桜才学園での生活   作:猫林13世

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酷い名前だ……


芸術鑑賞

 タカトシ以外の生徒会メンバーが風邪で休んでいたが、全員同じタイミングで復帰した。

 

「いやー、タカトシには迷惑をかけてしまったな」

 

「風邪ばっかりは仕方が無いですよ。しかも自身の不注意ではなく、パリィからもらったわけですから」

 

「でも休んでる間に校外学習があったじゃないですか」

 

「二年生は美術館で芸術鑑賞だったな」

 

「プリケ・ツ・ダーナやパイオ・ツ・モンデーの作品、見たかったな」

 

 

 結構楽しみにしていたのだが、こればかりは仕方が無い。今度時間を作って美術館に見に行くしかないだろう。

 

「じゃあウチ来る?」

 

「え?」

 

 

 何故この会話の流れで七条家へ招待されたのか分からなかったが――

 

「あるよ、ウチに」

 

「わー」

 

 

――そういえば七条先輩は物凄いお嬢様だったんだっけ。それくらいの絵画があったとしても不思議ではない。

 

「それでは今度の休みに全員で行こう!」

 

「俺もですか? 俺は普通に芸術鑑賞に参加したのですが」

 

「来て! 私一人で会長と七条先輩、そしておそらくいるであろう出島さんの相手はできないから!」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 タカトシに懇願して、何とか参加してもらえることに。決してタカトシと美術鑑賞デート気分になるかもなんて思っていない。これっぽちもだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風邪で芸術鑑賞に参加できなかった萩村の為に、七条家のコレクションルームへ招待してくれたアリアにお礼を言い、私たちはじっくりと絵画や芸術を鑑賞することに。

 

「こんな素敵な絵を間近で見られるなんて……ありがたいです」

 

「そうだな。しかも普通の美術館みたいに他のお客を気にしなくていいのもありがたいものだ」

 

 

 普通の美術館なら、何時までも絵の前で立ち止まっていたら迷惑になってしまうかもしれない。だがここは個人宅でその中のコレクションルームのため、どれだけじっくり鑑賞しても迷惑にはならない。

 

「ちなみに、こちらの絵画は五百万円になります」

 

「っ!?」

 

 

 出島さんの説明に、私と萩村は一気に絵画から距離を取る。万が一があって買い取りなんて言われたら困るからだ。

 

「近くで見ないの?」

 

「あんな値段を聞かされて、近くで見られるわけないだろ」

 

「気にしなくてもいいのに~。お父さんが趣味で買ってるだけだから、そこまで厳重に管理してるわけでもないから」

 

「お金持ちの感覚は、我々庶民には分からないな……」

 

「ですね……」

 

 

 気にしなくてもいいと言われても、はいそうですかというわけにはいかない。私たちは自分のツバが飛ばないように注意しながら芸術鑑賞を再開する。

 

「こう言うのを現代アートと言うんだな」

 

「コトミなら『私にもできそう』とか言い出しそうですね」

 

 

 私の独り言にタカトシが相槌を打つ。確かにコトミならそんな感想を言いそうな絵だが、これはこれで趣があって良いものだ。

 

「次は石膏像――ん?」

 

 

 何故か縄で縛られている石膏像が飾られており、私は思わず首を傾げる。

 

「あっ、これは亀甲縛りの練習で……」

 

「ヘンタイアートだったか」

 

「せっかくの芸術品で遊ぶんじゃねぇ」

 

 

 タカトシがアリアへ説教を始めたので、私と萩村は次の絵へと移動する。決して怒っているタカトシの側に居ると、自分も怒られている気分になるからではない。

 

「大きな絵だな」

 

「何故私を一瞬見た?」

 

「と、特に意味はないぞ!?」

 

 

 萩村から疑惑の視線を向けられながらも、私はその絵をじっくり鑑賞しようとして――

 

「大きすぎて視界に入りきらないな」

 

 

――どう対処すればいいのか分からなかった。

 

「後ろに下がれば全体が見えるよ~」

 

「おぉ、アリア」

 

 

 タカトシからの説教から解放されたアリアが解決策を授けてくれたが――

 

『ドン』

 

「「わーっ!?」」

 

 

――後ろにあるツボを飾っている台にアリアが衝突し、私と萩村は大声を出す。

 

「何騒いでるんですか……」

 

「ナイスキャッチ、タカトシ……」

 

 

 一瞬でアリアの背後に回ってツボをキャッチしたタカトシに、私と萩村は拍手を送る。

 

「そちらのツボは旦那様が骨董市で五百円で買ったものですので」

 

「そうだったのか……また何百万とか言い出すかと思って心配しましたよ……」

 

 

 別に私たちが壊したわけではないのでそこまで過敏になる必要はないのだが、どうしてもここにある物は高いという感覚が、さっきのような状況でも作用してしまうのだ。

 

「ちなみに、安物だから私が痰ツボに使っているって言ったらどうします?」

 

「ホラーオチにしないでください!?」

 

 

 今度は出島さんがタカトシに説教され始めたので、私たちはアリアの説明の下、芸術鑑賞を再開したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日はお友達を招待しての芸術鑑賞だったけども、かなり楽しんでもらえたようでうれしい。何時かタカトシ君と二人きりで鑑賞会でも出来たら良いな。

 

「今日は招待してくれてありがとうございました」

 

「いえいえ」

 

 

 タカトシ君はトイレに行っているので、お開きの挨拶は私たち三人と、背後に控えている出島さんの四人で行われている。

 

「美術鑑賞にハマっちゃいました」

 

「まぁ、春はムラムラするからね」

 

「えっ?」

 

 

 スズちゃんは何か驚いた表情をしているけど、いきなりの告白にビックリしてるのは私の方なんだけどな。

 

「秘術カンチョーにハマったって言ったでしょ?」

 

「聞こえた」

 

「聞こえました」

 

「1対3は分が悪い」

 

「どうしたの?」

 

「あっ、タカトシ」

 

 

 タイミングよく戻ってきたタカトシ君にスズちゃんが事情を説明し、私たちは最後の最後でタカトシ君にお説教されることになってしまったのだった。




しょーもないオチ……

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