桜才学園での生活   作:猫林13世

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お茶目で良いのだろうか?


反省と悪戯

 今回はホテルではなく旅館なので、私たちは温泉に浸かりながら今日の出来事を話し合っている。何故かカナは早々に部屋に戻ってしまったので、浸かっているのは桜才女子三人なのだが。

 

「出島さんは何処に行ったんでしょうか?」

 

「あの人ならアリアのお風呂を盗撮しようと準備していたところをタカトシに見付かり、浜辺で正座をしながらお説教されているところだ」

 

「相変わらずですね……」

 

 

 萩村が出島さんのことを指して言ったのか、それともタカトシを指して言ったのかは分からないが、確かに相変わらずではある。

 

「そんなことより萩村!」

 

「はい、何でしょう?」

 

「お前、海中でタカトシに顎クイされていたな! なんとも羨ましい!」

 

「マスクの中に水が入っちゃったから出そうとしてただけです。ただちょっと角度が足りなくてタカトシが調整してくれただけで……」

 

 

 その時のことを思い出しているのか、萩村の顔は真っ赤になった。

 

「やっぱりスズちゃんもムッツリだよね~」

 

「ち、違います! というか、会長だって亀に驚いてタカトシに抱きつこうとしてましたよね?」

 

「私は実際に抱き着いていないし、カナとふざけてたからタカトシから睨まれそうになったんだぞ?」

 

「マスク越しでもタカトシ君の眼光は鋭いからね~」

 

 

 その時のことを思い出して、私は湯に浸かっているというのに寒気を覚え身体を震わせる。

 

「とりあえずタカトシを怒らせるのはマズいって、なんど思ったか分からないくらい反省したはずなんだがな……どうしてもふざけたくなってしまうんだ」

 

「もうちょっと会長としての自覚をもって行動してみては如何でしょう? ただでさえ影でどっちが生徒会長なんだか分からないって言われてるらしいので」

 

「待て、そんなことを言われてるのか?」

 

「というか、会長を通り越して横島先生とタカトシ、どっちが教師だか分からないとすら言われてるらしいので」

 

「それは何となく分かるが……」

 

 

 教師を説教する生徒の図は、今では桜才学園名物とさえ言われているらしい。それくらい横島先生が怒られることに事欠かないのと同時に、タカトシの威厳の高さが表されているのだろう。

 

「とりあえず、我々はもう少しタカトシに迷惑を掛けない方向で努力しよう」

 

「私はそこまで迷惑かけていません」

 

「学園内ではな。だが外出の際は萩村が一番問題行動が多いぞ? すれ違った相手に噛み付こうとしたり」

 

「……気を付けます」

 

 

 私服だからそれ程言われないだろうと思っていたのだが、やはりタカトシと萩村が一緒にいると兄妹もしくは親子に見られるようで、その都度萩村はひそひそしていた相手に飛び掛かろうとしてタカトシに止められている。こればっかりは萩村にしか分からないんだろうが、やはり実際と違う評価をされると頭にくるのだろうな。

 

「そろそろ部屋に戻ろうか~」

 

「そうだな。ところでアリア」

 

「ん~?」

 

「今回はさすがにタカトシは別の部屋なんだな」

 

「さすがにね~。横島先生はいないけど、出島さんはいるから」

 

 

 そもそも男子一、女子多数の部屋では普通男子の方が興奮するはずなのだが、我々に当てはめる限りその構図は成立しない。むしろ我々がタカトシを襲わないよう意識していないと理性の箍が外れそうになるのだ。

 

「その面でも、私たちはタカトシに迷惑を掛けているということか……」

 

「アイツの心の平穏を保たせる為にも、もう少し努力しましょう」

 

「私は何時でもタカトシ君のことを想ってるんだけどな~」

 

「それでアレなら、もう少し頑張りましょうよ……」

 

 

 萩村の力の無いツッコミに、私も頷いておく。人のことを言える立場ではないが、アリアも十分にタカトシに迷惑を掛けていると思うから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に誰もいないのでのんびりとしていたら、外からシノっちたちの声が聞こえてきた。ついでにタカ君も合流したようで、この部屋に来るとのこと。そこで私はちょっとした悪戯を思いつき、準備をしておく。

 

「カナ、何故先に出てしまったんだ?」

 

「桜才の皆さんと一緒だと、どことなく疎外感を覚えたので」

 

「お前がそんなことを気にするとは思えないんだが……」

 

「それで、カナちゃんは一人で何をしてたの?」

 

「これを見ていました」

 

 

 そう言って私は携帯を皆さんに見せる。三人は写真だと思ってくれたが、タカ君だけは微妙に疑っている様子……というか、既に分かっている感じがしますね。

 

「この写真の人がカナにウエットスーツをプレゼントしてくれたおばあさんか」

 

「優しそうな人ですね」

 

「お茶目でもあるよ」

 

『引っ掛かったー』

 

「テレビ電話だったんだ~」

 

 

 桜才の女子三人は驚いてくれましたが、タカ君は呆れ顔。やはりこのおばあちゃんが写真ではなく電話だと気付いていた様子ですね。

 

「タカ君は分かってたみたいだね」

 

「微妙に身体が動いていましたから。最初は義姉さんの手のブレかとも思いましたが、それとは明らかに違う動きでしたし。人間、微動だにしないようにしても、呼吸などで微かに身体は動いてしまいます。それが見て取れたので」

 

「そんなこと普通、タカ君にしかできないよ」

 

 

 なかなか常人ではできないことを平然とやってのけるタカ君。この子のスペックは相変わらずなのだと感心するのと同時に、どうしてコトちゃんにはこのスペックの高さが備わっていないのだろうと、この場にいないコトちゃんのことが気になってしまったのだった。




そしてやはり人外のタカトシ

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