桜才学園での生活   作:猫林13世

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買ったことないな……


戦利品の交換

 最近では福袋を買った直後からその場で交換を申し込むこともあるらしい。実際店の外で戦利品の交換をしている人もちらほらと見受けられたし。

 

「――というわけで、我々も戦果の確認と戦利品の交換を行うぞ!」

 

「シノっちたちは元気ですね」

 

「義姉さんはいかなかったんですね」

 

「タカ君だけにご飯の準備を任せるわけにはいかないからね」

 

 

 タカ兄とお義姉ちゃんの会話が私たちの親のように聞こえなくもないけど、シノ会長たちは気にした様子はない。普段大人っぽいけど、こういうところは年相応なんだろうな。

 

「この福袋は最後の一個だったからな。余り物には福があるというし、きっといいものが入っているに違いない」

 

「会長ってそういうことを信じてる節がありますよね」

 

 

 私からすれば、最後の一つというのはいい印象はない。だって、ガチャで底を引いたってことだし……

 

「てかシノちゃん。その福袋って下着メーカーのじゃない?」

 

「えっ?」

 

 

 アリア先輩の指摘で気づいたのか、会長が慌てて福袋の外のロゴを確認している。まさか、なんの福袋か確認しないで買ったのだろうか?

 

「服入ってなかった……」

 

「かなりセクシーですね」

 

 

 会長が取り出したのは紐パン。これを穿く勇気は私にはないな。

 

「ところでスズ先輩。スズ先輩が買った福袋、どうして透明なんですか?」

 

「これは中身が見える福袋よ。こうすれば欲しいものが入った袋を選べるでしょ?」

 

「でも福袋って、何が入ってないかわからないのが醍醐味じゃないんですか?」

 

「そうかもしれないけど、これはこれでいいと思うわよ」

 

「中身が見える話ー? 私も買ったよ~」

 

「そういうことじゃないです!?」

 

 

 会話の途中から加わってきたアリア先輩が持っているのはスケスケのネグリジェ。

 

「というか、どこで着るんですか?」

 

「タカトシ君と一緒に寝るときとか?」

 

「そんなこと私たちが認めん! ただでさえアリアの就寝時の恰好は色っぽいんだ。そこにそんなものを着たら私たちがショックを受けるだろうが」

 

「てか、タカ兄に着てるところ見せても怒られるだけだと思いますけどね」

 

 

 タカ兄は性欲より先に呆れや怒りが現れることが多い。というか、タカ兄に性欲があるのかが疑問だ。

 

「兎に角! 風呂上がりにそれを着ようとしていたら私たちが全力で止めるからな」

 

「ちょっと残念だけど、シノちゃんがそこまで言うならあきらめるよ。これは家で着ることにするよ」

 

「家だと出島さんが興奮しちゃうんじゃないですかね?」

 

「ありえそうだな」

 

 

 出島さんはアリア先輩大好きだから、スケスケのネグリジェなんて着てたら大変なことになりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度の確認も済んだので、これからは交換会だな。私としては別に不満があるわけではないので必要はないのだが、もしかしたら誰かがいらないもので私が欲しいものがあるかもしれないし。

 

「毛糸のマフラーか……チクチクして苦手なんだよね」

 

「だったらこっちのシルクのマフラーと交換するか?」

 

「良いの?」

 

 

 早速アリアと交換することができた。私としては毛糸でもシルクでも問題ないので、この交換はアリアのため。

 

「アリアは敏感肌なのか」

 

「うん。特に裸マフラーの時は」

 

「著しいな」

 

 

 さすがに最近ではしていないのだろうが、昔のアリアを知っている身からすればありえそうだと思える状況。しかしアリアが裸マフラーしている姿を想像しても絵になると思ってしまうのはなぜだろう……

 

「帽子か……最近新しいの買ったばかりなのよね……」

 

 

 どうやら萩村の方でも微妙なものがあるようだ。だが私は交換に出せそうなものがない。

 

「だったら私のレッグウォーマーと交換しませんか?」

 

「いいわよ」

 

 

 どうやらコトミの方で引き取れるようで、萩村はコトミからレッグウォーマーを受け取る。

 

「ふと思ったのだが、萩村のサイズとあってるのか、そのレッグウォーマー」

 

「………」

 

 

 普通なら気にしなくてもいいサイズなのだろうが、萩村の伸長を考えると少し危ない気がする。私の言葉で一瞬硬直した萩村だったが、いそいそとレッグウォーマーを装着し――

 

「ニーソックス?」

 

「コトミ、帽子だけあげるわ」

 

「なんだかすみませんでした……」

 

 

 萩村は交換で手に入れたレッグウォーマーをコトミに返す。コトミの方も悪いことをした気分になったようで、頭を下げながらそれを受け取っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず交換は済んだので、全員で手に入れたアイテムを使ってファッションショーをすることに。審査員というか、観客はタカトシ君とカナちゃんだ。

 

「待たせたな!」

 

 

 シノちゃんが勢いよくリビングの扉を開け、そのあとに私たちが続く形で登場する。

 

「皆さん似合ってますね」

 

「義姉さんも行けば良かったじゃないですか」

 

「そうかもね」

 

 

 私たちの恰好を見て少し羨ましそうにしているカナちゃんに、タカトシ君が呆れ気味に言う。なんだろう、この二人の関係は義姉弟なのにもやもやしてくるような……

 

「少しスースーするな」

 

「暖房の温度上げる?」

 

「いや、そのうち慣れるだろう」

 

 

 いったい何を指して慣れるといっているのか気になったが、スズちゃんがさっきの下着メーカーの福袋を見て固まっているのを見て納得がいった。

 

「(シノちゃん、紐パン穿いてるんだね)」

 

「(せ、せっかくだからな)」

 

「(私もインナーにスケスケのネグリジェを着てるよ~)」

 

「(間違ってもアウターを脱ぐなよ?)」

 

 

 一瞬フリかとも思ったけど、シノちゃんの目が本気だったので勘違いせずに済んだ。もし気づけなかったら、私は脱いでただろうしね。




買ったものを無駄にしないのは偉いけど……

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