桜才学園での生活   作:猫林13世

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捨てるものがいっぱい……


生徒会室で断捨離

 生徒会室は普段、タカトシが定期的に掃除してくれているので綺麗だ。だがここ最近荷物が増えてきているので若干狭さを感じる。

 

「――というわけで、タカトシがいない今、断捨離を決行しようと思う」

 

「そういえばタカトシは何処に?」

 

「タカトシ君は、風紀委員会と連携して見回り強化月間の打ち合わせだよ」

 

「そう言うのって会長が行くべきでは?」

 

「萩村は私とタカトシ、どちらに怒られた方が反省すると思う?」

 

 

 自分で言っていて何とも情けない話ではあるが、萩村はその質問で納得してくれたようだ。要するに、私が怒るよりタカトシに怒られた方が反省すると思っているのだ。

 

「まぁ、生徒会室に物を置いているのは私たちだし、タカトシの物は無いからな」

 

「タカトシ君は私物、持ち込まないもんね」

 

「たまにPCを持ち込んで作業してますけど、しっかりと持ち帰ってますしね」

 

 

 畑から頼まれたエッセイの手直しなどをここでやってる時もあるが、基本的にはタカトシはこの部屋に私物を持ち込まない。むしろ持ち込んでくれた方が私たちが手に入れやすい――っと、思考が畑に毒されてるかもしれないな。

 

「では、各々いらないと思う物を纏めよう。私も、Sサイズ以外のパッドを手放すから……」

 

「そんな物生徒会室に持ち込まんでください」

 

 

 萩村に怒られるのも久しぶりなような気もするが、とりあえず生徒会室にある私物を纏めていく。

 

「ん? こんなところにあったのか」

 

「紐に括り付けた五円玉?」

 

 

 棚のウラを掃除しようと動かしたら、以前失くしたと思っていた五円玉が出てきた。

 

「それは何目的で?」

 

「エロ催眠をしようと思ったんだが、すっぽ抜けちゃってな」

 

「むにゃ……」

 

「効いてる!?」

 

 

 無意識に揺らしていたら、それを見ていたアリアが寝ている。これはエロい事を吹き込むチャンスなのでは?

 

「……いや! ここでそんなことしていたら、タイミングよくタカトシがやってきて怒られる未来しか見えない! 起きろ、アリア」

 

「ん……」

 

 

 断腸の思いでアリアに催眠をかけるのを諦め身体をゆすって起こす。ただでさえ威厳の無い会長と陰で揶揄されているという噂が出回っているくらいなのだから、ここでタカトシに怒られているところを誰かに見られたらと思うと……な。せっかく再選したというのに。

 

「あっ、これどうしようかな」

 

「使うかもしれないというのは、結局使わないことが多いぞ」

 

 

 萩村が箱を持って考え込んでいたので、私は思考を断捨離へ戻しアドバイスを行う。これ以上タカトシに怒られる想像をしていては、精神的に疲弊してしまう。

 

「使うかもと思って大きいサイズを買ったんですけど、この上履きは寄付に……」

 

「取っておこう!」

 

「いつか使えるかもしれないし!」

 

 

 萩村の背中から哀愁が漂っていたので、私とアリアは必至になって萩村を宥める。

 

「と、とりあえずはこんなものか?」

 

「よーす、生徒会役員共。おっ、何だ。掃除してるのか」

 

「横島先生も何か投げるものがあればどうぞ」

 

 

 この人なら職員室に余計な物を持ち込んでいそうだし、この機会にデスクの整理をしてもらおうと思っていたのだが――

 

「私はこれかな」

 

 

――何を思ったのか、投げキッスをしてきた。

 

「埃で目が……」

 

「私を見ろ!」

 

「というか、掃除してたら熱くなってきちゃった。ブレザーを脱ごう」

 

 

 アリアがブレザーを脱ぐと、その豊満な胸がより強調される。私は捨てると決意したLサイズのパッドに手を伸ばして――

 

「それは捨てるんじゃなかったんですか?」

 

「ぐぬぬ……」

 

 

――萩村に同情的な目で見られてしまった。さっき私が萩村のことを同情的に見ていたことへの仕返しだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち合わせを終えて生徒会室へ戻ると、何故か皆さんで掃除をしていた。

 

「掃除なら一昨日したばかりですが?」

 

「あぁ。だから今日は断捨離をしていたんだ」

 

「そうでしたか」

 

 

 確かに私物が増えてきたなとは感じていたが、注意する程でもなかったので放っておいたのだが、自発的に片付けてくれたのはありがたい。

 

「でも掃除してみて分かったけど、タカトシ君の物は殆どなかったね~」

 

「必要ないものは持ってきませんから」

 

「耳が痛いな」

 

 

 別に皆さんを皮肉ったわけではないのだが、シノ会長は気まずげに視線を逸らした。

 

「ところで、何故ここに横島先生が?」

 

「いたら悪いのか?」

 

「いえ、そろそろ職員会議の時間ですが、参加しなくていいのかと思いまして」

 

「……げっ!? それじゃあ天草、私はこれで!」

 

「分かってるとは思いますが、教師が廊下を走らないでくださいね」

 

「はい……」

 

 

 しっかりと横島先生に釘を刺したので、走らないが出来る範囲で急いで職員室へ向かっていった。

 

「やれやれ……教師としての自覚が足りてないようですね」

 

「タカトシが言うと説得力が違うな……本当に年下か?」

 

「現役で合格してるんですから、学年が下の俺の方が年下ですよ」

 

「ねぇねぇ、タカトシ君は家で断捨離するの?」

 

 

 露骨にアリア先輩が話題を変えてきたが、別に追及する程でもないのでそのままにしておこう。

 

「捨てて良いなら、コトミを家から断捨離したいですけどね。そうすれば、散らかることもなくなるでしょうし」

 

「「「あぁ……」」」

 

 

 三人が同情的な目を向けてきたので、俺は肩をすくめてその話題を切り上げた。




タカトシ、心からの願い

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