桜才学園での生活   作:猫林13世

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役に立とうとはしている


役に立てること

 生徒会役員として活動してはいるが、力仕事以外で私が役に立てることは無いだろうか。幾ら高い所や力仕事担当としてスカウトされたとはいえ、それ以外で全く役に立っていないのはマズいと私だって分かる。

 だが勉強ダメ、字も汚い、ふざけた空気を締める力もない。そんな私がこの場で力になれることとはいったい……

 

「しまった。この書類、四時までに職員室に提出しなきゃいけなかったんだった」

 

 

 会長がそう呟いたのを聞いて、私は時計を確認する。現在の時刻は三時五十八分。ここから職員室まで会長の脚なら二分以上かかるだろう。

 

「任せてください! 脚には自信があります」

 

 

 私の脚力なら生徒会室から職員室まで一分くらいで行くことができる。これなら私でも役に立てると思ったのだが――

 

「気持ちは嬉しいけど、廊下は走っちゃダメ」

 

「そうでした」

 

 

 生徒会役員である私が堂々と廊下を走っているところを見られたら、会長の信頼にも拘わって来るかもしれない。まぁ、私が何かをしたところで生徒会の信頼が揺らぐとは思えないけど、会長の言う通り廊下は走っては駄目なのだ。

 

「事情を話して謝って来るよ。とりあえずお留守番お願い」

 

「分かりました」

 

 

 留守番くらいなら私でもできる。ただ生徒会室でボーっとしているのもあれなので書類整理でもしようかと思ったのだが――

 

「これは何を言ってるんすかね?」

 

 

――書類に書かれている内容が分からず断念することに。

 

「あれ? 広瀬さん一人? 会長は?」

 

「会長なら職員室に書類を提出しに行きました」

 

「そうなんだ」

 

 

 見回りから戻ってきた森先輩に会長の行方を伝えると、納得したように一度頷いてから自分の席に着く。この人位仕事ができたら、自信をもって生徒会役員だって言えるんでしょうけどね……

 

「あっ」

 

「どうかしたんすか?」

 

 

 ふと何かを思い出したように声を出した森先輩に、私は声を掛ける。この人が急に声を出すことは珍しいので、余程のことが起こったのだろうと思ったから。

 

「この仕事にはあの段ボールの中身が必要なんだけど……私じゃ届かないから脚立を用意しなきゃって思っただけだよ」

 

「それだったら任せてください!」

 

「広瀬さん、お願いしてもいい?」

 

 

 こういう時こそ私の出番だ! 最早これ要員と言っても過言ではないくらいこれでしか役に立っていないし。

 

「私、力には自信があるので!」

 

「何で肩車!? 広瀬さんが取ってくれるんじゃないの!?」

 

「あっ、それでいいのか……」

 

 

 てっきり森先輩が段ボールを取れるようにすればいいのかと思ったのだが、私が手を伸ばして取れば良かったのだ。どうしてこんな単純なことに気付けなかったんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室で携帯を弄っていると、ふと興味があるようなページを見つけ私はそのサイトへアクセスする。

 

「これ、欲しいかも……」

 

 

 周りに誰もいないと思ってそう呟いたのだが、どうやらトッキーがいたらしい。

 

「えっ、お前そう言うのに興味あるの?」

 

 

 ちなみに、私が見ていたのはSMの拘束具。普通に使うとすればドン引きされるだろう。

 

「これなら溢れ出す魔力を抑えられるんじゃないかってね」

 

「平常運転で安心した……もしそっちの趣味なら付き合い方変えた方が良いのかと思った」

 

「どうしたの?」

 

 

 そこにマキも合流して、トッキーが一連の流れを説明する。

 

「コトミ、貴女またそんなこと言ってるの? 確か中学の時も似たようなことを言って、それを聞かれて津田先輩にこっ酷く怒られたんでしょ?」

 

「その前に先生にも怒られました……」

 

 

 ふと思いついて呟いただけだったのだが、先生にそのことを聞かれ指導室に呼び出され、部活中だったタカ兄も加わり二人からこっ酷く怒られた過去がある。だがあの時は単純に思い付いただけだったんだけどな……

 

「てか、そろそろ部活じゃないの? 今日は百本ダッシュだって言ってたような気がしたけど」

 

「そうだった。トッキー、そろそろ行こう」

 

「あぁ」

 

 

 私はタイムと本数を数えるだけの仕事だが、トッキーたちはこれから地獄だろうな……

 

「てかさっきの話だけどよ」

 

「何?」

 

「本当に厨二関係で欲しかったんだよな?」

 

「うん。別にそういった意味で拘束したりされたりには興味ないよ」

 

「なら良い」

 

 

 よっぽど疑われているようで、トッキーは念を押すように確認してきた。そこまで心配しなくても、私は実兄で興奮する変態だがドMでもドSでもない。本来の用途で拘束具を使う予定はない。

 

「コトミちゃんだ~」

 

「アリア先輩! 見回りですか?」

 

「園芸部に用事があって、その帰りなんだ~」

 

「そうでしたか」

 

 

 アリア先輩がやってきたので、私は少し話しながら柔道部の練習を見ている。既に半分くらいは終わっているのだが、主将も結構疲れてる様子。

 

「どうした、もうバテたか?」

 

「っ! まだまだ!」

 

 

 大門先生に発破をかけられ、主将のやる気が最熱する。

 

「おぉ! 主将が闘志でメラメラしてる」

 

「透視でムラムラ!? コトミちゃん、何時の間にそんな術を」

 

「聞き違いっすよ」

 

 

 トッキーがアリア先輩にツッコミを入れるが――

 

「あながち間違ってないかも。主将、汗でブラ透けしてるし」

 

「主将、シャツ交換してください!」

 

 

 私の言葉にトッキーが主将に提案する。確かにスポーツ少女のブラ透けが見れると知って、男子生徒が集まってきたら大変だしね。




役に立ってるのだろうか……

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