桜才学園での生活   作:猫林13世

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解決できてないような気が……


独特な解決方法

 生徒会室で作業をしていたのだが、横島先生がやってきて急にぼやきだした。こういうのはタカトシが処理してくれるだろうと思っていたのだが、タカトシは一切横島先生に視線を向けることなく書類を処理している。そしてだんだんと横島先生のぼやきが大きくなってきたので、アリアと萩村が私に視線を向けてきた。

 

「……横島先生。何もしないのでしたら出て行ってくれませんか? 私たちだって暇じゃないんですから」

 

「そんなこと言わなくてもいいだろ! 私の相談に乗ってくれよ!」

 

「相談? さっきからよく分からないことをぼそぼそと言ってただけじゃないですか」

 

 

 実際何を言っているのか聞き取れなかったし――聞き取ろうともしていなかったが――横島先生が相談しに来たなど分かるはずもない。

 

「それで、横島先生は何を相談しに来たんですか? 男を紹介してくれとか言うのは無理ですからね」

 

「私だってそこまで落ちぶれてないわ! そうじゃなくて、最近肩こりが酷くてな……」

 

「肩こりですか?」

 

 

 こう言うのは私ではなくアリアに相談しろと思いつつも、私は横島先生の肩こりの原因を追究することに。

 

「どのように凝ってるんですか?」

 

「何だか錘が乗ってるようにダルいんだ……」

 

「錘って、鉄球くらいですか?」

 

「いや、この重さはボウリング玉だな」

 

「それでしたら、肩ずんされてると思うのはどうでしょう?」

 

 

 ボウリング玉の重さは人の頭の重さとイコールだと言われている。常に誰かに肩ずんされていると思えば、ダルさも少しは緩和されるのではと思って提案したのだが――

 

「やったー!」

 

 

――まさかここまで効果があるとは思っていなかった。

 

「解決したのでしたらもう良いですよね? まだ処理しなきゃいけない書類が多いので」

 

「厄介払いされてる感は否めないが、少しは気分が楽になったからな」

 

 

 そう言って横島先生は生徒会室を後にする。

 

「さて、それでは残りの仕事を――」

 

「これで最後ですね」

 

 

 私たちが横島先生で気を散らしてるうちに、タカトシがほぼほぼすべての書類を処理していた。

 

「またタカトシに仕事を押し付けてしまったな……」

 

「いえ。横島先生のことを押し付けたので、これでお相子かと」

 

 

 あの人を押し付けてる自覚があったのか……まぁ、普段私たちが横島先生を押し付けてるので、文句は言えないがな……

 

「ん?」

 

「どうしました、会長?」

 

「いや、改めて観察すると、この机随分と黒ずんでるなと」

 

「人が使うと、いろいろと擦れて汚れちゃいますからね」

 

「うむ……」

 

 

 どうにかして綺麗にならないかと考えていたら、ふと昔聞いた雑学が私の中に降りてきた。

 

「黒ずむと言えば、肛門も紙で拭いているとくすむらしいな」

 

「その雑学必要でした? タカトシが物凄い目で睨んできてるんですけど……」

 

「アリア、見回りに行くぞ!」

 

「そうだね! スズちゃんも一緒に!」

 

「えっ、私も?」

 

 

 アリアと萩村の腕を掴んで逃げるように生徒会室から出ていく。あの部屋の主は一応私なのだが、タカトシの不機嫌オーラを浴び続けるのは滅入るからな……

 

「シノちゃん、どうしてあんな雑学を?」

 

「ふと思い出しただけだ……」

 

「自分の中に留めておいてくださいよ……」

 

「悪かった」

 

 

 とりあえず見回りを済ませ、生徒会室に戻ってる頃にはほとぼりも冷めているだろう。そう考えて見回りを済ませると――

 

「机が綺麗になってる」

 

「何故か皆さんが見回りをしてくれましたので、机の掃除をしておきました」

 

「新品同然だね! さすがタカトシ君」

 

「普通に拭いただけですけどね」

 

 

 謙遜してるように聞こえるが、タカトシは普通に拭いただけなのだろう。だがまぁ、これで気分新たに仕事に取り組めるな!

 

「あっ会長。さっきの発言、しっかりと反省してくださいね」

 

「う、うむ……」

 

 

 最近タカトシが私を怒る時、あえて「会長」と呼んでくるんだよな……少しは自覚しろというわけなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田家でのんびりとテレビを観ているのだが、タカ君は相変わらず忙しそうにしている。

 

「タカ君、私も手伝おうか?」

 

「義姉さんは少しゆっくりしててください。さっきまでコトミの宿題を見てたんですから」

 

「もうそれ程大変じゃないよ」

 

 

 コトちゃんも多少は成長してきているので、一から十まで教えなくても理解してくれる。もちろん、これを続けていかないと定期試験は壊滅的な結果なので、私たちも気を抜けないのだが。

 

「つかれたー……」

 

「コトちゃん、勉強は学生の仕事なんだから、ちゃんとやらないと」

 

「私は勉強にむいてないんですよ……」

 

「じゃあタカ君の代わりに家事する? もっとむいてないでしょ?」

 

「それを言われると困っちゃうんですけどね~……って、腕がしびれた!? 感覚がない」

 

 

 寝っ転がってテレビを観ていたコトちゃんだが、どうやら腕がしびれてしまったようだ。

 

「そんな風に腕に頭を乗せてるから……って、私もしびれた!?」

 

 

 正座をしていたので足がしびれてしまった。私はしびれを解消する為に足を延ばす。

 

「的確に私のデリケートゾーンを踏んできている!? 本当に感覚無いんですよね?」

 

「何かに当たってるとは思ったけど、コトちゃんのデリケートゾーンでしたか」

 

「微妙にこすれて気持ちいぃ……」

 

「ここか? ここがいいのか――って、タカ君? その拳は何?」

 

「さて、何でしょうね?」

 

 

 タカ君が怒ったのでおふざけはここまで。私とコトちゃんはしびれてる箇所など忘れて背筋を伸ばして座り直したのだった。




おふざけもほどほどにしないと……

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