桜才学園での生活   作:猫林13世

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原作終了発表に伴い、週三投稿に変更します


相性のいい相手

 魚見さんにダイビングに誘われたのは良いが、私たちは素人だ。何でもできるタカトシや、経験者の七条先輩は兎も角、私は修学旅行で少し潜ったことがある程度。とてもじゃないが自信満々に参加表明なんてできない。

 

「私は遠慮しておきます」

 

「スズポンは海の暗さが怖いんですか?」

 

「やってやろうじゃないの!」

 

 

 相変わらず簡単に乗せられてしまうと分かっていながらも、子供扱いされたようで我慢ならない。しかも自分でやってやると言ってしまった手前、今更無理なんて言い出せないし。

 

「しかし、そうなると参加者は奇数だな。バディを組むにもどうすればいいんだ?」

 

「相性がいい相手と組むのが一番だと思いますが」

 

 

 私が自分自身に嫌悪感を懐いている横で、天草会長と魚見さんがそんな会話をしている。普段ならすぐにツッコミを入れられるのだが、今の精神状態では反応できない。

 

「だったら私はタカトシとだな! 何と言っても生徒会長と副会長だ。息はピッタリ合ってるぞ」

 

「それを言うなら私とタカ君は義姉弟です。コトちゃんの扱いなど息もピッタリです」

 

「見てみて~。アイス食べてたら唇がくっついちゃった」

 

「「ぷっ、ひょっとこ〇ェラみたい」」

 

「二人とも息ピッタリだね~」

 

「「それじゃあ私のバディは……」」

 

 

 何だかガックリしているが、私は今までの会話をちゃんと聞けていない。だから何にガックリしているのか分からないが、とりあえず勘違いを訂正しておこう。

 

「私たちは素人ですので、インストラクターが必ず付いて回ります。つまり私たちがバディを組むことはありませんよ」

 

「「………」」

 

 

 何やら別の理由でガックリしてるようだけども、そもそも素人だけでできることではないのだ。命の危険だってあるし、遊び半分で参加しては本当に冗談ではすまなくなってしまうことだってある。

 

「スズちゃんは最初から分かってたんだし、もうちょっと早く教えてあげたら良かったんじゃない?」

 

「ちょっと精神状態が不安定でして……」

 

「ん~?」

 

 

 七条先輩に心配されてしまったが、私はその理由を詳しく説明するつもりは無い。だって子供みたいだって思われたくないし。

 

「ところで、会長と魚見さんは何をそんなにショックを受けてるんですか?」

 

「スズちゃん、わかってたんじゃないの?」

 

「いえ、バディがどうのこうのって話だったということは分かっているのですが、途中をちゃんと聞いていなかったので」

 

 

 七条先輩に二人がショックを受けている原因を聞くと、何とも浅はかな計画だったと言わざるを得ない。そもそもこの面子だったらタカトシが個人で動き回ることを選ぶだろうし、素人でバディを組むとしても、タカトシと組めるわけがないのに。

 

「ところで、そのタカトシは?」

 

「皆のおやつを作ってくれてるよ~」

 

 

 さっき七条先輩はアイスを食べてたような気もするけど、タカトシのおやつは別格だから食べるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 義姉さんの提案でダイビングに行くことになってしまい、アリアさんの伝手ですぐにでも参加できるということで、明日は朝早くから出かけることに……

 

「ほんと、コトミがいなくて良かった」

 

 

 アイツがいたら自分も参加するとか、一人っきりで自由だとか言い出しそうだったので、言い包めるのに苦労しただろうし。

 

「お待たせしました――って、何ですかこの空気?」

 

「あぁタカトシ……人の夢と書いて儚いって読むんだなって実感してただけだ」

 

「はぁ?」

 

 

 この人はいきなり何を言い出すのだろうか。その隣では義姉さんも似たような表情をしているので、何かあったんだろう。もちろん、深く聞いて面倒なことになるのは嫌なので、それ以上は聞かなかったが。

 

「タカトシ君、何を作ってたの?」

 

「パンケーキですよ。アイスもあったのでそれをのっけて夏使用で」

 

「パンケーキ! アイス!」

 

「スズ、落ちつけ……」

 

 

 甘いものに眼が無いスズが凄い勢いで喰いついてきたので、俺はとりあえずスズを落ち着かせる。ちゃんと人数分作ってあるので慌てる必要は無いと伝えると、とりあえず落ち着いてくれた。

 

「ゴメンなさい」

 

「分かってくれて嬉しいよ」

 

 

 別にスズに飛びつかれても問題ないのだが、それ以外が面倒くさいことになりかねない。なので今にでも飛びついてきそうなスズが落ち着いてくれて、俺は嬉しかったのだ。

 

「義姉さんたちも、何時までも落ち込んでないでどうぞ」

 

「ありがとう、タカ君」

 

「カナは『義姉さん』で私は『たち』なのか……」

 

「シノっち、ヤンデレキャラに方向転換?」

 

「昨日見たアニメがそっち方向だったんだよね~」

 

「アリア、それは内緒だって言っただろ!?」

 

 

 どうやら昨日は七条家にお泊りだったようだなと、俺はシノさんとアリアさんの会話からそんなことを考えていた。

 

「スズが限界みたいなので、とりあえずどうぞ」

 

「スズポンは甘いモノを目の前にすると理性が働かないんですね」

 

「まぁタカトシが用意してくれたお菓子は美味しいからな。我慢出来なくなる気持ちは分かるぞ」

 

「すぐにでもお店出せそうだもんね~」

 

「そこまでじゃ無いと思うんですが」

 

 

 べた褒めされて居心地が悪いので、俺は片づけを理由にキッチンへ逃げ込む。褒めてくれること自体は嬉しいのだが、あそこまで褒めちぎられると嘘くさいと感じてしまうのは、俺の心がすさんでいるからなのだろうか。




自分が投稿を忘れない限り、日・火・金の予定です

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