桜才学園での生活   作:猫林13世

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まともな時は凄いんですけどね


キャンプ情報

 新聞部の畑さん、そして生徒会の四人と一緒に秋の星空の観察をする為にキャンプ場へ来たのだが――

 

「UFO撮るぞー!」

 

「UFO!?」

 

 

――などと畑さんが声高に宣言しだす。

 

「畑さん、星空の観察って言ってなかったっけ?」

 

「あっ、そっちももちろんします。ですがこのキャンプ場はUFOの目撃情報が相次いでいる場所でもあるので、ロマンも追い求めようと」

 

「そ、そうなのね……」

 

 

 てっきり騙されたのかと思ったが、星空観察もちゃんとしてくれるのなら良いかな。

 

「先生、騙されてます。この人たちは最初からUFO探ししか考えていませんから」

 

「えぇ……」

 

 

 安心したところに津田君からの曝露。この子は人の心が読めるとか言われているから、恐らく本当のことを言っているのだろう。

 

「それにしても、結構人いるなー」

 

「最近キャンプデート流行っていますからね」

 

「へー。星を見ながらデートって、ロマンティックだね」

 

「そうだな。そしてその後は『ちきゅう』の観察だな」

 

「ひゃー」

 

 

 一応教師の前なんだけどな……天草さんは昔からこんな感じの子だったけど、七条さんって確か大グループのご令嬢じゃなかったかしら? こんなことしてていいのかしら?

 

「目的は兎も角として、ふざけたことぬかすならUFOどころか星空も拝めなくしてあげますが?」

 

「「正直ふざけすぎました!」」

 

 

 津田君の一睨みであっさりと天草さんと七条さんは大人しくなる。これは確かにどっちが会長か分からない光景かもしれないわね。

 

「ちなみに私も以前キャンプ記事を書いたらハマってしまいました」

 

「そ、そうなのか」

 

 

 若干顔を引きつらせながらも、天草さんが畑さんと会話している。切り替えが早いのは良いことなのかもしれないけど、怖い思いしたくないなら真面目になればいいのに。

 

「これは『ダコタファイアーホール』といって、効率よく熱を通せるんです」

 

「ほー……? 畑、こっちの穴は何だ?」

 

「それはトイレです」

 

「何故我々の中心に!?」

 

「てか、普通にトイレあるんですけど」

 

 

 さすがに山奥でのキャンプではないのでトイレは整備されている。ということで畑さんが用意した穴は埋められることとなる。

 

「仕方ありませんね。せっかく貴重なトイレシーンを撮影しようと――あっ」

 

 

 背後に津田君がいることを思い出し、畑さんは青ざめる。

 

「(私、引率として機能してないんじゃ?)」

 

 

 こう言うことを注意するのも私の役目のはずなのに、津田君が一人で片づけてしまっている。何だか教師として自信が無くなって来るわね……

 

「しょ、食事の準備をしましょう。夜は長いですから」

 

 

 こってり絞られた畑さんが強引な話題転換を図っている。まぁ、食事の準備は必要だし、津田君も既に興味を失っているのか畑さんの話題転換にツッコミを入れることは無いようだ。

 

「食事の準備と言っても、温めるくらいしかできないだろ?」

 

「そこは言っちゃダメなところですぞ」

 

「お皿にラップがしいてあるのは何で~?」

 

 

 七条さんの疑問に、私が答える。

 

「お皿にラップをしけば、洗う必要無いしゴミも少なくできるでしょ」

 

「そうなんですねー。全身ラッププレイも、その後のシャワーが不要なエコプレイだったんだね」

 

「トークの難易度が高過ぎる……」

 

「野外ということで気が抜けてるんですか? 何でしたら三人とも、朝までみっちりとお説教して差し上げますが?」

 

 

 結局津田君がこの場を締めてくれたお陰で、天草さん、七条さん、畑さんの三人は大人しく星空の観察を行ってくれることに。

 

「萩村さん、眠いなら先に寝てもいいのよ?」

 

「大丈夫です!」

 

 

 何故か肩を跳ねさせた萩村さんが天草さんたちのところへ走っていく。

 

「何をそんなに?」

 

 

 わきに置いてあった雑誌を手に取り中を確認し、宇宙人の写真が掲載されているページを見つける。

 

「そういうことね」

 

「スズも子供っぽいところがありますからね」

 

「つ、津田君……」

 

 

 いつの間にか隣に立たれていて、私は思わず驚いてしまう。普段あまり交流の無い子だということもあるけど、いきなり現れたら誰だって驚いてしまうだろう。

 

「しかしまぁ、UFOですか」

 

「津田君は興味ないの?」

 

「いるかいないのか分からないものに興味を馳せれる程時間的余裕がないので」

 

「本当に高校生?」

 

 

 なんとも達観した考え方をしている子だと思い、思わず聞いてしまう。これはかなり失礼なことだと言ってから気が付いたが、津田君は嫌な顔せずに答えてくれた。

 

「高校生ですよ。それも、シノ先輩たちの後輩です」

 

「そうよね」

 

 

 桜才学園が共学化されたのが津田君たちの代からなのだから、女子生徒しかいない三学年より上ということはあり得ない。そして彼が未成年であることは少し調べればわかること。なので現役ということは確定している。それでも――

 

「(私より大人っぽい雰囲気なのよね……)」

 

 

――引率役は津田君でも良かったのではないだろうか。

 

「(って、ダメダメ! 津田君だって未成年。子供だけで夜の外出を教師である私が認めるわけにはいかないじゃない)」

 

 

 ただでさえ津田君にはいろいろと面倒事を任せているのだ。そこに私までおんぶにだっこでは津田君への負担が凄いことになってしまう。

 

「もう少し頑張らなきゃ」

 

「小山先生は十分頑張ってるとは思いますけどね。頑張らなければいけないのは、目の前ではしゃいでる先輩三人でしょう」

 

 

 結局UFOは現れなかったようで、次こそはと意気込んでる三人を見て、津田君は盛大にため息を吐いたのだった。




頑張れ、小山先生……

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