桜才学園での生活   作:猫林13世

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夏場の外は仕方ないよな


浜辺での一幕

 カナちゃんの悪戯に驚いたけども、その後は普通にカナちゃんのおばあさんと会話を楽しむことに。

 

『貴女たちがカナが良く言っている違う学校の生徒会メンバーかい?』

 

「カナさんにはお世話になっています。桜才学園生徒会長の天草シノと申します」

 

「同じく生徒会書記、七条アリアです」

 

「会計、萩村スズです」

 

『こちらこそ、孫と仲良くしてくれてありがとうね。離れて暮らしてるから心配していたんだよ』

 

「ちょっとおばあちゃん!」

 

 

 どうやらカナちゃんは過保護に扱われるのに慣れていないようで、恥ずかしそうに私たちの会話に割り込んできた。

 

『ところで、タカ君はどうしたんだい? 一緒にいると思ったのだが』

 

「何でしょうか」

 

『何時もカナがお世話になってるからね。何だったらそのまま嫁に貰ってくれても構わないんだよ?』

 

「以前も言いましたが、カナさんの意思を丸々無視した話はしない方がよろしいのではないでしょうか?」

 

『電話越しでもすごい威圧感だね……さすが、お見合いを潰しただけはある』

 

 

 そう言えば以前、カナちゃんにお見合い話が持ち上がったって言ってたっけ。それを潰すのにタカトシ君が一役買ったとも聞いていたけど、この威圧感で潰したんだ……

 

「あの話はそもそも、向こうが求めるものと、カナさんの将来との方向性が全く違ったじゃないですか。俺じゃなくても潰すのは容易かったと思いますが」

 

『だが実際、君が来てくれるまでは話が潰れなかったんだから、君がいなければカナは今頃あの男の肉奴隷として――』

 

「くだらないことを話すのなら、通話を切るだけですので」

 

「タカ君、急に殺気を出すのは止めて……思わずお漏らししそうになっちゃった」

 

「義姉さんも、くだらない冗談はやめてください」

 

 

 興味を失ったのか、タカトシ君はカメラの範囲から外れて窓の外に視線を移した。冗談って受け取ったようだけども、あの殺気は催しても仕方が無いくらいの威力があると思うんだよね。

 

「おばあちゃんも、以前私が使った冗談を使わないで」

 

『なんだい。カナも使ってたのか。やっぱり血縁ってことだね。ところで今日はコトちゃんは一緒じゃないのかい? カナが疑似子育てをしてると言っていた子は?』

 

「会ったことあるでしょ? タカ君の妹のコトちゃん」

 

『あぁ、あの子かい。確かに手がかかりそうな感じだったが、そこまでだったとは』

 

 

 親戚の集まりに参加したことがあるから仕方ないのかもしれないが、おばあさんはタカトシ君だけではなくコトミちゃんとも面識がある様子。それにしてもあまり面識のない相手にもそう思われているとは、さすがコトミちゃんと言った感じなのだろうか?

 

『新婚気分を楽しんでるのは良いが、早いところひ孫の顔を見せておくれよ』

 

「おばあちゃん、私はまだ高校生だって」

 

『そうだったね』

 

 

 その後は当たり障りのない会話が続き、タカトシ君も特に気にする様子はなかった。それにしても、外を見てるだけでも十分絵になるんだよね、タカトシ君って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事を済ませ、軽く雑談をしてからタカトシは部屋に戻っていった。本当なら一緒の部屋が良かったのだが、それを言えばタカトシに怒られただろうから言わなかった。

 

「シノっち、今日は付き合ってくれてありがとうございました」

 

「私の方も楽しかったからな。誘ってくれてありがとう」

 

「まぁ、私としてはタカ君が一緒に来てくれただけで十分だったんですが」

 

「おいっ!」

 

「冗談です。シノっちはからかい甲斐がありますよね」

 

 

 またしてもカナにからかわれてしまった……

 

「それよりもシノっち、興奮して眠れないんですか?」

 

「まぁ楽しかったし、タカトシの殺気を受けてピリピリした感覚がまだ残っているのかもしれないな」

 

「それだったら外に出ませんか?」

 

「外?」

 

「それともタカ君の部屋が良いですか?」

 

「……何故その二択なのかは聞かないが、タカトシに怒られたくないので外に行こう」

 

 

 本音を言えばタカトシの部屋に行きたいのだが、行っても怒られるだけなのでやめておこう。カナも私と同じ考えなのか、素直に外に行くことに賛成してくれた。

 

「この時間でもまだ少し暑いですね」

 

「だが海の側だから風は涼しいな」

 

「そうですね。シノっちはタカ君のこと、本気なんですよね?」

 

「いきなりだな……」

 

 

 まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかったので、私は思いっきり言い淀んでしまう。

 

「シノっちの態度はどうにも本気かどうか疑わしい感じなんですよね。アリアっちもですが」

 

「私は何時だって本気だぞ! ってカナの首筋に蚊が」

 

 

 私は手を伸ばして蚊を潰そうとしたのだが、残念ながら逃げられてしまう。

 

「シノっちの頬にも」

 

 

 今度は私の方に来たようで、カナが手を伸ばしたがこれも逃げられてしまう。

 

「カナに!」

 

「シノっちに!」

 

 

 何とか蚊を追い払おうと必死になっていたら、旅館の方から声が聞こえてきた。

 

『二人とも何してるの~? 浜辺で決闘でもしてるの~?』

 

「……傍から見るとそう見えるのだろうか?」

 

「まぁ、同じ男の子を取り合うライバルでもありますからね」

 

「カナだって、イマイチ本気かどうか疑わしいと思うぞ?」

 

「そうですか? 私はこんなにもタカ君のことを想ってるのに」

 

 

 カナの言葉は本気なのだろうが、どうしてもうさん臭さがぬぐえない。これはカナが私たちに対して感じているのと同じ感じなのだろうと思い、もう少しふざけるのは止めようと誓ったのだった。




あまり蚊に刺されないんですがね

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