桜才学園での生活   作:猫林13世

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まぁ、順当な結果でしょう


ボルダリング挑戦

 タカトシから話を持って来られた時は何事かと思ったが、コトミが運動をやる気になっているということなので、私たちも参加することに。

 

「――というわけで、七条家が経営しているボルダリングができる場所にやってきたぞ!」

 

「会長、何だか説明クサいです」

 

 

 私のツッコミに、会長は視線を逸らす。恐らく自分でも説明っぽくなっていると思ったのだろう。

 

「フフフ、腕が鳴るね」

 

「自信満々なのは良いけど、ちゃんと準備運動しなきゃダメよ」

 

「ですよねー」

 

 

 タカトシなら準備運動無しでも問題なく登れるかもしれないが、私たちは初心者だ。しっかりと準備運動しておかないと何があるか分からない。

 

『パキ』

 

「(コトミの膝が鳴ってる……)」

 

 

 横から音がして、私はイマイチ集中できずにいる。

 

「まずは会長、行っちゃってくださーい」

 

「うむ。しかし、じっくり見るといろいろな形の石があるんだな」

 

「ホールドっていうんだよ」

 

 

 七条先輩の説明に、私たちは「へー」と声を揃える。

 

「ちなみに、この穴が大きいものは『ガバ』といって、両手で持てるから初心者は活用すると良いよ」

 

「これか?」

 

 

 早速会長がガバに手を伸ばしてみると、すんなり掴むことができた。

 

「本当だ。穴がガバガバで指が全部入ってしまった」

 

「何だかイヤラシイですね~」

 

「ふざけ半分だと怪我しますよ」

 

 

 タカトシから無言の圧力がかかってきたので、私は会長にツッコミを入れる。タカトシがやればいいのにとも思ったけど、そうすると会長が委縮して登れなくなっちゃうからかしら。

 

「次、萩村行ってみよー」

 

「私ですか?」

 

 

 さすがに頂上まで登りきることはできなかったが、それなりに登った会長が私に挑戦するよう促してくる。確かコトミがやりたがってたんじゃなかったかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スズ先輩が登っていくのを眺めていたら、横にタカ兄がやってきた。

 

「お前がやりたいって言ったんだろ? 何でやらないんだ」

 

「怖くって……」

 

「怖気づいたのか?」

 

 

 私が何に怯えているのか分かっているのか、タカ兄はどこかに行ってしまったが代わりにシノ会長が尋ねてきた。

 

「私の握力でホールドが壊れないかなって」

 

「お前、自分を過大評価し過ぎでは?」

 

「そんな心配しなくっても男の人がぶら下がっても壊れないから大丈夫だよ~」

 

 

 アリア先輩の言葉に安心して、私はいよいよ念願のボルダリング初体験をすることに。

 

「こうですか?」

 

「うまいうまい。コトミちゃんセンスあるね~」

 

「そうですか?」

 

 

 アリア先輩におだてられて、私はすいすいと壁を登っていく。

 

「初心者とは思えなかったよ?」

 

「私は褒められて伸びるタイプなんですよ~」

 

「そうなんだ~。でも勉強は伸びてないよね?」

 

「褒められてませんから」

 

 

 褒められるような点数を採っていないと言われればそれまでだが、恐らく勉強に限って言えば褒められても伸びないだろう。

 

「でもこれだけの運動だっていうのに、結構疲れますね。もう息が上がっちゃってますよ」

 

「運動には正しい呼吸法があるのよ。ストロー呼吸って言って、ストローを使って呼吸を操って、パフォーマンスを上げる方法があるのよ」

 

「そうなんですね~。でも肝心のストローがありませんよ?」

 

「フフフ、そう言う話題が出るって言われて出島さんから貫通型のオ〇ホを預かってきてるんだ~」

 

「ストローじゃないのかい!?」

 

 

 さっきからタカ兄がツッコミ放棄してるように感じる。恐らく相手にするだけ馬鹿らしいと思っているのだろうな。

 

「もう一回挑戦してきます!」

 

 

 とりあえず呼吸を意識しながら登っていくが、汗で手が滑って壁から落ちてしまう。

 

「いたた……」

 

「大丈夫か?」

 

 

 タカ兄が手を伸ばしてくれたが、私の手は今汗でベトベト。何だか恥ずかしくなって私は手を伸ばせずにいた。

 

「ところで、アリアとタカトシはやらないのか?」

 

「私は今日インストラクター的な立ち位置だから。でもタカトシ君はやった方が良いと思うよ?」

 

「俺はあくまでもコトミの引率的な立ち位置のつもりだったのですが」

 

「私だって高校生だよ、タカ兄。引率なんていなくても大丈夫だって」

 

 

 私の信頼度が低いのは自覚してるけども、さすがにこれくらい引率がいなくても大丈夫だと言える。だからタカ兄には普通に参加者でいて欲しかったんだけどな。

 

「私もタカトシが登るところを見てみたいぞ」

 

「私も~」

 

「はぁ……」

 

 

 会長とアリア先輩に懇願され、タカ兄はとりあえず初心者用のルートを登っていき、危なげなく登りきる。

 

「凄い凄い。それじゃあ次は中級に――」

 

 

 その後タカ兄は上級用のルートも楽々と登りきり、特に呼吸を乱すことなく下りてきた。

 

「さすがタカトシ君だね~。私でも上級はちょっと怖いのに」

 

「そうなんですか? だったら何故人に登らせたのでしょうか?」

 

「タカトシ君なら問題なく登れそうだったし、失敗しても何も問題なかったし」

 

「まぁ、そう言う理由でしたら」

 

 

 タカ兄はイマイチ納得していないような感じだったけど、とりあえずボルダリング体験はとても楽しい時間だった。

 

「――というわけで、今の私はパワーアップしてるのだよ、トッキー」

 

「そう言うの良いから、さっさとこの荷物運べよ」

 

 

 翌日柔道部の荷物を道場に運ぶ仕事があったので自信満々にトッキーに宣言したが、あまり相手にされなかった。

 

「う、腕に力が入らない……」

 

「筋肉痛かよ……」

 

 

 結局偶然通りかかったタカ兄に荷物を運んでもらうことになった……何でタカ兄の方が登ってたのに筋肉痛になってないんだろう……日頃の運動量の違いなのかな?




コトミはまず腕を鍛えましょう

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