桜才学園での生活   作:猫林13世

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さらっと流して良いことなのだろうか


ダイビング前のハプニング

 私がおばあちゃんからもらったウエットスーツを活用する為、桜才学園の皆を誘って今日はダイビング体験にやってきている。本当なら結構お金がかかるのだけども、そこはアリアっちのコネで高校生でも十分払える金額なのでバイトをしていないシノっちやスズポンも安心して参加している。

 

「アリアっち、今日はありがとうございます」

 

「気にしないで~。お友達の為だから」

 

 

 こう言うことを当たり前に言える辺り、アリアっちは友達想いのいい子なのでしょう。しかも美人で胸も大きいとなれば、普通の高校生男子ならムラムラっときて襲いかねないかもしれない。

 

「タカトシ君も、何時までもお金のことを気にしないで良いんだよ?」

 

「アリアさんがそう言ってくれるのはありがたいのですが、そうやって甘え続けるといつかダメになりそうな気がしまして……」

 

「タカ君、今日のところは素直にアリアっちの好意に甘えておきなよ。タカ君は普段、アリアっちたちに美味しいごはんを提供してるんだから、今日のはそのお返しって思っておけばいいじゃない」

 

「そんなことをしてもらえるレベルの物を提供してるつもりは無いのですが」

 

 

 今日唯一の男子、タカ君はアリアっちのボディラインではなく格安にしてもらった料金のことを気にしている様子。お義姉ちゃんとしては他の女子に現を抜かしているわけではないので嬉しいのですが、ここまで異性に興味を示さないのも心配物です。

 

「まぁまぁ津田様。津田様の料理は七条グループが経営するレストランで提供しても遜色ないものですから」

 

「そんなわけないでしょ……プロの方に失礼ではありませんか?」

 

「タカトシ君の料理はそれくらい美味しいってことだよ」

 

「はぁ……」

 

 

 イマイチ納得していない様子ですが、これ以上そのことで頭を悩ませるのは止めようという表情をしてくれたので、とりあえずは善しとしましょう。

 

「出島さーん。そろそろみんなに説明をお願いね~」

 

「かしこまりました」

 

「出島さんがインストラクターの資格を持っているから、今回の料金設定ができたんだよ」

 

「資格は本物なんでしょうが、イマイチ信頼できないんですよね、あの人……」

 

 

 アリアっちがいるので出島さんが一緒に来るのはデフォであり、その出島さんが資格を持っているのでインストラクター代が必要無くなる。そしてアリアっちの会社が企画しているツアーの体験ということで、さらに割り引いてもらったのだ。

 

「――というわけです。海の中では常に冷静を心がけましょう。慌ててしまうと思いがけない事故に発展する恐れがありますので」

 

「なる程。常に冷静ですか」

 

 

 この中で何事にも動じない心を持っているのは、間違いなくタカ君だろう。だってさっきからピッタリとくっついているというのに、心音に変化がないのだから。

 

「てかカナ!」

 

「はい?」

 

「さっきからタカトシにくっつき過ぎだ! いい加減離れろ!」

 

「そうですよ! ただでさえ魚見さんは津田と一緒に生活してる感じがしてるんですから!」

 

「ボンベが重くてタカ君に支えてもらっていただけですよ? それに、この程度でタカ君の心が乱せないことくらい、お二人なら分かってますよね?」

 

「「それは……」」

 

 

 シノっちやスズポンが嫉妬するのは分かりますけども、私だって冗談ではなく本気でタカ君のことが好きなのです。これくらい積極的に行かないと埋もれてしまう可能性があるので行ける時にはぐいぐい行くようにしようと決めたのです。

 

「まぁ、二人の心が潜る前から乱れてしまうのもアレですから、今日のところはこれくらいで勘弁してあげますよ」

 

「お前、コトミに影響され過ぎじゃないか?」

 

 

 確かにコトちゃんも似たようなことを言いそうだなとは思いましたが、そこまで影響されているでしょうか?

 

「そうと決まれば早速潜りましょう。まずはレギュレーターを咥えて――」

 

「義姉さん、それは俺のです」

 

 

 ちゃんと自分のを咥えたつもりだったのですが、どうやらタカ君のレギュレーターを咥えてしまったようで、私は頭を掻いてタカ君にレギュレーターを返す。

 

「ゴメン、間違えちゃった」

 

「気を付けてくださいね」

 

「ちょっと待て! さすがにそのままタカトシが咥えるのはどうかと思うぞ!?」

 

「そんなに気にすることですか? 確かに義姉さんが間違えて咥えましたが、一瞬のことでしたし」

 

「というか、間接キスなんて日常茶飯事になりつつありますし」

 

「どういうことだっ!?」

 

 

 シノっちが凄い勢いで喰いついてきたのは想定内だったのですが、スズポンとアリアっちからも鋭い視線を向けられるとは思っていなかったので、思わず私はタカ君の背中に隠れてしまった。

 

「アイスとか食べてるときに一口貰ったりしますし。タカ君からだけではなくコトちゃんからも」

 

「義姉さん、全員違う味を買ってきますからね」

 

「だって、みんな同じ味だと楽しみがないでしょ? それに、いろいろな味を楽しみたいし。でも自分一人で食べると体重が気になってきちゃうし」

 

「カナ、ダイビングが終わったら少し話し合いをしようか」

 

「良いですよ?」

 

 

 桜才の三人に詰め寄られて、私はタカ君の身体にしがみつきながらそう答えるのが精一杯だった。だって、普段のおふざけとは比べ物にならないくらい、三人からは殺気があふれ出ていたから……まぁ、タカ君のそれと比べれば大したことは無かったのですが、気にしないで平気なほど、私の心は鋼鉄ではないのです。




八月が終わっちゃうな……

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