桜才学園での生活   作:猫林13世

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本人そっちのけ……


突然の報告

 新聞部の畑から真面目なインタビューの申し込みがあったのでそれに答えたのだが、やはりタカトシがこの部屋にいないと何かやられるのではないかという不安が半端ない。

 

「以上で質問は終了となります。それでは最後に会長の写真を一枚」

 

「私だけ? アリアも一緒の方が生徒会の雰囲気が出るんじゃないのか?」

 

 

 タカトシと萩村に見回りを任せ、私とアリアで畑が余計なことをしないよう見張るという感じになっているので、この部屋には私とアリアしかいない。だが私単体よりアリアとのツーショットの方が生徒会の雰囲気は増すと思うんだがな。

 

「あれ? 言ってませんでしたっけ? これ、生徒会選挙の写真と意気込みの取材だったんですけど」

 

「選挙だと? だが次期会長はタカトシで内定しているし、今更私が生徒会選挙に出るのも――」

 

「確かに津田副会長が後任で確定でしょう。ですが今回の生徒会長選挙は、現会長である天草会長のままで本当にいいのかを問う選挙となっております。ここで天草さんが敗北した場合、現生徒会は解散し新しい会長の下で津田君に継ぐまでの期間を運営してもらうこととなります」

 

「そんなこと聞いてないぞ!?」

 

 

 確かに生徒会長としてしっかり働いてきたかと問われれば首をかしげてしまうかもしれないが、それでもリコールされる程酷いことをしてきたつもりもない。若干タカトシ頼りのところはあるけども、私だって会長としての存在感は放っていたはずだ。今更生徒会長選挙なんてする必要はあるのだろうか。

 

「既に天草さんの他の立候補者のインタビューもしてありますので、今更選挙自体を無しにするなんてできませんからね」

 

「生徒会が関わっていなかったというのに、何で他の候補者がいるんだ!?」

 

 

 もしかしたら横島先生が勝手に許可したのか? それとも私以外の役員は知っていたのか? そんな疑問を抱きながらアリアを見ると、アリアも知らなかったのだろうと確信できる表情をしていた。

 

「ちなみに既に学園からの許可は得ていますので、幾ら津田副会長の御力でも無効にはできませんので。この選挙に参加しないということは、天草さんは会長職を辞すということになります」

 

「何時も以上に根回しが早いな……それで、目的は何なんだ?」

 

「な、ナンノコトデスカ?」

 

 

 よりよい学校運営の為などという高尚な考えを持っているわけないので鎌を掛けたのだが、やはり裏があるようだ。私は無言で畑に迫ると観念した彼のように口を開く。

 

「皆さんの関係もマンネリしてきているので、ここらで新しい刺激でも与えれば面白いことになるんじゃないかと思いまして。天草さんが会長としてイマイチ機能していないことを思い出して、このままでいいのか全校生徒に是非を問う形にすれば盛り上がるんじゃないかと思いまして……桜才ブログも結局津田副会長が最終チェックをしてるわけですし」

 

「アイツ以上に信頼されろと言うのは無理があるんじゃないか?」

 

 

 教師以上に信頼されているタカトシ相手に戦おうなんて無謀じゃないか。幾ら役職は私の方が上でもできることとできないことはある。

 

「まぁ、順当に行けば再選するんですから、そんなに緊張しなくても」

 

「ちなみに、私以外の候補は誰なんだ?」

 

 

 既に候補は集まっていると言っていたし、私が出馬しなかったら会長職を盗られると言っていたから一応聞いておこう。決して勝てないなんて思ってないが、念の為敵の情報は持っていた方が良いだろうし。

 

「まずは風紀委員長でもある五十嵐カエデさん」

 

「カエデちゃんか~。シノちゃん、強敵かもね」

 

「うむ……」

 

 

 よりよい学園を作るという観点から見れば、私より五十嵐の方が相応しい気もする。だがアイツが風紀委員長として目を光らせているから共学化しても男子生徒が女子を襲うなどという事件が起こっていないわけで……

 

「続いてはパリィ・コッペリン」

 

「何故留学生のパリィが?」

 

「津田副会長を従えてみたいのではないでしょうか?」

 

「ありそうだな……」

 

 

 私だって従えているわけではないのだが、日本文化を微妙に勘違いしているパリィのことだからありえそうだと思ってしまった。

 

「そして学園最大の問題児、津田コトミ」

 

「何故コトミが?」

 

 

 アイツが出馬しても票が集まるとは思えないんだが……

 

「問題児だからこそ分かることがあるとでも考えてるのではないでしょうか? 会長になったとしても仕事は兄である津田副会長に丸投げして、自分は高みの見物なんて」

 

「ありえるだろうな……アイツが仕事をちゃんとするわけないだろうし」

 

 

 とりあえず候補者は私を含めて四人か。強敵は五十嵐だが、パリィも意外と票を集めそうだし、面白半分でコトミに投票する人間もいるかもしれない。

 

「……ん? ちょっと待て畑」

 

「はい、何でしょう?」

 

「さっきお前、私が負けた場合現生徒会は解散って言ったよな?」

 

「はい」

 

「じゃあ何でタカトシは副会長のままで話してたんだ? アイツは私の右腕だぞ」

 

「じゃあ天草さんは、津田先生以上に副会長に相応しい方をご存じで?」

 

「そう言われると答えに困るな……」

 

 

 アイツがいてくれるから私も会長職を立派にじゃないかもしれないがやってこられているのだ。誰が会長になってもタカトシは副会長に再任だろうな。

 

「そういうわけでして、この後候補者たちが集まっての話し合いがありますので、天草さんにもお付き合いしてもらいます」

 

「そう言うのは先に言えって言っただろうが!」

 

 

 勝手に予定を組まれて気分が悪いし、何を話せばいいのか何も考えていない。私は不安を抱えながらも畑の後に続くことに。

 

「アリア、留守は任せる」

 

「は~い。シノちゃん、頑張ってね」

 

 

 アリアに応援され、私は何が何でも会長の座は譲らないと硬く決意したのだった。




そのままタカトシが会長でいいじゃん……

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