桜才学園での生活   作:猫林13世

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変な写真ではないです


秘蔵写真

 風紀委員との打ち合わせを終え、我々三人は今風紀委員会本部から生徒会室へ戻るところだ。ちなみに何故三人なのかというと、タカトシはいろいろとやらかした横島先生の監視の為に職員室にいるからだ。

 

「カエデちゃん、明らかに落ち込んでたね」

 

「タカトシと会えると思ってたのかもしれないな」

 

「風紀委員長が不純な動機で打ち合わせを画策していたとなると、いろいろと問題になりそうですね」

 

 

 萩村がここまであからさまな態度を見せるのも珍しい。やはり恋のライバルということで少しでもタカトシとの距離を離したいのかもしれないな……まぁ、私もだが。

 

「あっ」

 

 

 角を曲がると畑がいて、何か怪しい雑誌をこれ見よがしに隠す。

 

「畑、今何を隠した」

 

「何でもありませんよ」

 

「怪しいですね」

 

 

 三人で取り囲み隠したものを提出させようと追い込む。これがタカトシだったらあっという間に没収するのだろうな……この点だけ見ても、タカトシの方が生徒会長っぽい威厳があるのだろう。

 

「分かりました」

 

 

 三人分の圧に負けたのか、畑はあっさりと隠した雑誌を提出する。

 

「あーあ、私が投稿した写真が載った雑誌、見つかっちゃった」

 

「まさか、誘導された?」

 

 

 あからさまな付箋があるし、畑の顔も嬉しそうにほころんでいる。これはつまり、自分が投稿した写真が掲載された雑誌を自慢したかったということなのだろう。

 

「まぁ、見てください」

 

 

 萩村にも見やすいよう、少し屈んで雑誌を開く。するとそこには夜空に一筋の光が写った写真が掲載されていた。

 

「UFOか」

 

「凄いね~」

 

「えぇ、凄いですね」

 

 

 まさか萩村まで手放しで褒めるとは思わなかったな。

 

「ここまで嘘塗れのコメントも」

 

「ん?」

 

 

 萩村に言われるまで写真しか見ていなかったが、撮影者のコメントに問題があるのか? そう思いコメントを読むと――

 

『お星さまにお願いをしようと夜空を眺めていたら突然UFOが現れてビックリしました☆』

 

 

――などと、畑を知る人が見たら嘘八百だと分かるコメントが掲載されていた。

 

「しかしUFOか……一度見てみたいという気持ちもあるな」

 

「ですが、UFOの正体はドローンの見間違いって言われていますよ」

 

「そんな、ロマンの無い」

 

「ドローン? 何のために~?」

 

「インフラ調査で空撮しているとかだろ」

 

 

 私の説明に、アリアがショックを受けたような顔をする。まさか、アリアもUFOに憧れていたのだろうか?

 

「じゃあ、自宅庭で露出プレイしている場面を撮影される可能性が!?」

 

「ロマンありますな」

 

「てか、そんなことしないでくださいよ」

 

 

 萩村がアリアにツッコミを入れたところで、コトミとトッキーが現れた。

 

「皆さん、何の話題で盛り上がってるんですかー?」

 

「畑の秘蔵写真が素人投稿雑誌に載ったのだ」

 

「えぇ!? 畑先輩、そんな過激な写真を?」

 

「兄貴がいたら怒られるだろうな」

 

「「っ!」」

 

 

 トッキーの言葉に私とコトミは同時に肩を跳ねさせて辺りを見回す。幸いなことにタカトシはいなかったが、ふざけるのは自重しよう。

 

「それで、本当は?」

 

「UFOの写真だ」

 

「そうだったんですね」

 

 

 とりあえずコトミたちはあまり興味が無さそうなので簡単に説明するだけに留める。だって、またふざけ出したら、タイミングよくタカトシが現れそうで怖いから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑さんの写真は確かに一部の人間には面白いのかもしれないが、私は信じられない。

 

「私は非科学的な物は信じません」

 

「そういえば身長差カップルって相性良いらしいよ」

 

「えっ!」

 

 

 突然何を言い出すのかしら、この人は……

 

「ま、科学的根拠のない話だから興味ないか」

 

「そっ、そうですよっ!」

 

 

 一瞬誰かさんの顔が頭に浮かんだが、別に私とタカトシが身長差あるからと言ってカップルになるわけではないのだから。

 

「しかし、このままドローンと疑われるのも癪なので、今度UFOがよく目撃されるキャンプ場で撮影に臨みます」

 

「まてまて、夜間外出は駄目だろう」

 

「大丈夫ですよ。化学の小山先生に引率してもらいますし、津田君も呼べば問題ないでしょう」

 

「いや、タカトシは兎も角引率は無理だろ」

 

 

 確かにUFOの写真を撮りたいからと言っても教師が引率してくれるわけない。だが畑さんは自信満々に偶然通りかかった小山先生に――

 

「秋の夜空を観察したいので同行してくれませんか?」

 

 

――などと、またしても嘘塗れなセリフを吐いた。

 

「星の観察? いいよ」

 

「物は言いよう!?」

 

 

 あっさりと小山先生の許可も出てしまった。こうなると好奇心旺盛な会長が同行しないわけがないわけで――

 

「では、今度の休みは畑と一緒に星空観察だ! 小山先生、よろしくお願いします」

 

「天草さんたちも? 参加者はここにいる四人なの?」

 

「後津田君にも同行してもらう予定です。さすがに女性だけでは不安なので」

 

「そうかもね。津田君が一緒なら安心かもね」

 

「(教師からも絶大な信頼を勝ち取っているタカトシっていったい……)」

 

 

 ここで生徒会長である天草先輩ではなくタカトシの名前で安心されるということに、私は疑問を懐いたのだが、会長や七条先輩、畑さんは特に何とも思っていない様子。

 

「(タカトシだからってことで納得しているのでしょうね……)」

 

 

 それで納得するのもどうかと思うけども、それで納得しておいた方が余計に悩まなくていいのも確か。私も深く考えないことにしておこう。




出てこなくても大活躍なタカトシ

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