桜才学園での生活   作:猫林13世

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相手にならないだろ……


記憶力の調査

 朝からしゃっくりが止まらない……別に生活に支障を来すレベルではないので困らないのだが、こうもずっとしゃっくりが止まらないと気になって仕方が無い。

 

「萩村、大丈夫か?」

 

「えぇ、業務に支障は――」

 

 

 ない、と言おうとしてまたしゃっくり。これはどうにかして止めないと……

 

『プーン』

 

「虫か」

 

 

 どうにかしてしゃっくりを止めないとと考えていたら、生徒会室に虫が入ってきた。会長がその虫を視線で追い――

 

「そこだ!」

 

『ビクン』

 

 

 私の胸に停まった虫を潰そうと軽く叩く。そのタイミングでしゃっくりを発動してしまったため、虫は逃げてしまった。

 

「萩村は感じやすいんだな」

 

「しゃっくりですよ」

 

 

 あらぬ誤解を受けてしまったが、それでもまだしゃっくりは止まらない。これはどうにかして止めないと周りに勘違いされてしまうのでは……

 

「お疲れさまです」

 

「おぉタカトシ。頼んでおいたものはできたか?」

 

「えぇ。これが予算委員会からの報告書で、こっちが風紀委員からの嘆願書。そして新聞部から押収した盗撮写真一覧です」

 

「相変わらず仕事が早くて助かる」

 

 

 今、最後に不穏な言葉が無かったか?

 

「タカトシ、その盗撮写真一覧って――」

 

『ガタン』

 

「っ!?」

 

 

 何、って聞こうとしたら金庫から茶筒が落ちて大きな音が鳴った。

 

「今のはしゃっくりだよ! ビビりじゃないよ!!」

 

「しゃっくり止まってるじゃん」

 

「え?」

 

 

 タカトシにツッコまれて漸く、私は今の衝撃でしゃっくりが止まったことに気付く。

 

「良かったな萩村。そう言えばパリィに呼ばれてたんじゃなかったのか?」

 

「そうでした。そろそろ時間なので私はこれで」

 

 

 元々タカトシが戻ってきたら行くと答えていたので、これはこれでいいタイミングだったのかもしれない。

 私はパリィと合流する為に教室に向かい、パリィが学園の裏庭を案内して欲しいというので案内することに。

 

「そういえば日本の春ってどんなイベントがあるの?」

 

「パリィ、時には自分で調べることも大切だよ」

 

「ナルホドー」

 

 

 別に説明するのが面倒だとか思ったわけではない。本当に自分で調べる癖を付けなければ、いずれはコトミのように自分では何もできなくなってしまうと思ったからだ。

 

「えっと『春のイベント』……と」

 

 

 パリィはスマートフォンを取り出して春のイベントを検索する。今の時代はすぐに調べられるから便利よね。

 

「スマフォのゲームイッパイ出てきた」

 

「(これも文化だろうか……)」

 

 

 文明の利器の発展を考えていたら、それに付随する文化が出てくるとは……

 

「つまり日本の春のイベントは、限定ガチャなんだね」

 

「断じて違う」

 

 

 そもそもそれはサブカルチャーだ。日本古来の春のイベントでは断じてないのだが、力強く否定するのもそれはそれで違う気がしてしまうのは、私も現代っ子だということなのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会業務の合間で、アリアがちょっとした雑談のネタとして話を振ってきた。

 

「記憶トレーニングの中に、過去の夕食メニューを思い出すっていうのがあるよね~」

 

「私自信あるぞ」

 

 

 私はそう宣言して、自分の家の夕食メニューを発表していく。

 

「昨日は肉団子とエリンギの丸焼き。一昨日はいなりとひじきの煮物。一昨昨日はアワビとひじき――」

 

 

 すらすらと言えたが、私は別のことが気になってしまう。

 

「ウチって欲求不満なのかな?」

 

「今の空気で判断してください」

 

 

 三人が冷ややかな目をしているので恐らくそう言うことなのだろう。

 

「ち、違うぞっ!? 夕食の用意をしてるのは母だ! 断じて私が欲求不満なわけではない!」

 

「それはそれで問題発言なのでは?」

 

「はっ!?」

 

 

 母が欲求不満なんて生徒会室で声高らかに宣言することではなかった……

 

「と、とりあえず記憶力の方は問題ないからな」

 

「ですね。それだけすらすら言えれば問題ないでしょう」

 

「ちなみにタカトシ君は?」

 

 

 アリアが話題を逸らす為にタカトシに話を振ってくれたお陰でこれ以上追及されることは無かったのだが、タカトシは二週間前まですらすらと答えたのを受けて、こいつは何も敵わないんだなと思い知らされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろゴールデンウイークということで、私は何か計画したいなーと考えている。柔道部の練習があるのであまり遠出はできないけど、何処にも出かけないと言うのももったいない気がするのだ。

 

「ゴールデンウイーク、どこか行こーよ」

 

「行くって何処に?」

 

 

 ノルマの勉強を終わらせているので、タカ兄からもプレッシャーをかけられることない。ノンビリアニメを見ながら話しかけたので、私は特に何処かを意識していたわけではない。

 

「そーだなー」

 

 

 何かいいアイデアが無いかとテレビに視線を向けると、ヒロインが敵に追い詰められて崖にぶら下がってるシーンがやっていた。

 

「私、前からボルダリングやってみたかったんだよね」

 

「アニメみたいなことは無理だぞ」

 

「分かってるって。でもやってみたかったのは事実だから」

 

「またアリアさんに相談してできる場所が無いか聞いてみるか」

 

「お願いタカ兄」

 

 

 こういう時お嬢様のアリア先輩とコネがあるのは便利だなって思いながら、シノ会長たちが来たらボルダリングに集中できないような気もする。

 

「(でも、大勢いた方が楽しそうだしね)」

 

 

 せっかくのゴールデンウイークだし、勉強以外もしたいと思ってたからワイワイ盛り上がれるのは嬉しい。とりあえず来る日まで握力を鍛えておこうっと。




コトミのやる気はろくでもないところから

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