桜才学園での生活   作:猫林13世

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バチバチするんですよね……


静電気防止策

 今日の見回りは私一人の担当だったのだが、特に問題なく見回りを終えることができそう。タカトシと一緒だと周りから嫉妬の視線を向けられたり、タカトシが問題を見つけるのが上手すぎるので大変なこともあるけど、私一人だとこうして平穏な見回りになるみたいね。

 

「あれ、スズ先輩一人ですか?」

 

「コトミ、何かやらかしたの?」

 

「なんで私が何かやらかした前提で話すんですか? 私だって毎日問題を起こしてるわけじゃないんですけど」

 

 

 コトミの言葉に、私は思わず首をかしげてしまう。この子が問題を起こさずに過ごせるって、全然想像できないのよね。

 

「まぁ、それは置いておいて。何か用があるから話しかけてきたんじゃないの?」

 

「いえ、見かけたので声をかけただけです。普段はタカ兄と一緒にいるから見つけやすいんですけど、スズ先輩一人だと気づかないこともありそうなので」

 

「どういう意味だ!」

 

 

 どうせ私が小さいから視界に入らないとか、そんなことなんだろうけども。

 

「タカ兄が一緒だと変に緊張して、逆に周りが気になるのでよく気付けるんですけど、タカ兄がいないときは集中力が全くありませんので」

 

「自覚してるなら、集中できるように努力しなさい」

 

 

 タカトシがいくら注意しても成長しないのだから、私が言ったところで意味はないだろう。だが言っておかないといけない気になったので言っておくことに。

 

「ところで話は変わりますけど」

 

「何よ?」

 

「頭脳明晰なスズ先輩なら解決策を授けてくれるんじゃないかって思いまして」

 

「タカトシに怒られない方法ならわからないわよ」

 

「だから、私がタカ兄に怒られるのを前提にしないでくださいよ」

 

「はいはい。それで?」

 

 

 いつまでも先に進めなくなりそうだったので、私はコトミからの抗議をサラッと流す。

 

「静電気をどうにかする方法ってありませんかね? ドアノブ触るのが怖くて」

 

「それだったら、地面に手を当てて静電気を防ぐ方法があるわよ」

 

「マジですか」

 

 

 私のアドバイスを聞いて早速、コトミが地面に手を当てる。

 

「大地の声が聞こえる……」

 

「セリフはつけなくていいよ」

 

「こっちの方がふいんきあっていいじゃないですか」

 

「雰囲気ね」

 

 

 とりあえず問題が解決したのか、コトミは去っていった。

 

「――ということがあったんですよね」

 

 

 生徒会室に戻って報告をする際に、会長と七条先輩にコトミとのやり取りを話した。

 

「静電気といえば」

 

 

 そこで七條先輩も何かあったようで、私と会長は七条先輩の話を聞く体制になる。

 

「家でセーターを脱ごうとしてバチバチって来てね」

 

「あぁ、よくあるな」

 

「それで出島さんに相談したんだけど」

 

 

 そこまで聞いて、私は嫌な予感がしてきた。だって、七条先輩絡みであの人が出てくるってことは、ろくでもない話にしかならないから。

 

「そしたら『それを活かしたエキセントリックキスが楽しめますよ』って言われて」

 

「あの人は思考がエキセントリックだな」

 

「実践しようとしたところに橋高さんが静電気を逃がすグッズを持ってきてくれたんだー」

 

「確かに、そういうグッズが売ってるのを見たことあるな」

 

「最初から橋高さんに相談すればよかったのでは?」

 

 

 七条家の良心とさえ思える人だし、最初から安全な解決策を持ってきてくれると思うんだけどな……

 

「さすがに着替えの場に橋高さんは入れられないよ~」

 

「あっ、そうですね」

 

 

 男性である橋高さんが七条先輩が着替えてる場にいたらどうなるかを考えて、私は自分のうっかりを反省するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝からしゃっくりが止まらなくてどうにかしたい。というわけで私は相談するために生徒会室を訪れた。

 

「私のしゃっくりと止めてください」

 

「コトミよ……ここは一応関係者以外立ち入り禁止なんだ。気軽に来られても困るんだがな」

 

「ここの実質的な主であるタカ兄の妹である私は、ある意味関係者です」

 

「主は私だぞ!?」

 

 

 生徒会長であるシノ会長が主って言われてもあまりピンとこない。むしろ副会長で実質的生徒会を運営しているタカ兄の方が主としてしっくりくるんだけどな。

 

「まぁ、細かいことはさておいて」

 

「全然細かくない」

 

「そういえば、タカ兄はどこに?」

 

「タカトシなら職員室に行ってるぞ。なんでも横島先生がまたやらかしたとかで」

 

「大変ですねー」

 

 

 とりあえずタカ兄がいないので、残りの三人にしゃっくりを止めてもらうことに。

 

「以前もした記憶があるんだが、しゃっくりぐらい自分でどうにかしろ」

 

「そういわずに」

 

 

 シノ会長、アリア先輩、スズ先輩に驚かせてもらったが、残念なことにしゃっくりは止まらない。

 

「皆さん程度では私を驚かすことはできないようですね」

 

「それが人にものを頼んでいたお前がいうことか?」

 

「せっかくだから、抜き打ちでテストをしてあげるわよ。さっさと準備しなさい」

 

「なんでそんな流れになるんですかっ!? って、しゃっくり止まった」

 

 

 スズ先輩の脅しのおかげかはわからないが、私はしゃっくりから解放された。

 

「あー、ようやく止まりました。それじゃあ私はこれで――」

 

「待ちなさい。小テストは本気よ」

 

「勘弁してくださいよー!」

 

 

 結局逃げ切ることができずに小テストを受け、散々な結果だったせいでみっちり勉強をさせられることに……

 

「こんなんだったらマキやトッキーに相談すればよかった」

 

「この勉強はお前のためなんだから、文句言わずに頑張れ」

 

「誰か助けてー!」

 

 

 しゃっくりから解放されたけど、勉強から解放されることはなく、タカ兄が戻ってくるまで私はみっちりとスズ先輩に英語、シノ会長に数学、アリア先輩に国語を教え込まれたのだった。




誰も助けてはくれない

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