桜才学園での生活   作:猫林13世

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一人でも十分な気もするが


ピンチヒッター

 シノっちから連絡をもらって、私は英稜学園生徒会メンバーに緊急招集をかけた。

 

「シノっちからの連絡で、シノっち、アリアっち、スズポンが風邪でダウンしてしまったようです」

 

「あらら……」

 

 

 このメンバーの中にタカ君がいなかったのが不幸中の幸いだとシノっちは言っていましたが、生徒会の仕事が多いのに申し訳ないという気持ちだとも言っていました。

 

「タカ君以外の生徒会メンバーがダウン中。そして我々は明日創立記念日で休み」

 

「まさか」

 

 

 サクラっちは気付いたようだけども、青葉っちとユウちゃんは気付いていない様子。なので私は立ち上がって宣言することに。

 

「明日一日、私たちがタカ君のサポートを行う為に桜才学園へ向かいます!」

 

「やっぱり」

 

 

 サクラっちは想像通りの宣言にガックリした様子ですが、一年生コンビは私の宣言に合わせて立ち上がってくれた。

 

「困った時はお互い様っすよね。私は津田先輩にテスト対策をしてもらったおかげで平均スレスレの点数を採れましたし」

 

「あれだけ勉強を見てもらって平均スレスレなのは問題だけど、確かにユウちゃんはタカ君にお世話になってるもんね」

 

 

 青葉っちもいろいろと聞いているようですし、私もタカ君にお世話になっている身だ。ここは少しでも恩返しをした方が良いだろう。

 

「早速シノっちに提案したところ『頼む』と返信が来たので、明日はここではなく桜才学園の生徒会室に集合です」

 

「分かりました」

 

 

 既に諦めているのか、サクラっちは素直に私の言葉にしたがってくれた。しかしタカ君一人で終わらせられない程の仕事量って、いったいどれくらいなのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会長の提案で桜才学園生徒会の手伝いをすることになった私たちは、津田先輩が授業中の間に仕事を片付けておくことに。

 

「いやー、わざわざ申し訳ないな」

 

「困った時はお互い様です」

 

 

 桜才学園の生徒会顧問である横島先生が様子を見に来た。ウチの生徒会には顧問がいないから、ちょっと羨ましいっす。

 

「しかし生徒会は責任ある仕事だからなれ合いは無しだ! ビシビシ行くぞ!」

 

「こんな綺麗な人が顧問なんていーなぁ」

 

「えっ、綺麗?」

 

 

 青葉さんが素直な感想を漏らすと、横島先生が何だかクネクネとしだした。何があったと言うのだろうか……津田先輩なら分かるんだろうけども、私には分からない。

 

「先生、ここ間違えちゃいましたー」

 

「しょうがないにゃあ」

 

「………」

 

「森先輩?」

 

 

 横島先生を見て呆れた様子の森先輩に理由を尋ねると――

 

「多分褒められなれていないんだと思うよ」

 

 

――とのこと。まぁ、あの先生は良く津田先輩に怒られていると会長から聞いたことがあったし、恐らくはそうなんでしょうね。

 

「そうだ。せっかくだから桜才の制服を貸してやろう」

 

「良いんですか?」

 

「予備だから問題ないだろ」

 

 

 そう言って横島先生は三人分の桜才の制服を用意した。

 

「いーなー。私、サイズ合うのない」

 

「確かにデカいから女子用のは――あっ!」

 

 

 何かひらめいたようで、横島先生は隣の備品室へ入っていった。

 

「これだったら着られるんじゃね?」

 

 

 そう言って持ってきたのは桜才学園のマスコットであるさくらたんの着ぐるみだ。

 

「やったー!」

 

「広瀬さん、それで良いんだ……」

 

 

 何だか森先輩に呆れられたようだけども、これで私もみんなとお揃いっすね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、委員会会議があり、タカトシ君と我々三人が会議に参加。青葉さんは生徒会室で書類の整理を担当することに。

 

「――で、報告は以上です」

 

 

 五十嵐さんの報告が終わり、タカトシ君が会議の終了を宣言する。同じ副会長だけども、私にこれだけの司会進行はできないだろうな。

 

「素晴らしい内容でした。シノっちが言っていた通りの人ですね」

 

「え、何を?」

 

「五十嵐さんは最高のオカズだって」

 

「………」

 

「生徒会がご飯なら風紀委員はオカズという、良くある食べ物に例えるネタなんですけど、聞こえてますか?」

 

 

 思いっきり勘違いしている五十嵐さんにどう説明したものかと悩んでいたら、タカトシ君が五十嵐さんにメッセージを送りその問題も解決した。

 

「義姉さん、完全に勘違いさせるつもりでしたね?」

 

「だって、カエデっちはからかうと面白いから」

 

「アンタねぇ……」

 

 

 盛大にため息を吐いたタカトシ君は、やれやれと首を振ってから生徒会室へ向かう。私たちもその後に続くんだけど――

 

「ところで、どうして広瀬さんはさくらたんの着ぐるみを?」

 

 

――ずっと気にしていたことを質問してきた。

 

「これしか着られるサイズがなかったんすよ」

 

「無理に着なくても……というか、頭外したら?」

 

「いや、これでいいっす」

 

「そう? じゃあ俺は見回りに行ってくるので、留守番はお願いします」

 

 

 タカトシ君が青葉さんを連れて見回りに行き、私たちが今度はお留守番。

 

「せっかくだから役職の椅子に座ろうか」

 

 

 そう言うことでタカトシ君の椅子に座ることになったのだが――

 

「あっ、零しちゃった……臭わないよね?」

 

「『森副会長、津田副会長の椅子の匂いに興奮』っと」

 

「何してるんですかっ!?」

 

 

――畑さんに盛大に勘違いされてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カナたち英稜生徒会が手伝ってくれたお陰で何とか生徒会業務に支障が出なかったようだ。私はカナにお礼と、タカトシの謝罪のメッセージを送ろうとして――

 

「何故英稜三人とさくらたんのショットが?」

 

 

――カナと森の肩に手を置き一緒に写っているさくらたんに意識を奪われた。

 

「ん?」

 

 

 その写真の後のメッセージで、さくらたんの中身は広瀬で、写真を撮ったのがタカトシだと判明して、とりあえず興奮して熱が上がることはなかったのだった。




誤解は一瞬で解消

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