桜才学園での生活   作:猫林13世

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強化しても追い付かないからな……


見回り強化

 ここ最近学園内の風紀が乱れている気がする。毎日見回りとかしているのだが、どうしても気が緩んでしまう生徒が出てきているのだろう。

 

「――というわけで、風紀委員の見回りを強化します。皆さん、協力お願いします」

 

 

 風紀委員会本部でそう宣言し、委員の子たちも協力してくれることに。

 

「(私自身、タカトシ君に頼り切って見回りが疎かになってたかもしれないから、気合を入れ直すいいタイミングだったかも)」

 

 

 この学園内において、タカトシ君に任せておけば最終的になんとかなるという空気が充満している。私もそこまでではないが、タカトシ君に甘えていた部分があることは確か。風紀委員長として、学園の風紀を守らなければ。

 

「コトミさん、短いですよ!」

 

 

 見回りを初めてすぐ、タカトシ君の妹であるコトミさんに遭遇。問題ある恰好を指導したのだが――

 

「まぁ、確かに女の子の尿道は短いですけど」

 

「スカートが! 主語つけなくてごめんね!」

 

 

――盛大に勘違いされてしまい、慌てて注意し直す。だってこのままにしておいたら、私までコトミさんと同類だと思われそうだったから。

 

「と、兎に角! スカートを既定の長さに直してください。このままだとまた先生たちに目を付けられちゃいますよ」

 

「そ、そんなことになったら……タカ兄に見捨てられ、家を追い出され、知らないおじさまのペットとして生きていくしか――」

 

「そういう発言も問題です! 本当にタカトシ君に報告してもいいんですからね!」

 

「それだけは勘弁してください! ちょっとした冗談ですから!」

 

 

 結局タカトシ君の名前に助けられた形になってしまったが、とりあえずコトミさんの服装を正すことに成功した。

 

「昔は私一人で学園の風紀を守るって意気込んでたんだけどな……」

 

 

 共学化したばかりの時は、男子生徒がよからぬことをしないよう注意しなければと思っていたのだけど、今ではその抑止力は私ではなくタカトシ君。そもそも男性恐怖症である私が、男子生徒に何かできるはずなかったのだと思い知らされた。

 

「あれは」

 

 

 見回りをしていると、今度は時さんがだらしなく座っているのが目に入ってきた。

 

「時さん、足開いて行儀悪いですよ」

 

 

 この子はコトミさんと違って注意すれば直そうとしてくれるので、そこまで力強く注意しなくてもいい。だが今日はそれでは終わらなかった。

 

「確かに、時と場所は選ばないとな」

 

「へ?」

 

 

 たまたまあちらも見回りで通りかかったのだろう。天草さんが私の注意に補足してきた。

 

「だって、お小水の時は足を開かないと綺麗に飛ばないだろ?」

 

「言及しにくい!」

 

 

 同意するにできない話題にどうしようか悩んでいると、時さんが頭を下げて座り方を改めてくれた。そのおかげでこの話題はここで終了し、天草さんも見回りを再開していく。

 

「はぁ……風紀を正すのも簡単じゃないわね」

 

 

 とりあえず見回りは強化して、問題ある生徒にはしっかりと注意、指導していこうと心に決め、私も見回りを再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カエデ先輩に注意されたことは、どうやらタカ兄には報告が行っていないようで、私はホッとしながらムラサメと遊ぶ。

 

「冬毛ってもこもこしててかわいいよねー」

 

「動物の寒さ対策は合理的だからな」

 

 

 怒られないよう宿題も自発的に終わらせ――合っているかはさておき――小テストでもしっかりと結果を残したので、タカ兄も家で穏やかな時間を過ごしている。

 

「そうか!」

 

「ん?」

 

 

 私がひらめいた感を出して声を上げると、タカ兄が視線だけで先を促している。

 

「私の下半身が冷えるのは、毛が無いからかー」

 

「お前がないのはデリカシーだろ。てか、今日も服装でカエデさんに怒られたんだろ」

 

「ほ、報告行ってたの!?」

 

「今後同じようなことをするなら、こちらでも考えなきゃいけないからな」

 

「ちゃんとするから! だから家を追い出すのだけは……」

 

 

 誠心誠意謝罪して、なんとかこの問題は不問となった。両親がいないから仕方ないのかもしれないが、今家の中での決定権はタカ兄が握っている。タカ兄が私をこの家から追い出す権利を持っているのだ。怒らせないよう気を付けなければ……

 そう決心した翌日、私は下半身が冷えるからスカートの下に短パンを穿いて登校した。

 

「会長、ちょっとご相談したいことが――」

 

 

 会長に相談しに生徒会室を訪れると、ちょうど会長も短パンを穿こうとしていた。

 

「会長も寒いから短パンですか?」

 

「コトミか……一応ノックしたのは認めるが、返事してから部屋に入ってこい」

 

「はーい」

 

 

 とりあえずの注意を受けていると、アリア先輩もこちらにやってきた。

 

「シノちゃんもコトミちゃんもスカートの下に短パン穿いたんだー」

 

「あぁ」

 

「アリア先輩もですか?」

 

 

 お嬢様であるアリア先輩なら、寒さ対策なんていくらでもできそうなものなのに。だが短パンが一番簡単な解決策だもんね。

 

「スカートが捲れても『実は穿いてましたー』ってできるしね」

 

「そんな考えは微塵もなかったが」

 

「てか、そんなこと気にしなくても、タカ兄が目を光らせていればスカートの中を覗かれる心配はないのでは?」

 

「それもそうだな。それで、コトミの相談とは?」

 

「実はですね――」

 

 

 私は持ってきた相談事を会長に話し、具体的な解決策を授けてもらった。

 

「ありがとうございました。とりあえずはそれで凌げそうです」

 

「まぁ、コトミも頑張ってるんだろうがな」

 

「タカ兄と比べられたら、誰だって何もできないですよ……」

 

 

 相談事とは、マネージャー業をさぼってる疑惑をどうにかする方法を知りたかったということなのだが、比較対象がタカ兄という時点で、シノ会長も顔をしかめていたのだった。




サボってなくてもサボってるように見える不思議……

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