桜才学園での生活   作:猫林13世

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駄目じゃない方の顧問です


生徒会の顧問

 私、サクラっち、トオりん、ユウちゃんの四人で見回りをしていたのだが、何かが足りない気がしてならない。だが英稜の生徒会メンバーはこの四人で全員のはずなのに……

 

「会長、どうかしましたか?」

 

「ふと思ったんだけど、何かが足りない」

 

「足りない? 何か忘れたんですか?」

 

 

 サクラっちに問われて、私は忘れ物ではないと断言する。だって、家を出る前にタカ君に確認してもらったから。

 

「何が足りないんだろう……」

 

 

 私が考え込むと、ユウちゃんがなんともない感じでトオりんと話していた内容が聞こえてきた。

 

「そういえば英稜の生徒会には顧問いないんすよねー。この間桜才の手伝いに行ったとき改めて思ったんすけど」

 

「横島先生、優しかったもんねー」

 

「それだ!」

 

「っ!? か、会長、なんすか……」

 

 

 私が大声を出したから、ユウちゃんとトオりんの二人が驚いた顔でこちらを見てくる。

 

「ごめんごめん。でも何が足りないのかやっとわかってすっきりしたから」

 

「それで会長は、英稜生徒会にも顧問が必要だというんですね?」

 

「うん。桜才学園に対抗するわけじゃないけど、英稜にも必要なんじゃないかって思って」

 

 

 桜才学園生徒会顧問である横島先生。生徒会メンバーだけで出かけるときの運転手兼引率役というポジションらしいけども、運転手は出島さんで代行できるし、引率役という面でいえばタカ君の方がふさわしい。だがタカ君は未成年ということで、しばしば横島先生を引率として参加させているとシノっちから聞いたことがある。

 

「別に私たちはしょっちゅう課外活動してるわけではないですし、ましてや夜間外出もしませんから顧問は必要ないのでは?」

 

「むしろ桜才生徒会の顧問は津田先輩っぽい雰囲気がありますけどね」

 

「それはわかる。でもタカ君はあくまでも副会長だからね?」

 

 

 畑さん曰く、生徒会長兼副会長兼書記兼会計兼顧問とかなんとか……タカ君は幾つ役職を兼務すればいいのでしょうか。

 

「別に引率役が必要って思ったわけじゃなくて、相談できる相手がいると安心かなって」

 

「それは確かに……会長が暴走した場合の対処とかお願いしたいですし」

 

「最近は大人しくしてるでしょ?」

 

 

 以前は酷かったと自覚しているので、最近は結構大人しいと自信を持って言える。だがサクラっちからしてみればまだまだなようだ。

 

「相談役がいればいいってのは納得っすけど、誰にやってもらうんすか?」

 

「そうだね……それじゃあ、そこの角を最初に曲がってきた人にやってもらおう」

 

「え?」

 

 

 なんともギャンブラー的決め方に、サクラっちが文句を言いたそうにこちらを見ている。だがサクラっちが何か言葉を発する前に、一人の教師が曲がり角から現れた。

 

「生徒指導の音羽先生!」

 

「めっちゃ厳しい先生っすね」

 

 

 サクラっちとユウちゃんが驚いているのをしり目に、私は音羽先生に話しかける。

 

「生徒会の顧問になってくれませんか?」

 

「え?」

 

「全く臆さない」

 

 

 私が音羽先生に打診する後ろで、サクラっちが私の行動力に呆れている様子。

 

「良いですよ」

 

「本当ですか?」

 

 

 あっさり快諾されたので、サクラっちが思わず聞き返してしまう。実は私も快諾されるとは思っていなかったので、ちょっとビックリ。

 

「生徒を助けるのが教師の務め。私の力が必要な時はいつでも言ってください」

 

「「よろしくお願いしまーす」」

 

 

 音羽先生の返事を聞き、後輩コンビが先生に挨拶をする。

 

「広瀬さん」

 

「なんすか?」

 

「ネクタイはちゃんと締めなさい。シャツを入れなさい。スカート短すぎます」

 

「おー。さっそく力を発揮された」

 

「なんだかタカ君とコトちゃんの関係みたいだね」

 

 

 あっちは兄妹だけど、そんな感じに見える。まぁ、教師と生徒のこっちの方が自然なんだけども。

 

「タカ君とコトちゃんとは?」

 

「桜才学園生徒会副会長の津田タカトシ君と、その妹のコトミさんのことです」

 

「あの二人も今の先生とユウちゃんのような会話をしてるので」

 

 

 どうやら音羽先生もタカ君のことは知っていたようで、サクラっちの説明で納得してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音羽先生を生徒会室に招き、せっかくだからと記念撮影をすることに。

 

「会長ってホント写真好きっすよね」

 

「だって、思い出になるでしょ?」

 

「それじゃあ撮りますよ」

 

 

 私がカメラのタイマーをセットして合図を出すと、みんながピースサインをする。音羽先生も意外とノリがいいらしい。

 

「あっ」

 

 

 撮った写真を確認していた会長が、問題があった時に発するようなトーンで声を漏らした。

 

「どうかしたんですか?」

 

「私のピースが音羽先生の顔に被って――」

 

「ありゃ」

 

 

 ちょっとしたハプニングがあったようだが、記念としては問題ないだろう。

 

「――先生に鼻フ〇ックしてるみたいになってる」

 

「撮り直しましょう」

 

 

 さすがにそんなハプニングはいらない。私はもう一度タイマーをセットして、今度はしっかりと会長と音羽先生の距離を確認する。

 

「今度は大丈夫っすね」

 

「写真も結構たまりましたね」

 

 

 広瀬さんと青葉さんがコルクボードの写真を見てしみじみと呟く。それにつられるように音羽先生もボードの写真を確認して――

 

「随分と密着していますね」

 

「健全な関係です」

 

「というか、タカ君はいくら誘っても靡かないですから」

 

「てか、誘わないでくださいよ……」

 

 

 タカトシ君だから問題になっていないけど、他の男子だったらどうなっていることか……生徒指導の立場として音羽先生は疑わしい目を向けてきましたが、本当に何にもないことは私たちの雰囲気から察してくれたようだ。




他校でも絶大な信頼を誇るタカトシ

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