桜才学園での生活   作:猫林13世

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全く動かないのもな……


コトミの寝正月

 タカ兄と二人でのんびり冬休みを過ごしていたのだが、あっという間に桜才生徒会メンバーが集まってきた。

 

「今ウチ、親戚の人が来てるんだ」

 

「ウチも~」

 

「お酒臭くて参っちゃいますよね」

 

「それで集まるのウチなんですね~」

 

 

 昨日まではお義姉ちゃんがウチにいたのに、今日は会長たちが遊びに来るなんて……タカ兄はなかなかノンビリできない人なんだろうな。

 

「まったく、寝正月はサイコーですよ」

 

「お前も少しは手伝ったらどうなんだ?」

 

「会長、私が手伝ったとして、タカ兄の負担が減ると思いますか?」

 

「思わないな」

 

「でしょう? だからこうやってダラダラしてることが一番のお手伝いなんですよ」

 

 

 とんでもない屁理屈だと自分でも思う。だが私が手伝ったところでタカ兄の助けになるかどうかは微妙なところなのだ。なにせあのお義姉ちゃんですら、タカ兄の作業スピードについていくのがやっとなのだから。

 

「てか、食べて寝てばかりしていたら太るぞ?」

 

「大丈夫ですよ~」

 

「こたつはサウナじゃないぞ?」

 

「ラップを全身に巻いてますから」

 

「服を着なさい」

 

 

 昨日お義姉ちゃんにも言われたけど、私はこれを止めるつもりは無い。だってタカ兄の美味しい料理を食べまくった所為で太っちゃったからな……運動したくないし、これで痩せられるなら多少の視線なんて我慢してみせる!

 

「服といえばスズちゃん」

 

「はい?」

 

「その服新しいヤツだね~」

 

「お年玉で買いました」

 

「コトミはお年玉、どうするんだ?」

 

「私は新作の購入資金として」

 

「ゲームか」

 

 

 先日までウチに来ていた親戚から結構な額貰ったので、今月は新作を買うのに困らないだろう。お義姉ちゃんと折半してるのもあるし。

 

「そういえばタカトシは、何に使うんだろうな?」

 

「タカ兄のナニは、お金を掛けなくても立派ですよ」

 

「違う、そっちじゃない。用途を尋ねたんだ」

 

「そっちでしたか~。タカ兄は全額返金してたので、使い道も何もないですね~」

 

「コトミも返金したらどうなの?」

 

「既に使ったスズ先輩に言われたくないですね~」

 

 

 スズ先輩にカウンターを喰らわせ、私は今月の新作リストを頭の中で確認し、お義姉ちゃんとどれを買うか相談しようと携帯を取り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君が忙しなく動いていたのでお手伝いしようとキッチンに向かったのだけど、丁度食事の準備ができたところだったので運ぶのを手伝う。

 

「タカトシ君、手伝うよ」

 

「ありがとうございます、アリアさん」

 

 

 普段は先輩呼びだけど、こういう場面ではちゃんとさん付けで呼んでくれる。本当なら呼び捨てが良いんだけど、タカトシ君に呼び捨てにされちゃったら立ってられるか分からないからね……

 

「おっ、七草粥か」

 

「どっかの誰かが正月、食べ過ぎでしたからね」

 

「美味しそ~」

 

 

 タカトシ君に嫌味を言われていると気付いていないのか、コトミちゃんはお粥に興味津々だ。

 

「お腹に優しい味だね」

 

「鼻にも優しいと思いますよ。野菜たっぷりだから便も臭わないと思いますし」

 

「食事中だぞ!?」

 

 

 コトミちゃんのボケにシノちゃんがツッコミを入れた。タカトシ君は初めから相手にするつもりがないのか、さっさと食べ終えてキッチンへ移動してしまった。

 

「ほら、コトミが変なこと言うからタカトシが行ってしまったじゃないか」

 

「私が変なことを言うのは日常茶飯事ですって。ところで、七草粥の『七草』ってなんですか?」

 

「あんた、そんなことも知らないのね」

 

 

 スズちゃんが呆れて教える気にもならなかったのか、シノちゃんがコトミちゃんに七草を教えることに。

 

「セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ……えっと」

 

 

 ど忘れしたのか、シノちゃんが視線を彷徨わせる。ちょうど高さ的にスズちゃんのブラが見えたのか、シノちゃんは小さく頷いた。

 

「スズシロだ! 助かったぞ、萩村」

 

「何処を見た!?」

 

「スズ先輩、今日は白なんですね」

 

「何の話だー!」

 

 

 スズちゃんの絶叫にタカトシ君が顔だけこちらを向いていたけど、助けてくれるつもりは無いらしい。

 

「まぁまぁスズ先輩、テレビでも見て落ち着きましょう」

 

「荒ぶらせたのはお前だろうが」

 

「シノ会長がスタートですって」

 

 

 誤魔化すようにコトミちゃんがテレビをつけると、丁度グラビアアイドルがセクシーポーズをしている場面だった。

 

「家族団らんの最中にお色気シーンで気まずくなる感じですかね?」

 

「これくらいなら問題ないだろ? ウチの両親なんか、子供の前でイチャイチャしだすからな」

 

「ウチの母は、子供の前で父を叩きだすけどな~」

 

「ウチはそもそも両親が滅多にいませんからね~」

 

「まともな家が何処もないっ!?」

 

「ウチはまだまともだろうが!」

 

 

 シノちゃんがスズちゃんにツッコむなんて貴重なシーンが見られて、今年は良いことがありそう。

 

「さっきから何を騒いでるんですか、まったく……」

 

「タカトシ君、それは?」

 

「甘酒の残りです。残しておいても邪魔ですので、皆さんでどうぞ」

 

「いいにお~い」

 

「コトミはさっさと服を着るんだな」

 

「タカ兄のエッチ」

 

 

 コトミちゃんが身体を捩って色っぽさを演出したが、タカトシ君は興味なさげに一瞥しただけでそれ以上の反応は示さなかった。

 

「私ではダメですね……アリア先輩、お手本を見せてください」

 

「いや、お前の場合は身内だからじゃないのか?」

 

「そんなこと言って、会長は自分の身体に自信がないだけじゃないんですかー?」

 

「そ、そんなこと無いぞ?」

 

 

 視線が明後日の方へ向いてしまっているシノちゃんを見ながら、私はさっきのグラビアアイドルがしていたポーズを真似てみる。

 

「凄い威力だ……」

 

「やはり胸なのか……」

 

 

 コトミちゃんだけでなくシノちゃんまでも鋭い視線を向けてきたので、私は思わず身体を捩って、スズちゃんにまで睨まれたのだった。




アリアがやってもタカトシは動じないだろうけど

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