桜才学園での生活   作:猫林13世

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自分は全く飲めません


飲み会

 最近は寒くて厚着する傾向が強い。だが何故か横島先生の格好はかなり薄着よりなコーデだ。

 

「先生、風邪をひいて休もうとでもしてるんですか?」

 

「そんなわけないだろ!」

 

「では何故そんな恰好をしてるんですか? もしかして寒さが分からないくらい頭が残念に――」

 

「えっ、私ってそんな風に思われてるの?」

 

 

 この人の頭はかなり残念だと思っている。あれだけタカトシに怒られても同じことを繰り返すのだから、それこそコトミと同レベルくらいには残念な頭の作りなのだろうと。

 だがこの人は教師になるだけの実力はあるのだから、コトミと比べればだいぶマシなのだろう。しかしこの格好をしている理由が他には思いつかなかったので、思わず声に出してしまったのだ。

 

「そう思われたくないのでしたら、もう少しまともな行動を心掛けてください。先生の所為でタカトシの機嫌が悪いこともしばしばあるんですから」

 

「それを言われると辛いな……だが、決して寒さが分からなくなったわけではないからな」

 

「何の話ですか~?」

 

 

 そこでアリアと萩村が見回りから戻ってきた。

 

「タカトシはどうした?」

 

「タカトシ君は、屋上でエロ本を読んでた男子生徒たちを纏めてお説教中だよ~」

 

「本当なら風紀委員に突き出せば終わりなんですけどね」

 

「まぁ、五十嵐じゃ無理だろうな」

 

 

 アイツは男性恐怖症だから、大勢の男子生徒相手に説教などできるはずが無い。

 

「そんなことをしようとしても、男子生徒に捕まって調教され、雌豚風紀委員長になるのがオチだろうな」

 

「シノちゃん、タカトシ君がいないからってその発想はないよ~。精々慰み者にされるくらい?」

 

「似たようなものだろ?」

 

「私の話は何処に行ったんだよ」

 

「あぁ、そうでしたね。なんで薄着なんですか?」

 

「この後教師陣の飲み会があってな」

 

「あぁ、お酒飲むと熱くなるとか言いますもんね」

 

 

 だが、何故今から薄着をしているのかの答えにはなっていない。

 

「いや、私飲むと脱ぎたくなるんだよ」

 

「脱ぎやすさより脱ぎにくさを重要視したコーデをするべきでは?」

 

「でもよ、脱ぎにくいと服が台無しになってしまう可能性があるし」

 

「脱ぐなと言っているんですよ」

 

「でも正常な思考が保てない状態だからな……脱がないようにしていても結局脱いだりしてるし」

 

「なら、小山先生に頼んでおきましょう。あの人なら泥酔するまで飲むこともないでしょうし」

 

「何だか私の介護担当になってる気がするな」

 

 

 どうやら自覚があるようだが、横島先生は結構な回数小山先生に助けられている。ほんと、小山先生が桜才に赴任してくれてよかったと、職員室で言われているくらいに。

 

「仕方ないな。小山先生には事情を話しておこう」

 

「そうしてください」

 

 

 私たちも箍が外れると人のことを言えないくらい酷いかもしれないが、それでも普段から外れっぱなしの横島先生よりはマシだろう。まぁ、タカトシに言わせればどっちもどっちなのかもしれないが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天草さんと横島先生の両方から、横島先生が酔っぱらって脱ぎ出さないように注意しておいてほしいと言われ、私は飲み会の間も横島先生に気を配っている。

 

「小山先生、飲んでますか?」

 

「あっはい、学園長も飲んでください」

 

 

 私も結構な量をいただいているのだが、それ程飲んでいないように思われている。別に酒豪というわけではないのだが、かなり強い方ではあるのだろう。

 

「それにしても、気付けばもうこんな時間ですか」

 

「えっ? 言われればそうですね」

 

 

 いろいろな人に話を合わせていたからそれ程時間が経った気はしなかったのだが、結構深い時間になっていた。これなら横島先生も脱ぎ出すこともなく終わるだろうな。

 

「「時間すぎるの早いですね」」

 

 

 学園長と横島先生が同じセリフを呟く。やっぱり皆さんもそれ程長い時間飲んだつもりがないのだろう。

 

「歳を取ると」

 

「楽しい時間は」

 

 

 しかし続いたセリフは二人で違う。学園長のセリフを聞いた横島先生がガックリしたように俯き、それを学園長が慰める。

 

「いや、横島先生の感性の方が正しいかと」

 

「そうですよ。私もこんなに経ったとは思ってませんでしたし」

 

 

 学園長と二人で横島先生を慰め、どうにか機嫌を直してくれたようだ。だがこれ以上楽しむ雰囲気ではないので、飲み会はお開きに。飲み足りない人たちで二次会を企画しているようだが、横島先生はこれ以上飲ませないほうが良いだろう。

 

「あたしゃまだ飲めるよ!」

 

「そう言うのは千鳥足で言っても説得力無いですよ」

 

 

 ふらふらと歩く横島先生にツッコミを入れたのだが、何故か先生は携帯を取り出して足を撮る。

 

「自撮り足じゃないです!」

 

「お疲れさまです」

 

「えっ? あっ、津田君」

 

 

 何故彼がこんな時間にこんな場所にいるのだろうか? 真面目な彼がこんな時間まで遊んでいたとは思えないし……

 

「バイト先の後輩がストーカーに悩まされているようでして、家まで送り届けてたんですよ。ついでにそのストーカー男を捕まえて警察に突き出したので」

 

「そうだったんだ……私、何も言ってないよね?」

 

「顔が雄弁に語ってましたから。ほら横島先生、水です」

 

「気持ち悪い……」

 

 

 限界が近かったのか、横島先生は津田君から受け取った水を一気に飲み、少しはマシな顔つきに戻ったのだった。




ダメさが目立つ横島先生……

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