桜才学園での生活   作:猫林13世

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まだまだ冷える陽気じゃないですけど


冷え対策

 登校中に風紀委員の五十嵐が話しかけてきた。これがタカトシだったらいいのになど、思っていないが少し残念だ。

 

「天草さん、おはようございます」

 

「おはよう、五十嵐」

 

「? 今少し残念そうな顔をしませんでした?」

 

「気のせいだろ」

 

 

 タカトシ程ではないが、五十嵐も鋭い部類の人間だったな……それ程露骨に顔に出した覚えは無いのだが。

 

「それにしても、今日は寒いですね」

 

「だな。急に寒くなってきた」

 

 

 ついこの間まで暑かったと思っていたのにこれだ。ここ最近は秋が短くなってしまったと感じるのも仕方が無いよな。

 

「コートが欲しかったんですけど、見つからなかったので下に一枚多く着てきました」

 

「分かる。私も手袋が欲しかったんだが見つからなくてな……母の指サックがあったからそれで代用してきた」

 

「知りたくなかったです」

 

 

 母の指サック(Rー18)を見て、呆れ顔をする五十嵐。一応これがどういう用途で使われるのかは分かるようだな。

 

「とりあえず没収はしませんが、今後同じようなことはしないでください」

 

「分かってる。ちゃんと手袋は探しておくさ」

 

 

 私だって何時までもイボサックで代用するつもりもない。五十嵐に言われるまでも無くこんな対処は今日だけのつもりだった。

 

「信じますからね」

 

「あぁ、その辺は大丈夫だ」

 

 

 私の信頼度はそんなものかと思いながら、私は早朝会議の為に生徒会室へ向かう。

 

「揃っているな」

 

「シノちゃん、おはよ~」

 

「「おはようございます」」

 

「おはよう、みんな」

 

 

 既に生徒会室には他のメンバーが揃っており、私が席に着けば会議が始められる状況だった。

 

「それでは、早朝会議を始めよう」

 

 

 真面目な会議なのでその間は皆、真面目な表情で話し合う。まぁ、タカトシは何時も通りの表情なのだが。

 

「――こんなところか」

 

「ですね」

 

「お茶淹れるね~」

 

 

 話し合いが終わり緊張感が解けたからか、急に寒さを思い出した。

 

「しかし冬は足が冷えて参るなー」

 

「そだねー」

 

「下半身の冷えには漢方が効きますよ」

 

「漢方か……」

 

 

 あまり良い思い出がない漢方に手を出す程の冷えではないと言い聞かせてしまう。だって苦いって思い出くらいしかないし……

 

「うん、下半身の冷えにはカンチョウだね」

 

「カンチョーじゃないですよ!?」

 

「『環腸』ってツボの話だよ?」

 

「だったらその指は何だっ!?」

 

 

 アリアの指は完全に『カンチョー』を連想させる形だったので、私もてっきりそっちだと思っていたのだが、どうやらツボの話だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休みに生徒会室でお弁当を食べて、午後からの授業も頑張ろうと思った矢先に――

 

「体操服忘れた」

 

 

――ユウちゃんがそんなことを言いだした。

 

「せっかくの活躍の場が……」

 

「私ので良ければ貸そうか?」

 

「いいんすか?」

 

「うん」

 

 

 生徒会長として、困っている後輩に手を差し伸べるのは当然のことだ。だが気持ちはどうあれ私とユウちゃんとでは身体のサイズが違い過ぎる。

 

「うぅ、キツイっす」

 

「ぴちぴちだね」

 

 

 ユウちゃんの姿を見たサクラっちがそんな感想を漏らす。

 

「その締め付けられ感を快感に変えるんだよ」

 

「ハイ!」

 

「いや、そんな努力しなくていいから……というか広瀬さん。部室に予備の体操服があるって言ってなかったっけ?」

 

「そうでした! 会長、これ洗って返しますね」

 

「別に気にしなくていいよ。汗掻いたわけじゃないし」

 

 

 急いで着替えたユウちゃんから体操服を返してもらい、私も授業の為に教室へ戻る。これがタカ君が着た体操服なら変なことに使いそうだけども、ユウちゃんだから気にする必要もないもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天草に用事があって桜才学園を訪れたのだが、生徒会室に懐かしいものがあり、すっかりそっちに集中してしまった。

 

「古谷先輩。何を見てるんですか?」

 

「皆の写真だよ。懐かしいだろ?」

 

「ホントだ。懐かしいですね」

 

 

 当時の生徒会メンバーで撮った写真を見せると、天草と七条は懐かしさを共有してくれた。

 

「あの頃は青かったな」

 

「また年寄り臭いことを」

 

「でも、確かに青いですね」

 

 

 自分で言うのは良いが、七条に言われるとちょっと来るものがあるな――なんて考えていたら。

 

「ほら、微かに見える色が青ですし」

 

「ブラチラの話じゃねぇよ!」

 

「おぉ! 萩村もツッコミだったのか」

 

 

 てっきり津田君以外ボケかと思っていたが、萩村もツッコミできたんだな。

 

「というか、昔の写真を見ていたら会いたくなってきたな。OG会をやりたい!」

 

「なら、私がセッティングしましょうか?」

 

「いいのか? さすが天草、私の右腕なだけはあるな」

 

「いつの話ですか」

 

 

 今ではこの部屋の主は私ではなく天草で、その右腕は津田君だったな。

 

「天草」

 

「はい?」

 

「アリを十匹送るよ」

 

「そのギャグ、まだ使ってたんですね」

 

 

 一気に冷めた目を向けられてしまったが、これも何時ものことなので気にする必要もないだろう。

 

「しかし、会うの久しぶりだな。天草たちも来るか? OGたちと現生徒会メンバーの交流会にしても良いし」

 

「良いですね! それじゃあ次の休みはOGたちとの交流会だ!」

 

「先輩たちに会うの久しぶりだね~」

 

 

 面識のある二人はノリノリだが、後輩二人はイマイチ乗り気ではなさそうだ。だがこうなってしまった天草と七条を止めるのは不可能だと理解しているのか、口を挿むことはしなかった。




ギャグセンスが古すぎる

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