桜才学園での生活   作:猫林13世

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美味しければOK


意外な組み合わせ

 コトちゃんに勉強を教えていたのだが、どうやら桜才学園の生徒会役員が遊びに来たようです。タカ君からは何も聞いていなかったのを考えると、おそらくはアポなしで遊びに来たのでしょう。

 

「ほらコトちゃん、あと少しなんだから頑張って」

 

「でもお義姉ちゃん……この問題がよく解らなくて」

 

「どれ?」

 

 

 コトちゃんも成長しているので、全く解らないということはなくなってきていますが、ところどころ理解が追い付いていない部分はあるのです。そういうところを私とタカ君が補っているのですが、どういうわけか突発的な小テストでは散々な結果しか残せないんですよね。

 

「これで解るでしょ?」

 

「たぶん……」

 

 

 私が解説をしてコトちゃんに問題を解かせる。少し時間はかかりましたがしっかりとコトちゃん一人で問題を解くことができたので、今日のところはここまでです。

 

「シノっちたちが遊びに来てるみたいだから、下に行きましょう」

 

「シノ会長たちが? お義姉ちゃん、いつの間に気づいたの?」

 

「普通に声がしたから。タカ君みたいに気配で分かるわけないよ」

 

 

 そんなことができる人間がそうそういるわけがない。私はコトちゃんと一緒にリビングに降りると、シノっちたちが炬燵でくつろいでいた。

 

「カナもいたのか」

 

「私はコトちゃんに勉強を教えていたんです。それで、シノっちたちはなぜ?」

 

「アリアの家においしい海鮮が届いたんで、みんなで鍋をしようって話になってな。料理関係ならタカトシに任せたほうがいいだろうってことで遊びに来たんだ」

 

「そうだったんですね。確かに今日は寒いから鍋がいいかもしれません」

 

 

 この後買い出しに行く予定だったのですが、アリアっちのおかげで夕飯の買い出しは最小限で済みそうです。

 

「ところで、そのタカ君とアリアっちは?」

 

「足りない具材を買いに出かけた。私と萩村は留守番を頼まれたんだ」

 

「会長が闇鍋とか言い出したから、私が監視を任されたんですよ」

 

「ちょっとした冗談だったんだがな……」

 

「料理関係でタカ君を刺激したら駄目ですよ」

 

 

 タカ君は真面目なので、食材に失礼になる可能性があることは見逃してくれません。コトちゃんのように料理ができない人に教えるときは申し訳ないと思いながらもの部分があるのでしょうが、シノっちのように料理がちゃんとできるのにふざけるのは許せないのでしょう。

 

「それじゃあ私は鍋の用意をしますので、シノっちとスズぽんはコトちゃんの相手をお願いします」

 

 

 相手といっても、単純に話し相手なのだが、コトちゃんを一人にしたら何をするかわからないのです。高校生にもなってこんなことを思われてしまうのもどうかと思いますが、コトちゃんだしね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄が仕切っているので、それほどひどいことにはならないということで、私は食べられる範囲で一つ、みんなに内緒で何か具材を入れないかと提案。タカ兄は渋ったがシノ会長とお義姉ちゃんが乗り気で、アリア先輩とスズ先輩も同調したのでタカ兄が折れた。

 

「間違ってもふざけたものを入れないように」

 

 

 そう釘を刺されているので、全員鍋としておいしく食べられるものを入れる。本当はハズレを入れたかったんだけどな……

 

「これってたこ焼き?」

 

「それ入れたの私だよ~」

 

「美味しいんですか?」

 

 

 アリア先輩が入れたたこ焼きを訝しげに眺めるスズ先輩。だがアリア先輩はお勧めだと言っている。

 

「……本当だ。美味しいですね」

 

「意外な組み合わせが美味しいんだよね」

 

「オークと姫騎士とかですね!」

 

「コトちゃん、それは別の食事になっちゃうよ」

 

 

 お義姉ちゃんにツッコまれ、私は笑い話で済ませようとしたのだけど――

 

「ふざけたことを言うなら、この間の赤点を理由に家を追い出すぞ」

 

「それだけは勘弁してください!!」

 

 

――小テストの赤点を持ち出されたら謝るしかできない。だって、家を追い出されたら生活できないし……

 

「それにしても、熱くなってきちゃった。上着を脱ごう」

 

「アリアっちも? 実は私も少しだけ」

 

 

 ここでアリア先輩とお義姉ちゃんが上着を脱ぐ。するとものすごいボディラインが目に飛び込んでくる。

 

「「………」」

 

「シノ会長とスズ先輩ではこうはいきませんね」

 

 

 言葉を失っている二人にそうやって声をかけたのだけど、反応がない。どうやら完全に意識を取られてしまっているようだ。

 

「タカ兄も眼福でしょ? だから冬の鍋は人気なんだね」

 

「お前は何を言ってるんだ?」

 

「ありゃ?」

 

 

 さすがのタカ兄でも興奮するかと思ってたのだけども、まったくの平常心。わが兄ながらこの鋼の精神力はどこから来ているのだろうか。

 

「とりあえず、〆にしますね」

 

 

 放心状態の二人をスルーして、タカ兄が鍋にうどんを投入。量を間違えることなく全員でちゃんと完食することができたのだった。

 

「今年ももう終わりだが、やり残したことはないか?」

 

「問題ないですね」

 

「コトミはもう少し成長してほしかったですけどね」

 

「これ以上は無理だって!?」

 

 

 緩やかな成長では満足してくれないようで、私はタカ兄から冷ややかな視線を向けられている。撞いて

 

「実は私、除夜の鐘を撞いてみたいんだ! 付き合ってくれないか?」

 

「それでしたら、私が整理券を人数分入手しておきました!」

 

 

 どこからか現れた出島さんに、タカ兄以外がびっくりしてしまった。この人、どこで会話を聞いていて、どこから現れたんだろう……




成長しているのかは微妙ですが……

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