桜才学園での生活   作:猫林13世

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何故それが通ると思った


疑似心霊現象

 生徒会室には私一人。会長と七条先輩は校内の見回り、タカトシは小山先生に相談されてヨガ同好会の活動教室に行っている。

 

「一人って久しぶりな気がする」

 

 

 ゆっくりと生徒会室を眺めていると、ふと壁が気になった。

 

「このスペースに何か物を引っかけるものがあればいいのに。何でも良いんだけどな……」

 

 

 何が気になったのかはすぐに分かったので、私はそれを解消できそうな物を生徒会室で探したが、残念ながら見つけることはできなかった。

 

「私に任せて!」

 

「ネネ、一応ノックしてから入ってきなさいよね……てか、聞いてたの?」

 

 

 これが室内にいたのがタカトシだったらネネの盗み聞きにも気づけたのだろうが、私に気配察知の能力は無い。だがネネ相手なら驚くこともせずに対応できる。

 

「それで、何を任せればいいの?」

 

「スズちゃんの悩み、この私がパパっと解決しちゃうから」

 

「えーネネが……」

 

 

 付き合いが長いので、ネネがすることをどうしても疑ってしまう。なにせ学力低下する程機会弄りに没頭するネネだ。またろくでもない物を取り出すに違いない。

 

「この吸盤バイブを壁に貼り付けて――」

 

「何でも良いと言ったが、そんな物認められるかー!」

 

 

 やはり最低な物を取り出したので、私はネネに説教する。

 

「こんな物が生徒会室にあったら品位を損なうだろうが! 来客だってあるんだから」

 

「そうだね……」

 

「早いところ撤去しなさい」

 

「分かったよ」

 

 

 せっかく私の悩みを解決してくれようとしたのだが、これでは別の悩みが発生する。私はネネに撤去を命じ、ネネも素直に従ってくれた。

 

「あ、あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「取れなくなっちゃった……」

 

「えぇ!?」

 

 

 ネネが必死に引っ張っているけども、吸盤が外れなくなってしまった。こんなところ他の人に見られたら――

 

『タカトシも同じタイミングだったか』

 

『えぇ。ヨガ同好会の様子を見て欲しいと小山先生に頼まれてまして』

 

『何でタカトシ君に?』

 

『さぁ?』

 

「まずい、会長たちが帰ってきた」

 

「どうしよう」

 

 

 私とネネがどうにかして誤魔化そうとし、何か策は無いかと室内を見回す。すると会長が家庭科で作ったと思われるさくらたん人形が目に入った。

 

「これをぶら下げておこう」

 

「(何処に刺さってるんだろう)」

 

 

 さくらたん人形がぶら下がったのは良いが、どうやってぶら下がってるんだろうか……だがそれを追求したら負けな気がする。

 

「何だ、轟も来てたのか」

 

「お邪魔してます。それにしても会長、この人形、良くできてますね」

 

「ああ! 私が作った人形の中でも五本の指に入る出来だ!」

 

「今入ってるのは一本ですけどね」

 

「おい!」

 

 

 ネネが余計なことを言ったので、私は思わずツッコミを入れる。すると七条先輩が机の上に置きっぱなしのスイッチに気付いた。

 

「これ、何のスイッチ?」

 

 

 七条先輩がスイッチを入れると――

 

『ブルブルブルブル』

 

「ポルターガイストだ!?」

 

 

――ぶら下がっていたさくらたん人形が震えだし、会長も震えだした。

 

「これはどういうことだ?」

 

「実は――」

 

 

 さすがに誤魔化せないということで、ネネがさくらたん人形を外し事情を説明する。

 

「――というわけです」

 

「早いところ撤去しなさい。私は職員室にレポートを提出してくるから、その間にな」

 

「分かりました」

 

 

 余程怖かったのかは分からないが、会長はそそくさと生徒会室を出ていく。

 

「ビックリしたよ~。急にさくらたん人形が震えだして」

 

「吸盤バイブなんですよ~」

 

「それがさくらたん人形を震えさせた原因だったんだね。シノちゃんじゃないけど、本当にポルターガイストかと思っちゃった」

 

「津田君は気付いてたみたいだけどね」

 

 

 そう言えばタカトシは驚くこともしなかったし、ネネの説明を聞く前から知ってたような感じだったわね。

 

「轟さんがいる時点で、何か余計なことをやらかしたんだろうなとは思ってた」

 

「言い返せない自分が恥ずかしい」

 

「それに震えだした時、スズは驚いてなかったから事情を知ってるんだろうなって」

 

「わ、私のこと知ったようなこと言うな!」

 

 

 何だか恥ずかしい気分になったので、私は頬を膨らませてタカトシから視線を逸らす。

 

「みてみて~。肩たたきができる」

 

「さっさと片付けろ!」

 

 

 ネネがふざけ出したので、私はネネを怒るフリをして気持ちの整理をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室に戻ってきたら、轟の姿は無くなっていた。ちゃんと片付けたようで、壁には吸盤跡があるが実物は無くなっている。

 

「それにしても、何故あんなものが?」

 

「ここに何か物を引っかけられる何かがあれば良いなと思ったところにネネが来まして」

 

「それであの吸盤バイブか……だが、確かに何かあれば便利だな」

 

「今度何か用意しますよ」

 

「そうだな。また吸盤バイブを持って来られたら面倒だしな」

 

「というかシノちゃん。さくらたんに挿入れる穴作ってたんだね」

 

「で、出来心だ! 別にそういう目的ではないからな!?」

 

 

 自分が不利な状況になりそうな気がして、私は慌てて弁明をする。それが余計に怪しいと思われると分かっているのだが、どうしても否定してしまうのだ。

 

「とりあえずこれはちゃんと持ち帰ってくださいね? 生徒会長が率先して学業に不要な物を持ち込んでるなんて言われたくないでしょうし」

 

「そうだな」

 

 

 この間轟のフィギュアを注意したばかりだし、何時までも置いておいたら何を言われるか分からないからな。

 

「今日持ち帰るとしよう」

 

「そうしてください」

 

 

 やはりどっちが生徒会長か分からない感じだが、これはこれで悪くないのかもしれないな。




普通なら何かあると思うだろうから仕方が無い

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