桜才学園での生活   作:猫林13世

801 / 871
今回はほんとに混浴


まさかの混浴

 忍者体験を終え、私たちは七条先輩が用意してくれた旅館にやってきている。相変わらずタカトシは恐縮しているようだが、私の方はもう慣れた。この人と一緒に行動する以上、これくらいで恐縮していたら身が持たないからだ。

 

「パリィ、忍者体験はどうだった?」

 

「オドロキの連続だったよー」

 

「それはよかった」

 

 

 私が手配したわけではないけども、パリィが楽しめたようで何より。これでつまらなかったとか言われたら、何の為に付き合ったのか分からないから。

 

「よしそれじゃあ、全員でお風呂に入ろう!」

 

 

 天草会長がそう宣言すると、パリィが何か驚いた顔をしている。

 

「パリィ、どうしたの?」

 

「全員ってことはタカトシも一緒に……つまり混浴ってことでしょ?」

 

「そうだね。でも、気にする必要ないよ」

 

「えぇぇぇぇ」

 

 

 私の言葉にパリィがさらに驚いた表情を見せる。いったい何がそんなに気になると言うのだろうか。

 

「ここは湯着を着て入る共同浴場なのだ」

 

「ビックリしたー。てっきりスズはタカトシと混浴慣れしてるのかと思っちゃった」

 

「言葉足らずだぞ、萩村」

 

「すみません」

 

 

 パリィが驚いていたのはそう言うことだったのか……パンフレットにここの浴場のことは書いてあったからパリィも知ってるものとして話してたから、あれだけ驚かれてしまったのか。

 

「それにしても気持ちいですね。ずっと入っていたい」

 

「津田様が入った湯にずっと入っていたいってことですね」

 

「スズちゃん、また言葉足らず?」

 

「今のは100%だよ!?」

 

 

 出島さんと七条先輩に拡大解釈されてしまい、私は大慌てで否定する。だって否定しないと私まで出島さんと同類だと思われてしまうから。

 

「それにしてもスズ」

 

「何?」

 

「ここの温泉真っ白だね。どれだけの男の人が白いのを出してるの?」

 

「違う! これはにごり湯って言うのよ! これで綺麗なお湯なの!」

 

 

 パリィがとんでもないことを言いだしたので、私はお湯を掬って見せる。決して汚れていないということを見せたかったのだが――

 

「あっ縮れ毛」

 

「白いと異物も目立つな」

 

 

――とんでもないものを救い上げてしまったので、すぐさまリリースする。

 

「今のは誰の毛だ? 私ではないからな」

 

「シノちゃん、誰も聞いてないよ?」

 

「シノは毛深いってランコが言ってたから、シノじゃないの?」

 

「またかアイツは!」

 

「あの、タカトシが怒るのでそれくらいで」

 

 

 私たちの湯着姿に一切の興味を示すことなく、黙って湯に浸かっているタカトシだが、さっきから不機嫌オーラが溢れ出している。私の忠告が功を奏したのかは分からないが、とりあえず誰の毛問題は有耶無耶で終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スズにお風呂に誘われた時は驚いたけども、こうしてみんなと一緒にお風呂って楽しいんだね。

 

「せっかくだからストロー持ってくれば良かったな」

 

「ストロー? 何に使うの?」

 

「水の中で息するヤツ、あれをやりたかった」

 

「忍者ネタか」

 

 

 せっかく忍者体験に来たんだから、やりたいこと全部試したかったんだけど、忘れちゃったのがもったいない。こんな機会滅多にないのに……

 

「あの、偶然にも便器マスクならあるよ~」

 

「わーい!」

 

「必然だろうが!!」

 

 

 アリアが代用品を提示してくれて、私は大喜びだったんだけど、何故かスズは怒っている。

 

「スズは何で怒ってるの?」

 

「怒りたくもなるわよ! てか、こんなの使わせないからね」

 

「残念」

 

 

 スズに取り上げられてしまったので、私は水の中で息をすることを断念することに。

 

「そういえば温泉で思い出した」

 

「何?」

 

「頭にタオルを乗せるのがつうなんだよね?」

 

「実際にやる人、あまりいないけどね」

 

「そうなんだ」

 

 

 スズの頭からタオルを回収すると、シノが何かやり出す。

 

「こうして三角折りにするとパンツみたいに見えるな」

 

「水玉がリアルだね」

 

「何で私の頭に乗せるんですかね?」

 

 

 さっきからスズを実験体にしているが、タカトシにやらないのはスズだって分かりそうなものだ。付き合いの短い私でも、こんなことをタカトシにしたらどうなるかくらいわかる。

 

「皆さま、上をご覧ください」

 

「上?」

 

 

 何かを誤魔化すようにサヤカが上を指差す。私たちはサヤカに言われるまま上を見て――

 

「絶景だな」

 

「そうだね~」

 

 

――満天の星空に気付けた。

 

「みんな、さそってくれてアリガトね」

 

「これくらい当然だ!」

 

「ウチで用意できるものなら何でも言ってね~」

 

「むしろ用意できない物があるんですか?」

 

 

 私がお礼を言うと、皆は気にしなくていいという感じで微笑んでくれた。

 

「タカトシも、付き合ってくれてアリガト」

 

「やり過ぎない限りは、俺は何も言わないから」

 

「やっぱりタカトシが会長みたいね」

 

「会長は私だぞ!?」

 

「知ってるよ~。一緒に戦った仲だし~」

 

「パリィ?」

 

「ん~? 何だかふわふわしてきた~。天にも昇る気分だよ~」

 

 

 何だか世界がぐるぐる回ってきたような気もするけど、いったい何が……

 

「ん……はっ!? ここは?」

 

「部屋よ。パリィ貴女、逆上せて大変だったんだから」

 

「誰が運んでくれたの?」

 

「タカトシしかいないでしょ。出島さんじゃパリィのあれこれを写真に収めてただろうし」

 

「着替えも?」

 

「そこは私たちがやったから安心して。まぁ、タカトシがやるなんて言い出すわけ無いって分かってるでしょうけども」

 

「一番信頼できる人だもんね~」

 

 

 桜才学園で一番と言っても過言ではないと思っている。私はタカトシにお礼を言ってから、もう一度横になるのだった。




パリィからも信頼が高いタカトシ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。