桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシが管理すれば問題ないんですけど


安全な管理場所

 見回りに行くために生徒会室の鍵を掛けようとしたが、上手く鍵が回らない。何度か試したがどうしてもだめだ。

 

「む……」

 

「シノちゃん、どうしたの?」

 

「鍵が壊れたようだ」

 

「それは困りましたね……」

 

 

 それ程見られて困るものはないが、生徒会の書類などを見られたらそれなりに困ってしまう。

 

「誰か一人中に残ればいいのでは?」

 

「そうかもしれないが、一回部屋の外に出たのに居残りは、何だか残念な気分にならないか?」

 

「別にいいのでは? 何なら俺が残ります」

 

「それは駄目だ!」

 

 

 今回タカトシと見回ることになっているのは私、ここでタカトシを生徒会室に残すという選択はあり得ない。

 

「じゃあ誰か都合が良い奴が――」

 

「タカ兄、ちょっとお願いが」

 

「こいつは駄目だな」

 

「?」

 

 

 タイミングよくコトミが現れたが、タカトシは留守番に適していないと判断した。まぁ、妥当な判断だろう。

 

「そういえば学園長室に使ってない金庫がありましたね。相談して借りてきましょうか」

 

「何故タカトシが学園長室の事情を――あぁ、横島先生関連か」

 

 

 タカトシは横島先生を捕まえ、説教してから学園長室に連れていくということが多い。その時に室内の様子を観察していたのだろう。

 

「それでは、私とタカトシが学園長に事情を話して金庫を貸してもらうから、アリアと萩村は見回りを頼む」

 

「了解だよ」

 

「分かりました」

 

「あの、私のお願い事は?」

 

「小遣いの前借は却下だ」

 

「まだ何も言ってないって!? まぁ、タカ兄なら何でもありか……」

 

 

 コトミのお願い事は前借だったのか……また何かやらかして酌量をお願いしに来たのかと思ったんだがな……

 

「では、コトミは生徒会室の前に立っててくれ。誰か来たら不在だと言っておいてくれ。そうすれば私から少し出してやろう」

 

「本当ですか!?」

 

「会長、甘やかさないでください」

 

「なに、本当に手間賃程度だから気にするな」

 

 

 ジュース一杯くらいなら安い物だろう。中に人を入れるわけにはいかないので、コトミに立ち番を任せるくらい良いだろうと思い、私たちはそれぞれの目的の為に生徒会室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君とシノちゃんが学園長から金庫を借りに行ったのだけど、使っていないからということで譲ってもらったようだ。

 

「それでシノちゃん、コトミちゃんにいくら渡したの?」

 

「五百円だ」

 

「結構渡しましたね」

 

 

 スズちゃん的には多いみたいだけど、私からすれば少し可哀想かなって思う金額。だがタカトシ君は頭を押さえている。

 

「どうしたの?」

 

「会長、渡し過ぎです」

 

 

 そう言ってタカトシ君は財布から五百円を取り出してシノちゃんに手渡す。

 

「いや、私からの気持ちだから気にするな」

 

「こう言うのが癖になられると困るんです。家に帰ってしっかりと言っておきますので」

 

「むぅ……じゃあタカトシから五百円は受け取るが、せめて百円くらい取っておいてくれ」

 

 

 タカトシ君から五百円を受け取り、シノちゃんは代わりに百円を取り出す。タカトシ君は一瞬考えたが、シノちゃんの気持ちを無碍にするのは申し訳ないと思ったのか素直に受け取った。

 

「それで会長、この金庫はちゃんと機能するんですか?」

 

「それは問題ない! 無理に動かそうとすれば――」

 

 

 そう言うとシノちゃんが金庫を動かそうとした。

 

『ビー』

 

「この様にブザーが鳴って教えてくれる」

 

「なる程、セキュリティ面も万全ですね」

 

「後は暗証番号を決めればすぐにでも使える」

 

「どうやって決める?」

 

「分かり難い番号が良いですが、あまり複雑だと忘れてしまいそうですよね」

 

 

 スズちゃんの言葉に、私とシノちゃんは考え込む。タカトシ君なら忘れることなんてないだろうけども、私たちはそういうわけにはいかない。

 

「シノちゃん、何か良い数字ないかな?」

 

「うーむ……こういう時、昔の癖でおかしな数字ばかり思いついてしまうな」

 

「何となく分かる~」

 

 

 そうして話し合った結果、タカトシ君が数字を管理するということで複雑な番号に決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑さんが金庫の中身を探ろうとして金庫の指紋を採取しようとしていたが、そんなことはお見通しだ。使用した後は常に指紋を拭きとっているので、畑さんの野望は簡単に退けられた。

 

「タカトシが金庫の掃除を徹底するべきだと言っていたのは、こう言うことを想定していたわけか」

 

「あの人の行動はある程度読めますから」

 

「普通の人には難しいと思うがな」

 

 

 そう言いながらシノ会長は腕章を金庫にしまおうとする。

 

「それもしまうんですか?」

 

「大事な物だろ?」

 

「ですが、それ破れてますよ」

 

「もう古いからな……」

 

 

 新しいのを作るのにも予算が掛かる。シノさんがどうするか悩んでいるようなので、俺はポケットから腕章を取り出し差し出す。

 

「俺の予備で良ければ使ってください」

 

「いいのか?」

 

「えぇ。完全に新品、というわけには行きませんが、使ってないので問題ないと思いますよ」

 

 

 所謂新古品というやつになるのだろうか。シノさんに予備の腕章を渡す。

 

「それじゃあそれをしまって帰りましょうか」

 

「いや、これは大事に持っている!」

 

「はぁ」

 

 

 さっき大事な物はしまうとか言っていたような気もするが、とりあえずシノさんの気持ちが変わったということで納得しておこう。

 

「というか、アリア先輩とスズはどうして膨れてるんですか?」

 

「別に、アンタなら聞かなくても分かるんじゃないの?」

 

 

 別に俺の完全なる私物というわけでもないのだから、そこまで嫉妬しなくてもいいと思うだけどな……




コトミの信頼度は……

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