桜才学園での生活   作:猫林13世

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奮闘してるのが一人しかいない気も……


英稜生徒会奮闘記

 最近一年生二人に甘く見られている気がする。生徒会メンバーの仲が良くなってきたと思えば良いことなのかもしれないけども、最上級生として、もう少し威厳を持ちたいと思ってしまう。

 

「――というわけなんだけど、サクラっちはどう思う?」

 

「生徒会の議題に、会長個人の感情を出さないでくれませんか?」

 

「じゃあこの相談は後程で。今月の目標は、笑顔が絶えない学園作りで」

 

「良いですね。ところで、広瀬さんは?」

 

「部活じゃないですか?」

 

 

 サクラっちと青葉っちが話していたタイミングで、ユウちゃんが生徒会室にやってきた。

 

「すんません、遅れました」

 

「もう、仕方ないな」

 

 

 早速実践をする為に、私は笑顔でユウちゃんを迎え入れる。

 

「ひぇー、もう二度と部活以外で遅れないようにするっす」

 

「怒るより効果覿面ですね」

 

「タカ君の笑顔を参考にしてみたんだ」

 

 

 さすがにタカ君の威圧感までは真似できないけども、ユウちゃんを反省させることには成功した。私でこれだけの効果があるのだから、タカ君がやればかなりの効果が見込めると思うのだが――何故コトちゃんは反省しないのだろうか。

 

「そういえば会長。今日はソフト部の助っ人を頼まれてませんでしたっけ?」

 

「うん。これが終わったらすぐに参加するよ」

 

「助っ人ですかー。それで、会長のポジションは?」

 

「四番ライトだよ」

 

 

 キリッと決め顔で告げると、ユウちゃんは尊敬のまなざしを向けてくれたが――

 

「四番手ですか」

 

「四番は凄いんだよっ!?」

 

 

――こういうことに疎い青葉っちはそんな感想だった。

 

「とりあえず見ててね」

 

 

 三人に応援されながら、私はソフト部の助っ人として存分に活躍する。

 

「(打ったら手がしびれてる……確かこの状態で弄ると気持ちいいって、コトちゃんが仕入れてきた情報にあったっけ……)」

 

 

 そんなことを考えていると、サクラっちから呆れた視線を向けられる。タカ君じゃないけども、サクラっちも十分心を読めるのではないかと思えるくらい鋭かったんだっけ……

 

「(とりあえず試合中は真剣にやらなければ)」

 

 

 結果的に私は大活躍でソフト部のメンバーから感謝される結果に終わる。これで少しは先輩として尊敬される結果になればいいのだけども――

 

「(サクラっちには難しそうですね)」

 

 

――試合中余計なことを考えていたことがサクラっちにはバレているので、彼女に尊敬されるのはもう少し先になりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会長から相談されたのが数日前。あれから注意深く生徒会メンバーを観察していたが、それ程会長が甘く見られている様子は見られない。むしろ一緒になってふざけている場面の方が多い気がする。

 

「今日会長遅いっすね」

 

「三年生だし、いろいろあるのかもね」

 

 

 珍しく広瀬さんが会長より先に顔を出しているので、私は広瀬さんを観察することに。

 

「そういえば広瀬さんって指長いねー」

 

「そうっすか?」

 

 

 良く見えるようにしてくれたのか、広瀬さんが手を広げこちらに向ける。私は指の長さを確認する為に自分の手を広瀬さんの手に重ねたのだが――

 

「負けないっすよ?」

 

「突然力比べが始まったっ!?」

 

 

――体育会系のノリなのか、突然重ねていた手に力を込めてきた。

 

「ストップ、ストップ! そんなつもりじゃないから」

 

「……失礼しました」

 

 

 私が広瀬さんを押し返そうとしたタイミングで生徒会室に入ってきた会長が、何やら盛大に勘違いして出ていってしまう。私は慌てて会長を追い掛け、事情を説明した。

 

「そう言うことだったんだ。てっきり二人が百合百合な関係になったのかと」

 

「そんなわけないじゃないですか!」

 

「そうだよね。サクラっちはタカ君のお嫁さん候補筆頭だもんね」

 

「何ですかその候補はっ!?」

 

 

 タカトシ君をそっちのけで決めたんだろうけども、そんな候補がいることに驚きを隠せない。そして何故私が筆頭なのかにも。

 

「ところで会長、今日はどうして遅れたんですか?」

 

「実はここに来る前に外を見回りしていたんだけど、水たまりに足を突っ込んじゃって……」

 

 

 そう言って会長は濡れた靴下を私たちに見せてくる。

 

「ドジっすね」

 

「ユウちゃん、何て言ったの?」

 

「す、すみませんっす」

 

 

 てっきり馬鹿にされたのを怒ったのかと思ったが、会長の表情からは怒りの感情は感じ取れない。

 

「もう一回言って」

 

「ドジっすね」

 

「はいはい、罵倒されて興奮してないで、会議始めますよ」

 

 

 尊敬されたいという気持ちは何処に行ったのか……会長は広瀬さんに罵倒されてドキドキしているではないか。私は事務的にツッコミを入れて会議を開始するよう誘導する。

 

「森副会長も大変そうですね」

 

「そう思うなら、青葉さんも手伝ってよ」

 

「私じゃ会長を導けないですから」

 

「私だって結構無理矢理なんだけど?」

 

 

 会議中も会長と広瀬さんはおふざけをするし、青葉さんは天然なのか二人の発言を真に受けるしで、私は会議中もツッコミを余儀なくされる。

 

「はぁ……」

 

「サクラっちお疲れ。これあげる」

 

 

 会長が取り出したのは飴玉。何故会長が飴を持っているのか気になったが、とりあえず貰っておこう。

 

「ありがとうございます。ちょうど疲れていたので」

 

「疲れた時には甘いものが――」

 

「喉が」

 

「ツッコミ疲れ?」

 

 

 あれだけツッコミを入れれば喉にダメージを負うってことくらい、会長でも分かりそうなんだけどな。

 

「タカ君ならあれくらいで疲れたりしないだろうけどね」

 

「タカトシ君と同じレベルを期待されても無理ですよ」

 

 

 彼は私以上に捌かなければいけない相手が多いのだから……

 

「(最近会えてないけど、やっぱり大変なのかな?)」

 

 

 今度連絡してみようかなと思いつつ、迷惑になるんじゃないかという気持ちが働き結局連絡できていないのだ。やっぱりタカトシ君は大変なんだろうと思って諦めているけども、私もたまには会いたいな……




喉は疲れないけど精神的に疲れることはあるんですよね……

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