桜才学園での生活   作:猫林13世

776 / 871
相変わらずチョロイ……


取材の申し込み方

 最近津田先生のエッセイ以外の記事に興味がないのか、エッセイが掲載されていない号は見向きもされなくなってしまった。このままでは新聞部はただの編集者になってしまう恐れがある。そうならない為にも、何かスクープを探さなければな……

 

「――というわけで会長、インタビューさせてもらえませんか?」

 

「いきなりだな。そう言うのはちゃんとアポを取ってやりなさい」

 

 

 天草会長の秘密でも暴こうと思ったのだが、案の定断られてしまった。

 

「(どうすれば……)」

 

 

 私が考えを纏めている横を津田副会長が会釈をして通り過ぎる。

 

「ねーねー津田君。密着取材させてー」

 

「ちょっとまて。私取材受けてもいいぞ」

 

「というか、物理的に密着する必要は無いでしょうが」

 

 

 津田君に密着することで天草さんに嫉妬をさせインタビューを受けさせる作戦、大成功。ついでに津田君にもインタビューしておきましょう。

 

「津田君の好きな物は何ですか?」

 

「いきなりですね……好きな物?」

 

 

 あまり物事に執着しないらしいので、好きな物と言われてもピンとこない様子。こんな津田副会長は珍しいですね。

 

「そんなに真剣に考え込まなくても、パッと浮かんだもので良いですよ?」

 

「じゃあカレーライスで」

 

「タカトシは人妻好きだったのかっ!?」

 

「はい?」

 

 

 天草さんが何やら聞き間違えたようだが、ここは面白そうだから黙っていよう。

 

「だって『加齢ワイフが好き』だって」

 

「どんな耳してるんですかね? そんな事言ってるわけないだろ」

 

 

 聞き間違いを掲載してやろうかと思いましたが、津田君から物凄い殺気を飛ばされメモすることができなかった。

 

「てか、何故カレーライス? 津田副会長がカレー好きなんて情報、私は知りませんが」

 

「別にこれといって好きなわけではないです。ただ今晩はカレーにしようかと考えていたので」

 

「なる程、津田家は今晩カレーですか」

 

 

 津田副会長の料理の腕は、私も十分知っている。何度かご馳走になっているし、七条家が本気で料理人として雇えないかと動いているという情報もある。まぁ彼の実力を考えれば、料理人というより本社重役の方が似合っているでしょうけども。

 

「ちなみに会長の好きな物は?」

 

「甘い物全般だ」

 

「そんなに食べてたら太りますよ?」

 

「き、気を付けてるから大丈夫だ!」

 

 

 この反応……どうやら天草さんは少し太ったようですね。この情報はスクープになり得るので大事に持ってかえって――

 

「会長、事実無根の記事を書こうとしてますよ」

 

「ちょっと、話し合おうか?」

 

「あっ……」

 

 

――私のメモ帳を津田副会長に取り上げられそのまま会長に突き出された。

 

「誰が太ったなんて言った! 私は体重管理はちゃんとしてるんだからな!」

 

「では会長は何キロなのでしょうか?」

 

「乙女に身体の数字を聞くんじゃない!」

 

 

 久しぶりに天草さんにカミナリを落とされましたが、津田君のカミナリを体験している私からすれば、この程度驚くに値しませんね……自慢することではないかもしれませんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 英稜の生徒会は女子四人。そう言うこともあってか、生徒会室内では結構気持ちが緩みがちになってしまう。

 

「広瀬さん、何度も言ってるけどその恰好はどうなの?」

 

「気にすること無いと思いますけど? 運動部なんてこんなもんですし、ここには女子しかいないんすから」

 

「そう言うことを言ってるんじゃないの。わきの甘さを指摘してるの」

 

 

 そう注意すると、広瀬さんは自分の脇を確認しだす。

 

「処理の話じゃなくて……」

 

「サクラっちも大変だね」

 

「そう思うなら、会長も過度のスキンシップを控えてください」

 

 

 室内に入って来るなりハグしてきた会長に注意するが、これも気にしてるのは私だけのようだ。

 

「会長のこれは挨拶ですし、気にしなくてもいいのでは?」

 

「そうっすよ。誰彼構わずやってれば問題ですけど、一応相手は選んでるみたいですし」

 

「それはそうかもしれないけど……」

 

 

 魚見会長がハグする相手は、私たち役員を除けば津田兄妹くらい。偶に桜才生徒会メンバーにもしてるみたいですが、それ以外にしてるところは見たことが無い。

 

「まぁ、タカ君にしようとしたらシノっちたちに全力で止められたけどね」

 

「抜け駆けだと思われたんじゃないっすか? あの人たちも津田先輩のこと意識してるみたいですし」

 

「ユウちゃんでも分かるんだね」

 

 

 普段そう言うことに疎い広瀬さんだが、さすがに天草さんの好意が誰に向いているのかは分かってる様子。

 

「だってあからさまじゃないですか。会長や森先輩もですけど、七条さんや萩村先輩もですよね?」

 

「むしろタカ君に好意を懐いていない相手を探す方が大変かもね」

 

「まぁ、私も津田先輩、好きっすよ。人として好感が持てますし」

 

「ねー」

 

 

 後輩二人の告白に会長が一瞬焦ったように見えたが、私も内心驚いていた。この二人はタカトシ君に恋愛感情なんて懐いていなかったのにと、早合点してしまったからだ。

 

「何より、あの人がいなかったら赤点だったすから……」

 

「ユウちゃんはもう少し勉強、頑張ってね」

 

「勉強は嫌いなんすよ……」

 

「好きな人はあんまりいないだろうね。でも学生なんだから勉強しなきゃダメ」

 

「はーい……」

 

 

 会長に怒られ、広瀬さんは仕方なく頷いた。彼女の勉強嫌いはコトミさんに匹敵すると、以前タカトシ君が言ってたっけ……




勉強は好きじゃなかったけどな……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。