桜才学園での生活   作:猫林13世

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気になってしまうのでしょう


勘違いの要因

 今日は珍しく宿題も早く終わり、小テストでも上々の結果だったので、タカ兄から許可をもらいゲームをしている。

 

「普段からこれくらい結果を出してくれていれば、ゲーム禁止なんて言わないんだがな」

 

「それは難しい相談だよ、タカ兄」

 

 

 今回の小テストは偶々覚えていた箇所が出題されたから点数が採れただけで、普段から勉強していない私にとって奇跡でしかないのだ。これを毎回期待されても無理な話なのだ。

 

「お義姉ちゃんもだけど、タカ兄はもっと厳しいからなぁ」

 

「お前は身内だからな。多少厳しくしても問題ない」

 

「問題大ありだよ! あんなに厳しくされたら興奮して集中できなくなっちゃうし」

 

「お前はまず、その煩悩をどうにかした方がよさそうだな」

 

「こればっかりはどうにもならないと思うけどね」

 

 

 お義姉ちゃんにも言われたことがあるけど、私のこれは死んでも治らないだろうと言い切れる自信がある。そんな自信いらないとも思うけど、これが私なのだから仕方が無いだろう。

 

「そういえばタカ兄、この間動物園に行ったんでしょ?」

 

「あぁ、義姉さんの忘れ物を取りに行くついでにって話だったんだがな」

 

「それで、お義姉ちゃんの忘れ物ってなんだったの?」

 

「ライオンの額の傷を描き忘れたから見に行きたかったらしい」

 

「ふーん」

 

 

 お義姉ちゃんなら一人で出かけられそうな気もするけど、確かに動物園に女子高生一人なんて、変な男たちに狙ってくださいと言ってるようなものだ。まぁ、動物園に男だけで来てる確率なんてかなり低いだろうけども。

 

「てか、タカ兄がこの時間にノンビリしてるのも珍しいね」

 

「お前が真面目に勉強してくれれば、何時もこの時間はゆっくりできるんだがな」

 

「そ、ソウナンダー」

 

 

 タカ兄から流れてくるプレッシャーから逃れる為、私は視線を逸らす。こればっかりは何回されても慣れないものだ……

 

「そういえばタカ兄、お義姉ちゃんが言ってたんだけど」

 

「何だ?」

 

「サクラ先輩とゴールイン間近って本当?」

 

「なんだそれ?」

 

「動物園デートで距離が縮まったって聞いたけど」

 

「デート? 何の話をしてるんだ?」

 

「あれー?」

 

 

 お義姉ちゃんから聞いた話では、タカ兄とサクラ先輩が二人っきりの時間があったとかなんとか。それで二人の距離が近づいたって聞いたんだけど、タカ兄は恍けてる様子も無いし、お義姉ちゃんの勘違いだったのかな?

 

「ぎゃー停電!?」

 

 

 そんなことを考えていたら視界が真っ暗になって、私は大声を出してしまう。

 

「停電くらいで大袈裟な」

 

「セーブしてない……」

 

「これからはこまめにセーブするんだな」

 

「うぅ……私の一時間が」

 

 

 せっかくタカ兄から許しが出ていたのに、この一時間を無駄にしてしまった……次に私が小テストで良い点数を採れる日が何時なのか、私にも分からないって言うのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この間動物園に出かけて以降、私はタカトシが気になって仕方が無い。いや、以前から気にしてはいたのだが、森との距離が近づいたような気がしていたたまれないのだ。

 

「あの、さっきから何ですか? 人のことをじろじろと眺めて」

 

「いや、何でもないんだ」

 

 

 作業中もタカトシの顔を見ていたのがバレていたようで、タカトシから疑いの目を向けられてしまう。

 

「シノちゃん、さっきから誤字が多いよ?」

 

「むぅ……集中できていないようだ」

 

 

 一息入れる為に缶コーヒーを手に取り飲もうとしたのだが――

 

「それは俺のです」

 

「ブーっ!?」

 

 

――タカトシの缶コーヒーだったようで、私は慌てて吹き出す。だって、ブラックコーヒーは飲めないから。

 

「シノちゃん、汚いよ~」

 

「す、すまん……」

 

「書類は無事です」

 

「は、萩村? 視線が鋭すぎないか?」

 

 

 タカトシと間接キスをしたということなのか、萩村が私を見る目が鋭すぎる気がする……

 

「兎に角会長はタカトシの缶コーヒー代を弁償した方が良いのでは?」

 

「そ、そうだな……幾らだ?」

 

「いえ、もうほとんど空だったので気にしなくて良いですよ」

 

 

 タカトシは空になった缶をゴミ箱に持っていき、ついでに外で聞き耳を立てていた畑を持ってきた。

 

「『会長と副会長が熱い関節キス!?』って見出しはどうでしょう?」

 

「関節ではなく間接だ! 私はタカトシにホールドされてないからな!?」

 

「シノちゃん、そのツッコミは違うと思うよ~?」

 

「そうか?」

 

「それで真相は?」

 

 

 畑がぐいぐい来たので、私は今の一連の流れを説明した。

 

「つまり、心ここに在らずの会長が間違って副会長の缶コーヒーを口にして噴き出したと」

 

「要約するとそんな感じだ」

 

「ですが、何故心ここに在らずだったのですか? せっかく再任したのにまた陰でいろいろ言われてしまいますよ?」

 

「噂を流してるのはお前だろうがー!」

 

 

 畑が率先して『お飾り会長』とか『副会長の操り人形』とかいい加減な噂を流してるせいで、一部の生徒からは本当に私がお飾りなんじゃないかと疑われている。これでも頑張って仕事してるんだがな……

 

「兎に角、会長が津田副会長のことを意識し過ぎて思わず缶コーヒーを盗んでしまったってことにしておきます」

 

「事実無根だ! 新聞部は当面の間活動休止だ!!」

 

「それだけはご勘弁を!?」

 

 

 畑を撃退してホッと一息吐こうとして――

 

「それは私のコーヒーだよ?」

 

「またやってしまった……」

 

 

――今度はアリアのコーヒーを飲んでしまったのだった。




相変わらずの畑クオリティー

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