桜才学園での生活   作:猫林13世

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デートにはならないだろうが


新手のお誘い

 コトちゃんはお友達と勉強会ということで今日はタカ君と二人きりのはずだったのだが、何故かシノっちが私とタカ君の間に座っている。

 

「シノっちは何の用でここに?」

 

「私のことは気にするな」

 

 

 気にするなと言われても気になるのですが……まぁ、それじゃあいない者として話をしましょう。

 

「この前写生大会で動物園に行ったの」

 

「そうなんですか」

 

「でも、その動物園に忘れ物しちゃって」

 

「大変ですね」

 

「一人で行くのもアレだし、付き合って?」

 

「新手の誘い方だとっ!?」

 

 

 タカ君ではなくシノっちが驚いた表情を浮かべているが、別にシノっちは誘ってないんだけどな……

 

「――というわけで動物園にやってきた」

 

「何故全員で?」

 

 

 タカ君が呆れ顔をしているが、私とシノっちは結構ノリノリ。スズポンも楽しみにしてる様子だし、ユウちゃんや青葉っちも既に盛り上がってる様子。

 

「タカトシ君、諦めよう」

 

「そうだな……」

 

「私、動物園初めてかも」

 

 

 サクラっちに慰められ肩を落とすタカ君の隣で、アリアっちが衝撃の告白。

 

「それって、やっぱ家で飼ってるからっすか!?」

 

「いや、本当に初めてなんだけど」

 

「アリアはお嬢様だからな。幼少期にこのような場所に来れば誘拐の可能性もあっただろうし」

 

「今日は大丈夫なんすか?」

 

「最強の防犯対策、タカ君がいるから大丈夫じゃない?」

 

 

 動物園の敷地内ならタカ君が何とかできるだろうし、外には七条家のSPが控えているので大丈夫でしょうね。

 

「というか、忘れ物を取りに来ただけで何故これだけの人数を……」

 

「そこはほら、天草さんと魚見会長だから」

 

「はぁ……」

 

 

 既にノリノリで動物を見ている私たちの後ろで、タカ君とサクラっちがイチャイチャしている……

 

「チーターは最高速度100㎞なんですよ」

 

「はやーい」

 

 

 スズポンの雑学にアリアっちが感心する。せっかく動物園に来ているのだから少しは楽しもうと思って欲しいのですが、タカ君やサクラっちにとっては、私たちの引率のような立ち位置になってしまうのかもしれませんね。

 

「雑学なら負けないぞ! ここにいるのはチンパンジー。チンパンジーの交尾時間は10秒らしいぞ」

 

「「「はやーい!!」」」

 

「喰いつき度!」

 

「はぁ……」

 

「まぁまぁ、楽しんでるって思おうよ」

 

「だな……」

 

 

 シノっちの雑学に私、アリアっち、青葉っちの三人が喰いつき、スズポンが納得いかない様子で呟いている後ろで、またしてもタカ君とサクラっちが呆れている様子……

 

「(シノっち)」

 

「(何だ?)」

 

「(タカ君とサクラっちがくっつき過ぎだと思いませんか?)」

 

 

 ここで私はシノっちを炊き付けてタカ君の両側へ移動する。

 

「動物を擬人化すると、キャラ決まって来るよね」

 

「うむ」

 

 

 私たちがタカ君の両脇に移動したからか、サクラっちはそそくさと私たちから離れた。

 

「トラはわんぱくでパンダはおっとり」

 

「そしてヘビはおしゃぶり上手だ!」

 

「くだらないことを人を挟んで話すな」

 

「「ヒェ!? ご、ゴメンなさい……」」

 

 

 タカ君からカミナリを落とされ、私たちはすぐさまタカ君の側から離れる。周りに人もいるので何時もより抑えめではあったが、それでも威力に変わりはない。だから余計に怖く感じたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっちで津田先輩が会長たちを怒ってる様子だが、こっちはこっちで楽しもう。

 

「今日は風が強いっすね。ズボン履いてきてよかったっすよ」

 

「七条先輩と森さんがスカート押さえてるわね」

 

「スズ先輩もズボンっすね」

 

 

 何だかスズ先輩とコンビを組まされる回数が多い気がしますが、一緒にいて楽な先輩ではあるので私的には問題は無い。

 

「それにしても、レッサーパンダは凄い人気ね……まったく見えないわ」

 

「だったら――」

 

 

 私はスズ先輩を肩に載せて立ち上がる。

 

「ズボンで良かったっすね」

 

「複雑……」

 

 

 肩車されて複雑な表情を浮かべているスズ先輩。恐らく子供っぽいという感情と、レッサーパンダを見れて嬉しい感情が同時に襲ってきているのだろう。

 

「青葉さんはウサギと触れ合ってるみたいっすし、私たちも行きます?」

 

「そうね。ウサギも可愛いし」

 

 

 会長に言われて来ただけなのだが、意外と動物園を楽しめていることに気付き、私は今更ながら会長にお礼を言わなければと思った。

 

「会長、今日は誘ってくれてありがとうございました」

 

「良いの良いの。そのお陰ですね毛フェチ歓喜の光景ができるんだって気付けたし」

 

「?」

 

「まだ怒られ足りないと?」

 

 

 またしても会長は津田先輩に怒られるようなことをしたらしい。小動物に恐怖を与えることなく会長にのみ怒気を向けるなんて、普通の人間にはできない荒業っすね。

 

「スズ先輩がウサギと触れ合ってると、幼女っぽさが増しますね」

 

「はったおーす!」

 

「褒めたんすよ?」

 

「語彙力がコトミレベルね、広瀬さんは」

 

「まぁ、勉強嫌いっすから」

 

 

 コトミの成績程酷くはないと言えない自分の成績を思い出しとりあえず誤魔化す。ここで余計なことを言えば帰ったら勉強だとか言われるだろうし……

 

「あっ。ところで会長の忘れ物っていったい何だったんすか?」

 

「あぁ、モデルのライゾウ君の額の傷を描き忘れてね。さっき描き足してきた」

 

「物じゃなかったの!?」

 

「だって、一人で動物園に来て、ただただ額の傷を描くなんて恥ずかしいじゃないですか」

 

「その所為でタカトシの機嫌が悪くなってるんだが……」

 

「シノっちだってノリノリだったんですから、同罪ですからね」

 

 

 会長コンビはまたしても津田先輩を怒らせたらしい。ふれあい広場からそれ程時間が経ったわけじゃないのにな……




広瀬さんの語彙力が……

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