを捲る。
「あぁ」
「また? ネネ、今日はやたら物を落とすね」
「今快楽に堕ちてるから、体に力が入らなくて……」
「気にしないようにしてたけど、やっぱりその音か!」
どこからか振動音が聞こえていたのでもしかしてとは思っていたが、やっぱりネネだったのか……ほんと、なんでこんな子と友達やってるのか、時々疑問になるのよね……
とりあえず放課後になり、私は七条先輩と二人で見回りに出る。今日は会長がじゃんけんに勝ったので、タカトシとのペアは会長だ。
「ふぁ~、眠い……」
「同じく……」
放課後はどうしても眠くなってしまう。見回りが終われば昼寝できるのだが、この時間が一番きつい。
「ガム噛んでごまかそう」
私はスカートのポッケからガムを取り出して口に放り込む。
「ん~、スースーする」
「私も、スースーする」
七条先輩にもガムをあげたのでそっちだと思ったのだけど――
「なぜスカートを抑えてるんですか! まさか……」
「穿いてくるの忘れちゃって」
この人は昔、パンツを穿かずに登校してたからな……それにしても、どうして今日はこういう人とばっか行動しなきゃいけないんだろう……
生徒会の顧問に音羽先生がなってくれたおかげで、私の負担は少し軽減された。今までは私が支えなければいけないと思っていたのだけど、やっぱり教師である音羽先生が支えとなってくれた方が安心感がある。
「こんにちは」
「あっ先生。丁度いいところに」
「どうかしましたか?」
生徒会室でトオりんと二人で話していたところに、音羽先生とサクラっちがやってきた。
「今体位の勉強中でして、支える役になってもらえます?」
「音羽先生、しっかりしてください」
私が話題を振ったせいで絶句し固まってしまった音羽先生を、サクラっちが再起動させる。
「そんなに驚くことかなぁ?」
「当たり前です! てか、それが普通だと思ってる会長の方がおかしいんですからね?」
「でもシノっちに聞いたら、それくらい普通だろって言ってたよ? むしろ横島先生も喜んで混ざってくれたって」
「てか、桜才の生徒会室でもそんな話題が……」
「でも、その後タカ君にこっ酷く怒られたって」
「でしょうね」
英稜でもそうだが、桜才学園の生徒会も副会長がしっかりしているから機能しているといわれているくらいだ。
「そういえばまだ、桜才学園の皆さんに音羽先生を紹介してなかったですね」
「最近忙しくて交流会も開いてなかったしね」
私は頻繁にタカ君に会ってるからそんなこと思わないけど、サクラっちは最近会えてないから寂しいのかな。
「それじゃあサクラっち、桜才の人にアポを取って日程調整よろしく」
「わかりました」
とりあえずサクラっちに任せておけば大丈夫だろう。そう思って任せたのだが――
『紹介したい人がいるので予定を教えて』
――とタカ君にメッセージを送っている。
「なんだか、彼氏を見せつけたいように見える文面だね」
「そんな意図は一ミリも存在しない」
私が深読みしすぎなのだろうか? 普通に見れば私の感覚の方が正しいと思うんだけどな……
「あっ、返信きた」
「どれどれ?」
タカ君からの返信には――
『義姉さんが言ってた新しい生徒会顧問の先生か?』
――と書かれている。
「うーん、私がおかしいのかな?」
「森先輩と津田先輩が同じ感覚なら、会長がおかしいんじゃないっすか?」
「てか広瀬さん、シャツが出てますよ!」
「すんませーん!」
ユウちゃんに言われてしまったが、サクラっちとタカ君がおかしいわけないし、やっぱり私の方がズレてるんだろうな……
「トオりんはどう思った?」
「私も会長と同じように思いました」
「だよね」
やっぱりそういった感じに見えちゃうよね。これはつまり、サクラっちとタカ君が鋭すぎるだけで、私はおかしくないってことだよね。
英稜もなかなか変人度が高い