桜才学園での生活   作:猫林13世

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持ち込み過ぎですね


私物の整理

 生徒会室の掃除は定期的にタカトシが行っている。私たちもやろうとは思うのだが、タカトシレベルの掃除の腕など無いし、タカトシ並の速度で掃除を終わらせるスキルも持ち合わせていない。なので基本的にはタカトシにまかせっきりなのだ。

 

「タカトシ、この段ボールは何だ?」

 

 

 だからではないが、生徒会室に置いてある備品や書類の場所などはタカトシに聞けば一発で分かる。それでも分からない物が生徒会室にあるのだ。

 

「持ち主不明の物がかなりありましたので一纏めにしてあるだけです。心当たりがある人は持ってかえってください」

 

「そうか」

 

 

 私たちもそれなりに私物を持ち込んでいたりするから、知らず知らずのうちに溜まってしまっているのかもしれないな。

 

「これは私のだ」

 

「これ私だ~」

 

「先輩たちも結構持ち込んでるんですね」

 

 

 私、アリア、萩村の三人が段ボールの中身を確認していくたびに、持ち主が「そういえば」という顔をしている。つまり、持ち込んでいたことを忘れていたのだろう。

 

「このジャージは誰のだ?」

 

「私じゃないよ~」

 

「私でもありません」

 

「私でもないんだよな……」

 

 

 タカトシのではないだろうから、いよいよ持ち主不明ということに――

 

「ん?」

 

 

 ジャージを注意深く観察していると、タグの部分に『古谷』と書かれていた。つまりは先代生徒会時代の私物もあるということか……

 

「先輩、生徒会室に置きっぱなしの私物を持ち帰ってください」

 

『えー』

 

 

 電話で先輩を呼び出している間に、段ボールの中身の確認を再開する。すると、結構な数のOGの私物が出てきた。

 

「今まで活動していて気付かなかったな……」

 

「こうしてみると、先輩たちも結構持ち込んでたんだね~」

 

 

 しみじみとアリアと昔を懐かしんでいると、古谷さんがやってきた。

 

「わー、こんなにあったかー」

 

「タカトシが掃除して纏めてくれていました」

 

「受験でばたばたしてたからー。大目に見て」

 

 

 タカトシに軽い感じで謝罪して段ボールを漁る古谷先輩。取り出したものはサングラス……

 

「って、そのサングラスは卒業後に持ち込んだものですよね」

 

「ゴメンって」

 

 

 古谷先輩をぐりぐりして攻撃していると、唐突に話題を変えてきた。

 

「サングラスと言えば、胸元に描けるのがナウいんだよー」

 

「何言ってるんですか! 胸元には指を掛けた方がエロいですよ」

 

「アンタが何言ってるんだ」

 

「おっ、ため口ツッコミ」

 

 

 エロボケをかましたアリアにタカトシがため口でツッコミを入れ、古谷先輩がそれを聞いて感動している。

 

「私たちの時代には無かった光景だな」

 

「感想を言うのは良いですが、ちゃんと持ち帰ってくださいね?」

 

 

 タカトシから圧を掛けられ、古谷先輩は引き攣った笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が津田君から圧をかけられていると、ナツキがやってきた。

 

「やっほー」

 

「南野先輩も私物、持ち帰ってください。ここに名前が入ってます」

 

「おっ、なつかしー。これ一年の頃のカーディガンだ」

 

「着てみたら?」

 

「さすがにもう着られ……」

 

 

 ない、と続けようとしたのだろうが、ナツキの身体にぴったりとフィットーーどころか、あっさり着ることができている。

 

「(胸回りがスッキリしてる!!)」

 

「そういえばウチの母も、出産後胸が小さくなったって言ってました」

 

「つまり、今なら私でも対抗できる!?」

 

「いやいや、天草は無理だろ」

 

 

 いくら小さくなったとはいえ、ナツキもそれなりに胸がある。天草では対抗するだけ無駄だろう。

 

「しかし、こうしてみてみると結構持ち込んでるもんだな。これ誰のだっけ?」

 

「さぁ?」

 

「何分昔のことだからなー」

 

 

 段ボールを漁りながら昔を懐かしんでいると、ももひきが出てきた。

 

「もーこれは誰のー?」

 

「先輩のでしょ」

 

「古谷さんだと思います」

 

「サチコのでしょ」

 

 

 天草、萩村、ナツキに断定されてしまい、私のものだということになった。

 

「ゴメン、遅くなったー」

 

「カヤ」

 

「相変わらずこの部屋は日が入るねー」

 

「カーテンを閉めましょうか?」

 

「いやいや、そこまでせんでも――」

 

 

 そう言ってカヤが持ってきた何かを窓に貼り付けた。

 

「これを窓に貼ればよろし」

 

「私物持ち込まれたっ!?」

 

「すごーい! カヤのポスターじゃん」

 

「いや~」

 

 

 私が称賛すると、カヤは恥ずかしそうに頭を掻く。

 

「イタズラしちゃだめだぞっ? 画鋲刺したり」

 

「先輩、見てください」

 

 

 カヤが注意していると、七条がポスターに何かをしたようだった。

 

「ポスターの裏側につけ乳首をつけると、透けてる感じにっ!」

 

「エロ―い!」

 

「はは、相変わらずだな」

 

 

 この面子が揃ってしまったら昔に戻ってしまうのも仕方が無いだろう。だが昔と圧倒的に違うには、この面子にも臆せずに説教してくる後輩がいるということだろう。

 

「問答無用に持ち主共々捨てられるのと、黙って片付けて持って帰るの、どっちが良いですか?」

 

「「「「「直ちに片づけますっ!」」」」」

 

 

 私、ナツキ、カヤ、天草、七条の五人は弾かれたように私物の片づけを再開する。その背後では、盛大にため息を吐いている津田君を、萩村が慰めているようだ。

 

「もう一回聞くが、津田君は本当にお前たちの後輩なんだよな?」

 

「先輩が卒業してから共学化したんですから、間違いなく後輩です」

 

「だよな……」

 

 

 もはや教師でも対抗できない貫禄を携えている津田君を見て、私は苦労してるんだろうなと思ったのだった。




揃うと大変だな……タカトシが

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