桜才学園での生活   作:猫林13世

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自分も無趣味の部類ですかね


逆算趣味

 新学期も始まり、休み明けのテストの結果も生徒会メンバーは何も問題なし。相変わらず優秀な役員たちで私も鼻が高い。

 

「そういえばタカトシ、コトミのヤツも平均点以上だったらしいな」

 

「あれだけ勉強して漸く平均点くらいしか採れないのは問題ですが、とりあえずは安堵しましたよ」

 

「兄というか親のようなコメントだよな……」

 

 

 タカトシが苦労しているのは私たち全員知っている。両親不在が原因だけではないのだろうが、タカトシがコトミを見る目は兄としてというよりも保護者としての場合が多いのだ。

 

「コトミの成績を考えると、勉強を始めたのは合宿終わりってところか?」

 

「そうですね。俺たちがダイビングから帰ってきた日の午後かららしいです」

 

「やはりな。最近逆算するのにハマっていて、いろいろと逆算する癖がついてしまっている」

 

「そうですか。会長は次々と興味があるものが出てきて羨ましいです」

 

「微妙に褒められていない気がするのは気のせいか?」

 

「気のせいでしょう」

 

 

 タカトシは興味を失ったのか、生徒会の書類に目を通し始める。そのタイミングで見回りから戻ってきた萩村が視界に入る。

 

「萩村の誕生日は四月だったよな?」

 

「えぇ。それが何か?」

 

「四月生まれということは、両親が萩村を仕込んだのは――」

 

「おいやめろ!」

 

 

 私が萩村の誕生日から逆算しようとしたら、萩村が私のことを押し倒そうとしてタックルしてきた。だが萩村の体重では私を押し倒すまでには至らず、抱き着いてきたようにしか見えない。

 

「スズちゃんがシノちゃんに抱き着いてる!? もしかしてスズちゃんも出島さんと同類?」

 

「そんなわけあるか! というか、この人を止めるの手伝ってくださいよ!」

 

「何かあったの~?」

 

 

 萩村が慌ててる理由をアリアに話すと、アリアは納得したように私を見てきた。

 

「シノちゃんクラスメイト達の誕生日を聞いていたけど、それって今と同じことをしてたんだね~」

 

「つい気になってしまってな。だがこの癖は治さないといけないようだ。まさかここまで過剰反応されるとは思っていなかったからな」

 

 

 萩村が大袈裟な気もするが、確かに両親の営みがいつ行われたかなんて知られたくないかもしれない。

 

「せっかく新しい趣味ができたのにな……」

 

「シノちゃんって、読書とか趣味じゃないの?」

 

「人並みの娯楽を趣味と言い張るには、かなり突き詰めないといけないからな。私のは常識の範囲で好きなだけだから、趣味というには弱すぎるんだよ」

 

「シノちゃんは気にし過ぎだと思うんだけどな~。私だって趣味って言える程のものは無いんだけど」

 

「だがアリアはお華とか書道とか、趣味と言えるレベルのものがあるだろう?」

 

 

 お嬢様なだけあって、アリアの趣味はレベルが高い。趣味としてのレベルで収まっていないかもしれないが、アリアはあくまでも趣味だと言っている。

 

「スズちゃんは? 何か趣味ある?」

 

「新しい知識を求めるのが趣味になっていますかね。最近はボアの生態を観察してみたりしてます」

 

「タカトシ君は?」

 

「趣味に割ける時間が少ないので、これといったものは。だから会長も気にしなくても良いと思いますけどね」

 

「タカトシと無趣味の理由が違い過ぎるからな、私は」

 

 

 主夫だから時間が作れなくて無趣味なのと、単純に興味が持てなくて無趣味なのでは意味合いが違い過ぎる。だが気にし過ぎなのもアレなので、もう少しじっくりと趣味となるものを探そうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室を片付けていたら、耳温計が出てきた。誰が持ち込んだのかは分からないけども、まだ使えるみたいだから測ってみよう。

 

 

「シノちゃん、ちょっと体温高め?」

 

「さっきまで日に当たっていたからかな」

 

「あの場所はあったかいもんね~」

 

 

 生徒会室はそれなりに日が当たるので、ずっと作業していると身体が温かくなる。もちろん冷房なので室内温度を管理しているので、熱中症になったりはしないので問題は無いんだけども。

 

「アリアだって、少し体温高くないか?」

 

「タカトシ君と一緒に作業してたからかな?」

 

「そうだったな! 今日はアリアがタカトシと一緒に見回りだったもんな!」

 

 

 毎日じゃんけんでタカトシ君と誰がペアを組むかを決めるって言いだしたのはシノちゃんなのに、何故か自分が組めないと膨れちゃうんだよね。まぁ確かに、他の人がタカトシ君と見回りをしてるのを見るのは面白くないけども。

 

「何してるんですかー?」

 

「コトミか。いや、生徒会室を掃除していたら耳温計が出てきたからな」

 

「私も計っていいですか?」

 

「いいよ~」

 

 

 コトミちゃんの耳に体温計を当て、体温を計る。

 

「35.6℃、ちょっと低めだね」

 

「最近の子は体温低めらしいからな」

 

 

 シノちゃんの言葉は、何だか私たちが凄い年上っぽく聞こえるけど、恐らくそんな意図はないんだろうな。

 

「まぁ、私ちょっと冷めてる部分がありますので」

 

「あ、うん……」

 

「乗ってくださいよ! 会長の方が冷めてるじゃないですかー!」

 

「いやだって……コトミに付き合ってふざけてると、タカトシに怒られそうだし……」

 

「そういえば、そのタカ兄は何処に?」

 

「スズちゃんと一緒に職員室に行ってるよ~」

 

 

 横島先生に報告しに行ったのだけども、予算の件もあるのでスズちゃんが一緒に行っているのだ。本当ならここもじゃんけんで決めたかったんだけど、会計であるスズちゃんが一緒の方が話が早く終わるとのことで、今回はスズちゃんが同行する形になったんだけども、やっぱり羨ましいって思っちゃうよね。




別に趣味が無くても生きてはいけますから……

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